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トップコラム山脇唯「2SEE MORE」「2 SEE MORE #2」 ゲスト:せきしろ

 SEE MORE #2」 ゲスト:せきしろ

「2 SEE MORE #2」 ゲスト:せきしろ

2016.11.01

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 第2回ゲストは、著書『たとえる技術』が好評発売中の文筆家・せきしろさん。いつも多くを語らないせきしろさんとのよもやま話 イン 西荻窪。(撮影/PANORAMA FAMILY  文・構成/山脇唯)
 

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朝顔を見るくらいしかないんだよ、することが。

 
山脇:普段あまり質問することないので、緊張しますね。よろしくお願いします。
 
せきしろ:お願いします。
 
山脇:いろいろ教えてください。
 
せきしろ:わかりました。
 
山脇:実はわりと知らないことだらけなのですが……(視線を感じて)前髪切りましたよ。
 
せきしろ:自分で?
 
山脇:や、お店です、お店です。ちゃんとお店で。せきしろさんはどこで髪切るんですか?
 
せきしろ:近所。
 
山脇:お店で。
 
せきしろ:そう。自分で切る時もあるけど。
 
山脇:なんて言って切ってもらうんですか? その……髪型は。
 
せきしろ:もともとは、高円寺にモヒカンにしてくれる『Gypsy Way』という店があって。そこで最初切ってて。
 
山脇:何年くらい前から、そこへ。
 
せきしろ:10年とか?どんどん電車に乗りたくなくなってきてるから、高円寺に行かなくなって。で、切ってあるまま。
 
山脇:切ってあるまま?
 
せきしろ:ここまで刈り上げてあるから、新しい人もここまで刈り上げてくれる。要するにモヒカンのまま。
 
山脇:それが続いている感じですか? なんかこう、変えたりとかもなく。
 
せきしろ:そんなもう、髪がふさふさしてるわけでもないし、セットもあまりしなくなったし。
 
山脇:バッファロー吾郎A先生もパーマかけられたりとか、最近変化されてますよね。そういうのって何か、ありますか?
 
せきしろ:全然、A先生と髪の話を一回もしたことないからわかんないけど……。
 
山脇:そういう「パーマかけたいな」「イメチェンしたいな」とかは、ないですか。
 
せきしろ:まあ、演者じゃないから。出る側じゃないから、イメチェンとかは考えないかも。昔はあったけど。江口洋介みたいな長髪にす
るぞ、とか。年齢的なこともあるかも。
 
山脇:いつ頃からその老い……変化を感じましたか? 老い……ていうのもあれなんですけど。
 
せきしろ:43、4歳くらい?
 
山脇:あっ、けっこう最近に。A先生は「40過ぎたら体力が無くなる」とおっしゃってたんですけど、なにか変化は?
 
せきしろ:ああ、朝早く起きる。
 
山脇:勝手に起きちゃう。
 
せきしろ:起きちゃう。寝てられない。何時に寝ても、7時8時には起きちゃう。
 
山脇:いっとき、朝顔の写真をSNSにあげてましたよね。ああ、早起きされてる、と思ってました。
 
せきしろ:することないからね。朝顔見るか、今まで見てた夢を必死に思い出しているかどっちか。
 
山脇:偉いなって思って。子供のころ、朝起きられなくて、夏休みに朝顔をみたことなくて。ラジオ体操も行けなかったので。朝顔、偉いなあって。
 
せきしろ:そう、偉いんだよ
 
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受験へ行くって言って出ていって、帰らなかった

 
山脇:え、お洋服とかって、年齢で変わってきたことはありますか?
 
せきしろ:あー。いっぱいもうロゴが入ってるのは着ないかも。
 
山脇:確かに、ロゴのイメージはないですね。
 
せきしろ:もう、主張がないから。
 
山脇:面白いのしか着ない、とか?
 
せきしろ:面白いのって、観光地で売ってるようなやつでしょ。ジョークTシャツ。あれは着ない。かといって、野球選手みたいなセーターも着ない。
 
山脇:えっと、ご出身は北海道、高校生まで北海道でしたっけ……。
 
せきしろ:そう。
 
山脇:なんかインタビューみたいですね。えーと、高校出られて、最初に向ったのは東京ですか? 
 
せきしろ:東京。
 
山脇:その、はじめに東京に行くときに、気合いみたいなのは何か、ありましたか?
 
