食べ物の出てくる歌が好きです。とくに肉が出てくると美味そうに思えるのです。最近だと、NINJASという、女性ボーカルの格好良い日本人バンドの「BEEF OR CHICKEN」という曲が、たまらなく良かった。
NINJASは他の曲も格好良くて、「DEVIL」という曲も最高で、英語で唄って、突然に日本語になるところなどは、ドッキリしながら痺れました。他に、突然日本語に変わる曲では、CANの「OH YEAH」という曲があって、これもたまりません。最初は、テープの逆回しみたいな声から、突然、ダモ鈴木の日本語が聴こえ出し、「虹の上から小便」という言葉が聞こえてきたときには、これまた、いつでも痺れてしまいます。
でもって、食べ物の出てくる曲で、好きで、ずっと聴いてるのは、チボ・マットのアルバム『VIVA! LA WOMAN』に入っている「BEEF JERKEY」という曲です。わたしは、食べ物のビーフジャーキーもたまらなく好きなのですが、このアルバム、今調べたら、1996年発売で、20年以上前なのに、まったく古びておらず、ビーフジャーキーのように、噛むほどに、聴くほどに、味わい深くなってくるようです。
でもって、これは、後々知ったことなのですが、チボ・マット、他にもソロでも活躍してる、羽鳥美保さんは、実は、わたしの高校の同級生だったのです。それを知ったのは、チボ・マットを聴いて、10年くらい経ってからでした。そして、羽鳥さんが高校の同級生だと知ったときは、驚いて、勝手に親近感が湧き、嬉しくなったのを覚えています。
羽鳥さんは、わたしのことを覚えてないだろうけれど、記憶を辿っていくと、わたしは、高校時代、下北沢で、ポスターを店に貼るアルバイトをしていたことがあって、そのときに、格好いいGジャンを着てライブハウスから出てくる羽鳥さんを見かけたのを思い出しました。そのとき、「あ、高校が同じだった人だ」と思ったのですが。あの人が、その後、ニューヨークに行ってチボ・マットになったのですね。とにもかくにも、チボ・マットは格好いい。羽鳥さんのソロも良くて、『人間の土地』というアルバムは、寝る前などに今も聴きます。
でもって、2014年に、沈黙を破って発売された、チボ・マットの『HOTEL VALENTINE』、これまた良かった。以降、アルバムが出ていませんが、早く、チボ・マットの新譜を聴きたいと切に願っています。
それにしても、一方的ではありますが、高校の同級生が、世界的なミュージシャンというのは、なんともいえない嬉しさが、いまだ、わたしの中にあって、「高校の頃の同級生で、有名人いる?」という話になると、わたしは即座に「チボ・マット、羽鳥美保さん」と答えているのですが、そのような勝手をお許しください。
戌井昭人(いぬいあきと)
1971年東京生まれ。作家。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」で脚本担当。2008年『鮒のためいき』で小説家としてデビュー。2009年『まずいスープ』、2011年『ぴんぞろ』、2012年『ひっ』、2013年『すっぽん心中』、2014年『どろにやいと』が芥川賞候補になるがいずれも落選。『すっぽん心中』は川端康成賞になる。2016年には『のろい男 俳優・亀岡拓次』が第38回野間文芸新人賞を受賞。