PANTA(頭脳警察)乱破者控『青春無頼帖』
こんな真の闇は初めての経験だ。
三里塚のステージを終え、「こいつが宿泊所まで案内します」と助手席に乗り込んできて、「まっすぐ行ってください」と言ったきり船を漕いで寝てしまう。おいおい、まだまっすぐでいいのか、するとヘッドライトだけが映し出す目印もないところで、「あっ、ここを左に行ってください」と言われるままに左折、するとまた例のごとく頭を深く垂れて眠りに入ってしまう。
気になるのはさっきからついてくる1台の車が同様に左折して距離を置いてついてきていることだ。そしてまったく目安のない雑木林のそばに来るとおもむろに顔をあげ、「ここに停めてください」と若者は指示して車のドアを開け、降りていく。
灯りも何にもない相変わらずの真の闇、ついてきた車は同じ距離を保ってライトをつけ停車している。後ろから荷物を下ろすついでにマネージャーと目を合わせ、木刀をジャケットに忍ばせる。夕方、右翼の襲撃と合わせて良からぬ話も耳に入ってきていたので、ここは思い切り嵌められたのかもしれないと弾む足取りのTOSHIを横目にマネージャーとちょっと覚悟を決めて歩き出す。
後ろから数人がついてくる気配の中、ジャケットの中の木刀を握りしめた途端、目の前に微かな明かりが開け、その小屋の棚にはズラリと赤ヘルが並べられており、思わず安堵の胸を撫でおろしたのは言うまでもない。