せきしろ:特にないかな。嘘言ってきたから、嘘を上手くつくってこと頑張ったくらいかな
 
山脇:え、誰にですか? どういう意味ですか?
 
せきしろ:親に。「受験に行く」って言って東京に出て、帰らずにそのままずっと。
 
山脇:東京へ。試験行くって言ってそのまま帰んなかったんですか?
 
せきしろ:帰ってないんだよ。だから卒業式とかも……3学期の記憶がない。卒業式に告白しようとしていた下級生がいたかもしれないっていうのだけ心残り。
 
山脇:でもご両親と今、縁が切れてるわけじゃないですよね? 修復っていうか、それは……
 
せきしろ:心配させるんだよ、すごい。
 
山脇:いなくなっちゃった、って。
 
せきしろ:すると、怒られなくなる。「心配した~」って。「良かった~」って。
 
山脇:「なにやってんだ」みたいな、怒りの気持ちが、心配に変わってから……
 
せきしろ:変わってから、連絡する。そうすると大丈夫。怒られない。試してみて。
 
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「あとで何かで言えればいいや」って考えがあったかもしれない

 
せきしろ:そもそも芸人になるっていうクラスメイトがいて、じゃあ俺もって感じで東京に出てきたから。とにかく遠くへ行きたくて。で、ネタ作って、いろいろやって、渋谷のライブハウスのコント大会に出てみるかってなったんだけど、その友達が「辞める」って言って。そいつは大学に通ってて、全然単位取れなかったからって。こっちは大学も何もないから、突然東京でひとりになって。どうしようかなって思った。
 
山脇:それでどうしたんですか?
 
せきしろ:ラジオに投稿ばかりして、そして大学に入った。
 
山脇:ああ、よかった。よかったですね。
 
せきしろ:でも、すぐやめたんだよ。絶対怒られるじゃん、そんなの、また。そこで、逃げて。
 
山脇:いなくなった。
 
せきしろ:よく話すことだけど、寂れた温泉に逃げてた。
 
山脇:温泉宿で働いてたって。仲居さんにすごくもてたっていう。
 
せきしろ:そう、おばさんしかいないところで。
 
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山脇:えー。それで……
 
せきしろ:お金が貯まったからまた東京に来て。
 
山脇:あとはもう、わりと、円満にずっと東京に。
 
せきしろ:いや、無理矢理仕事をもらったり。無料でいいんで!って。だからすぐに稼げるわけじゃないから、お金借りまくったりしたり、円満じゃないかな。親にも迷惑かけたり。
 
山脇:まあ……うちも、ずっとお世話になって。そうですね、私も大学と専門学校両方行かせてもらって、かと思えば、京都行くっていって大学辞めたりしてるので、なんというか……。
 
せきしろ:しょうがない
 
山脇:親が、私にかけたお金を何かの形で取り返そうと思ってたら、負けた賭けっていうか、大負けか、と思うと悪いなあって辛くなるときは……あります。
 
せきしろ:まあ、これから、これから。
 
山脇:「あれだけお金かけたのになー」って思ってないかなあとは思います。
 
せきしろ:これから、これから。大丈夫。
 
山脇:で、東京でてきて、何年くらいですか。温泉宿から数えると。
 
せきしろ:21、2年。
 
山脇:あ、じゃあ、逃げてた期間はぎゅーっとした感じなんですね。
 
せきしろ:そんなに長くしても仕方ないから。効率よく。
 
山脇:20代前半までに、きゅきゅきゅっと凝縮して。
 
せきしろ:「あとで何かで言えればいいや」って考え方があったかもしれない。有名になったときに。今、これで言えたからいいや。
 
山脇:ああ(笑)。辛いときに、あとで「徹子の部屋」とかインタビューで話してる姿を想像して乗りきるっていうのは、あります。
 
せきしろ:そう。そうすれば元が取れるから。
 
山脇:何かしら、語れることは、あったほうがいいですね。じゃあ、そこからはずっと中央線界隈に住んでるんですか?
 
