異次元の常識 text by ISHIYA(FORWARD / DEATH SIDE)
国民は自助や共助なんかとっくにやってんだよ!
2020年9月。やっと安倍政権による8年間の悪夢が終わったかと、俺はひとり祝杯をあげた。それが不正の責任を取る形や逮捕という形ではなく、仮病による辞任だったとしても、悪夢が終わったことを素直に喜んだ。
後任の総理に注目が集まったが、東京都知事選では全くと言っていいほどやらなかったテレビでの特集や討論会を連日行なう始末。
その上、安倍政治を継承する菅官房長官を推しまくり、中でもいくらかはマシと言われる石破落としに躍起になっていたという。
結果としては、安倍政治を受け継ぐという最悪の菅政権の誕生となったのだが、就任してすぐに発表した日本の目指す社会像として「自助・共助・公助」と、恥ずかしげもなく発表したのである。
今年の春から政権の不誠実極まりない対応により、日本のコロナ禍は収束の兆しも見えず、民間では倒産する会社や閉店する店舗が増加の一途を辿っている。そんな中で一番の目の敵にされたライブハウスは、音楽を愛する人間や、いつもライブハウスに通う仲間たちの力もあって、なんとか存続を続けているのが実情だ。
中には名店のライブハウスが閉店にも至ってしまっているが、バンドやミュージシャンたちは、普段バンドの利益が生まれるグッズやCDの制作や配信などを行なう。制作されたベネフィットグッズは、音楽やライブハウスを愛する観客たちが購入して、その利益を経営が困難に陥ったライブハウスに寄付をしている。家のタンスを見てみれば、ライブハウスのベネフィットTシャツが、かなりの数で増えている人間ばかりだ。
ひと言言わせてもらう。国民は自助や共助なんかとっくにやってんだよ!
東日本大震災でも熊本の災害でも広島の災害でも「公助」が足らずに民間のボランティアがどれだけ「自助・共助」をしてきたか。
コロナ禍の中で、どれだけの国民が「自助・共助」で乗り越えようとしているか。
本来政府がやるべき当たり前のことを国民に丸投げし、「国民のために働く内閣」という、自分が何を言っているのかを少しも考えない菅新総理の発言は、さすが安倍政治の継承者と反吐が出る。
その上、菅新総理のブレーンと言われる竹中平蔵は、国民への給付金中抜き詐欺を行なうような、国民から絞り取ることしか考えていない悪名高きパソナの会長だ。
竹中平蔵が提唱するベーシックインカムでは「国民全員に7万円を支給し、生活保護や年金をなくす」という、国民の首を真綿で締めながら殺していく政策を提言する国民共通の敵である。
新政権発足後すぐに、これだけの悲惨な事実を突きつけられている。国民はもう限界だ。こんな国家はぶちこわす以外の選択肢はない。
元THE COMES、LIP CREAMのMINORUと、元OUTOのBUTCHERが中心となり1990年代後半から2000年代初期まで活動していたCOLORED RICE MENというバンドがある。
米を食べる有色人種の男という意味のバンド名からも分かるように、既成の概念とは違った観点からアプローチを続けた新しいタイプのハードコアバンドだ。その中でも一番シンプルなメッセージであり、ハードコアやパンクの代名詞とも言える日本語「ブチコワセ」という曲の歌詞を見てほしい。
今現在この国に住む人類が行なうべきことが書かれていると思うのは、俺だけではないはずだ。
ブチコワセ/COLORED RICE MEN
あんたに怯えてる訳じゃねぇ もう少し今を楽しみたいだけ
何もつくりたい訳じゃねぇ つまらぬ仕組を壊したいだけ
ブチコワセ
見せかけだけの喜びを 口先だけの平等を
嘘で固めた外見を つまらぬ仕組みを
何も望んでる訳じゃねぇ 抜け殻のようなお前の瞳
何もわけたい訳じゃねぇ 喜びだけで苦しみまでも
見えない罠を 見えない壁を
ブチコワセ
見せかけだけの喜びを 口先だけの平等を
嘘で固めた外見を つまらぬ仕組みを
あんたに怯えてる訳じゃねぇ もう少し今を感じたいだけ
何も作りたい訳じゃねぇ つまらぬ罠を壊したいだけ
Vo. ブッチャー(元OUTO)、Ba. ミノル(元LIPCREAM、現EIEFITS)、Gt. レイカ(ghettos)、Ds. ユウキ(PIGMEN)、Sax. カナイから成るCOLORED RICE MENは、90年代中期から2000年代末まで独特のスタンスとライブ活動で異彩を放っていたトーキョー・スーパー・エキセントリック・ハードコア・パンクバンド。「ブチコワセ」は1997年に発表されたファースト・シングルに収録。
【ISHIYA プロフィール】ジャパニーズ・ハードコアパンク・バンド、DEATH SIDE / FORWARDのボーカリスト。35年以上のバンド活動歴と、10代から社会をドロップアウトした視点での執筆を行なうフリーライター。