せきしろ:あー、下北にした時もあった。で、西荻窪に20年くらい。
 
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ハードコア・パンクを知ってる人が田舎にいなかったから「これを教えなきゃいけない」みたいな感じになって。

 
山脇:じゃあ、なんか、音楽の話を聞きたいなって思うんですけど。
 
せきしろ:はい。
 
山脇:小耳に挟んだんですが、高校のときバンドをやられてたんですよね。
 
せきしろ:そう。
 
山脇:バンドやるかやらないか、ていう男の人は2種類しかいない、と思ってて。って当たり前ですけど、何においてもそうですけど(笑)、思春期にバンドをやったかやってないか、はあるなと思うんですが、意外な感じがします。
 
せきしろ:なんか、使命感に狩られて。当時の田舎だと、メタルが流行ってたんだよ。
 
山脇:メタルっていうのは……
 
せきしろ:ヘヴィーメタル。
 
山脇:ウガーギャーっていうような? 悪魔を呼び出すやつですか? レコードを逆再生したら、悪魔を呼び出す呪文になる……
 
せきしろ:まあ、いろんなメタルにもいろいろジャンルがあるけど……
 
山脇:違いますか。
 
せきしろ:まあ、いいや、そういうやつ。で、あとBOØWYとかも流行ってたのかな。それで、自分はハードコア・パンクが好きだったから、それを知ってる人が田舎にいなかったから「これを教えなきゃいけない」みたいな感じになって、やったんだよ。
 
山脇:布教活動として。
 
せきしろ:「商業主義じゃない音楽があるぞ」って。細かいことは良くわかっていないくせに。メジャーじゃないのにもいいのがあるぞ、みたいな。
 
山脇:放送室をジャックしたい、みたいな。
 
せきしろ:そういう感じになる時期あるじゃない。
 
山脇:それは時期的にはいつ頃の……
 
せきしろ:1985、6年かなあ。その時、ヤマハがやってる音楽のコンテストがあって。「そんなの軟弱なやつしかいねえだろう」「愛とか言って、馬鹿じゃねえのか」みたいな感じで。
 
山脇:ハードコアが好き、ってなったきっかけはなんだったんですか。
 
せきしろ:あー、ずっとアイドルが好きで。でも、その前にニューミュージックが流行ってて。中島みゆきとか、松山千春とか。で、その人たちってラジオもやってたから、それも聴いてたから、レコードも聴いてて。そのあと洋楽が流行ったんだよ。小林克也の番組とかがあって……(考え込む)
 
山脇:小林克也の……?
 
せきしろ:いま何の話してたんだっけ。
 
山脇:あ、音楽を。どうしてハードコアに傾倒したのかっていう、きっかけを。
 
せきしろ:ああ、そっか。小林克也のアメリ缶の広告しか頭に出てこなくなった。
 
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山脇:じゃあ、いろんな音楽を聴くうちに、ですかね。
 
せきしろ:そう、「パンクってのがあるんだよ」って中学の時に言われて。で、小さい町だから売ってなくて、修学旅行で札幌に行った時に確か札幌にタワーレコードがあって、ピストルズとか買ったのかな。でもあんまりピンと来なくて。なんかそのへんの物を買ってたら、STALINがあって、それを聴いてから……かな。ルーツっていうんじゃないけど、買い集めはじめたのは。
 
山脇:はい。
 
せきしろ:で、布教しなくちゃいけない、って文化祭でバンドをやって。そのときにミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPAHNT)のクハラ(カズユキ)さんが同じ高校の1学年上の先輩にいて
 
山脇:クハラさんももうバンドやられてたんですか?
 
せきしろ:やってた。人気があった記憶がある。俺とは大違い。
 

ホームセンターで買った安全靴を履いて、斧持って、犬の首輪して。

 
せきしろ:当時は、雑誌のちいさな写真しか情報がなくて、その情報を組み合わせて。リストバンドが必要だっていっても、ホームセンターとかに行っても売ってないから。犬用のやつとかしかないから、それを使って。
 
山脇:犬用の。
 
せきしろ:本来はドクターマーチンが欲しかったんだけど、安全靴しかなくて
 
山脇:ホームセンターにはドクターマーチン売ってないですもんね。
 
せきしろ:パフォーマンスもいろんなことやってて。アンダーグラウンドな感じに憧れもあって。
 
山脇:パフォーマンスっていうのは……
 
せきしろ:なんか、「動物の臓物を投げた」とか、そういう情報だけが入ってくるから、それを自分で、再構築していって。
 
山脇:な、なにを投げたんですか?
 
せきしろ:何も投げてないんだけど、とにかく怖くなきゃいけないって言う意識があって……。斧は持ってたと思う。
 
山脇:斧?
 
せきしろ:斧。
 
山脇:楽器持って、斧を持ったんですか?
 
せきしろ:楽器は、無視して、斧持ってた。
 
山脇:安全靴を履いて、斧持って。
 
せきしろ:犬の首輪して、よくわかんないじゃない、それって。
 
山脇:それは衝撃を受けますね。忘れられない……
 
せきしろ:色んな情報が断片的にはいってくるから。「白塗りをしなくちゃいけない」とか。
 
山脇:断片的な。
 
せきしろ:ダイエースプレーって言うダイエーにしかないすごい強力なスプレーがあって。ダイエーが札幌にしかないから、まとめ買いし
なきゃいけなかったり
 
山脇:何用のスプレーですか?
 
せきしろ:ヘアスプレー。当時の細川たかしくらいヘアスプレーを使った。何もなかったら砂糖水とか。
 
山脇:いい話ですよ、でもそれは。
 
せきしろ:いやいや。
 
山脇:1本映画撮れますよ、それで。ホームセンターで犬の首輪買うところなんて泣いちゃいますよ。
 
せきしろ:犬の首輪して、斧もって、安全靴履いて。
 
山脇:白塗りして。いい話ですよ。
 
せきしろ:じゃあ明日から白塗りにする
 
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せきしろ:バンドっていうけど、結局自分はなんにもできなかった、演奏もなんにも。結局コントみたいなことばかりやって。映画の『シャイニング』の真似とか。
 
山脇:斧持ってるからですよ。だって、バンドの中でのポジションとかは……
 
せきしろ:よくわかんない。斧。
 
山脇:斧?
 
せきしろ:演奏しないで斧を持ってるだけだから、通販で斧を紹介している人みたいだった。あるいは新作の斧のショーみたいな。
 
山脇:音楽は、流れはするんですよね、誰かが音楽はしてるんですよね。
 
せきしろ:流れる。わりと後ろはしっかりしてて。
 
山脇:よかった。
 
せきしろ:今はみんな何してるかわからないけど。これを読んだら連絡ください。
 
山脇:それを学校の文化祭で。ヤマハでもそれはやったんですか。
 
せきしろ:ヤマハはコピーしたのかな。バンド組んで最初の舞台で。当時スコア(楽譜)も売ってて。それ買って、コピーして。サビのところは「解読不可能」って書いてあって譜面に起こす人が起こせなかったのかな。
 
山脇:それで販売できちゃうっていう。
 
せきしろ:もう30年くらい前だから。まだ実家にあるのかなあ
 

グシャグシャやってたとしても、しっかりした所はしっかりしとかないとな、って。

 
山脇:もうバンドはやらないんですか?
 
せきしろ:やんない、やんない。
 
山脇:それはもうスパッとやめて。音楽でやっていく、とはならずに?
 
せきしろ:なんない、なんない。全然。
 
山脇:学生時代のは、やっぱり使命感にかられて。
 
せきしろ:そう。こういう音楽をお前たちは知らないだろうって。
 
山脇:文化祭、みんなの反応はどうだったんですか?
 
せきしろ:なんにもない。
 
山脇:崇められる感じもなかったんですか? 「すごいね」みたいな。
 
せきしろ:ない。何もいいことはなかった。
 
山脇:(笑)その頃の写真とかも残ってないんですか?
 
せきしろ:なんもない。
 
山脇:青春ですね。でも、聞いてたら、コントで必要な道具を買いに行ってくれたり、作ってくださったりするDIY精神みたいなのは、その頃に培われたのかな、って。
 
せきしろ:「しっかりする所はしっかりしとかないと」っていうのはあって。グシャグシャやってるように見せるにしても、芯はしっかと、というか。最悪、パッケージだけでもしっかりと。
 
山脇:ものは、ちゃんとしたものじゃないと、って。
 
せきしろ:そう。斧も、いい斧じゃないと。
 
山脇:ああー、つくりものの斧じゃだめってことですもんね。
 
せきしろ:そう。いい斧。悪い斧は切れないからね。
 
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山脇:せきしろさんは、準備を凄くされますもんね。イベントでやるゲームも、盤面やカード、コマなども作られてて。そういう……「これをちゃんと知ってほしい」って気持ちが.根っこにあるんですかね。
 
せきしろ:そう 
 
山脇:高校生の時から、投稿したりはあったんですか?
 
せきしろ:してない。
 
山脇:東京来てから、そういうことは。
 
せきしろ:そう。採用されたから嬉しくなって。
 
山脇:自分が「書く方向に進んでいくな」ってヴィジョンはあったものですか。それとも、気づいたら、そうなってた、って感じですか?
 
せきしろ:ヴィジョンは、まったくない。
 
山脇:最近なんか、ヴィジョンを持ったほうがいいよ、とよく言われるんですけど……
 
せきしろ:持ってても、持ってないように見せたほうが、つぶしがきくよね。
 
山脇:あーそっか、それは、そうか。
 
せきしろ:今はヴィジョンを大声で言う方法の方が主流かもしれないけど。なんというかそのくらいの余裕をもってないと。
 
山脇:どうにでもなりそうな感じを持ってないと……
 
せきしろ:死んじゃうよ
 

なんでもメモしといたほうがいい。忘れちゃうから。

 
山脇:35歳くらいのときって、丁度何してました?
 
せきしろ:いま35なの?
 
山脇:35です。
 
せきしろ:はやいね。
 
山脇:はやいですよね。それこそ、10年くらい前に、ヨーロッパ企画の映画イベントでお会いしたのが25、6だった気がするんですけど。初めてお会いしたころ、せきしろさんが30半ば過ぎだったんですね。
 
せきしろ:35歳は、なんだろう。「去年ルノアールで」の本が出たぐらいかな?
 
山脇:いいなあ、本が出て、いいなあ。
 
ゴメス:俺、買いました)
 
せきしろ:(ゴメスに)ありがとうございます(笑)。……35歳は、まあこれからだよ。まだまだ。女優さんは。
 
山脇:じゃあ、頑張ります。
 
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山脇:なんか、やっといたらいいよってこと、ありますか。35歳ってことで。
 
せきしろ:あー。なんか書いておいたほうがいいよ。メモしといたほうがいい。思いついたこととか。本当にわかんなくなっちゃうから、記憶が。忘れちゃうから。
 
山脇:はい。
 
せきしろ:昔書いたもののほうがちゃんとしてたりするから。発想の仕方も。それ思い出すためにもメモしといたほうがいい、かなあ。作ったり書いたりした物はとっといたほうがいい。いつ必要になるかわかんないから。
 
山脇:断捨離しないほうがいい。
 
せきしろ:しないほうがいい。どこで「昔どんなことやってたんですか」って言われるかわかんないから。それが変な物でも、笑いにはなったりするし。ちょっとかっこつけた写真でも、とっておいたほうがいい。
 
山脇:わー、とっといてないや。変なモデルやった写真とかとっとけばよかった。野球観戦してるやつとか、京都新聞の仕事で。
 
せきしろ:そういうの全部、とっといたほうがいいよ。あとで、人生を振り返るみたいな番組に呼ばれるかもしれないんだから。
 

全部、ですます調になおしといて。「この人素敵だわ~」てなるように。

 
せきしろ:あとは、みんな仲良くしたほうがいい。
 
山脇:仲良く……大事なことですよ。私は、仲良くする方法が未だにわからない部分もあるんですけど、なんか、人付き合いのときに決めてるルールとかありますか?
 
せきしろ:面白いか、面白くないかは瞬時に判断して、一切喋らなかったりするけど
 
山脇:え、マジですか。
 
せきしろ:第一印象で、それは。
 
山脇:喋ってもらえなかった人はすごくショック受けますよ、これを読んだら。
 
せきしろ:じゃあ、全部嘘。でもなんだろう、なんかある人とは喋る。
 
山脇:なんかある、とは?
 
せきしろ:たとえば、カメラやってる、とか、女優だとかでも、そういうんじゃなくてもなんかやってる人。プロでもアマでも。なんでもいい。自分にはないものを持ってる人。ただ、面白くない人とは喋らない。
 
山脇:おお。
 
せきしろ:喋んないでしょ、だって。
 
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山脇:私は、世間的に「面白い」と評価されてて、自分はちょっとその面白さがわからんけど、偉い人だしなーっていうときに心がワチャワチャしてしまうんですけど、そういうときは、どうしますか?
 
せきしろ:有名な人だけど、面白いんだか面白くないんだかわかんない人で、でも年上だから朝まで話を聞かなないといけない、とか?おもしろく見せることだけに長けている人はいるからね。
 
山脇:まあ、まあ。たまたま自分がその人に今ハマれないだけで、ハマれば楽しいのかな、面白いのかな、ってぼんやり困ることはあります。
 
せきしろ:自分は、仕事では人に会わなくてすむから。演劇の人はそうもいかないから、大変そう。
 
山脇:社交、は、まあ、大変ですね。今はもうないですけど、若いと接待的なことも多いから、リアクションをどうとればいいんだろう、とかは。
 
せきしろ:ちょっとでも尊敬があれば、いいんだけどね。
 
山脇:はい。こっちの気の持ちようではあるので。
 
せきしろ:尊敬できるところを見つけて。
 
山脇:ですねえ。
 
せきしろ:これ誰がテープ起こすの?
 
山脇:私です。
 
せきしろ:全部、ですます調になおしといて。
 
山脇:丁寧な感じに。
 
せきしろ:そう。「この人素敵だわ~」てなるように。「丁寧で素敵~」って。
 
山脇:あ、じゃあ、心して。
 
せきしろ:頼んだ! 
 
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2人でいるときに写真撮らない。プリクラも撮ったことない。

 
山脇:あ、そうだ、本。本が出まくりじゃないですか。
 
せきしろ:全然、全然出まくりじゃないよ。なんにも売れないんだから。
 
山脇:短歌のやつ(※『偶然短歌』)と、たとえるやつ(※『たとえる技術』)と。
 
せきしろ:でも、たとえるやつは自分で書いたけど、短歌のは、企画があって文を頼まれただけだから。今もう、原稿も寝ながら書いてるくらいだから、iPhoneで。
 
山脇:えー。
 
せきしろ:もう、ほぼ動かない。面倒くさくて。
 
山脇:じゃあもう、いつか、だんだん口述筆記に。
 
せきしろ:それがベストなんだけど、それだと恥ずかしさもあるし。ラブシーンも口に出さないといけないから。あと、自分の書き方がセンテンスだけ書いて、切って貼ってしていく方法だから、口述筆記だと、できないかも。ちゃんとした作家の人は出来るかもしれないけど。
 
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山脇:コントとかも、そうやって書かれてるんですか?
 
せきしろ:そう。だいたいのことは断片を再構築してる、なんでも。
 
山脇:うちの父が「あの人はどうやってコントを考えてるのか」って気にしてて。一度「すいているのに相席」公演後に、せきしろさんに直接聞きにいったことがありましたね。
 
せきしろ:そう。「お風呂とかで書いてるの?」って訊かれて「あー……お風呂で、かもしんないですね」って。
 
山脇:どうしてあんなコント思いつくんだろう、って不思議みたいです。
 
せきしろ:最初誰だかわからなくて。急におじさんが話しかけてきたからびっくりして。偉い人かと思って。
 
山脇:劇場主とかかと。
 
せきしろ:そう、そしたらぞろぞろおばさんも出てきて。
 
山脇:うちの親と、その仲間たちです。
 
せきしろ:10人くらいいたでしょ。
 
山脇:そんなにはいないですけど、でもまあ、10人弱くらいです。あ、では、そろそろ撮影なんですけど、特に締めたりとかはなくて。
 
せきしろ:前回は締めたの? 何か言って。
 
山脇:いや、あんまりなくて。前回は、ふわーっと終り頃に写真の話をして。写真撮りますよーって言って撮る写真は恥ずかしいですね、みたいな。せきしろさん、写真どうですか。前に写真は苦手っておっしゃってたから。
 
せきしろ:あー、A先生もそうでしょ。
 
山脇:そうですね。わりと、そんなようなお話を。
 
せきしろ:2人でいる時に写真撮らないもん。撮ったことない。
 
山脇:はい。あんま、そんな印象ないですね。
 
せきしろ:プリクラも行ったことない。
 
山脇:(笑)相席まわりの人は、あんまり「写真撮りましょう!」っていわないですね。
 
せきしろ:ないない。言わない。じゃあ締める。
 
山脇:はい
 
せきしろ:つばきファクトリーが2017年2月22日にメジャーデビューします。皆さん、よろしくお願いします!
 
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せきしろ
1970年北海道生まれ。主な著書に、映像化された『去年ルノアールで』や、『不戦勝』『逡巡』『海辺の週刊大衆』などがある。また、又吉直樹との共著『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』、西加奈子との共著『ダイオウイカは知らないでしょう』では、それぞれ自由律俳句と短歌に挑んでいる。
 
山脇唯
1981年8月3日生まれ。俳優。ヨーロッパ企画退団後はフリーとして舞台を中心に活動。2013年より「すいているのに相席」に参加、“ユーモア女優“の称号をバッファロー吾郎A、せきしろ両氏より賜る。声の出演にNHK Eテレ「デザインあ」他ラジオCM等多数。ポンポコパーティクラブ代表。
 
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