最後まで誤診を認めなかったタフな奴
「誤診の病院、先生が許せないッス。自分だったら絶対に訴えますよ!」
「ブログを読み返したら、かなり前からおかしいって……病院で診てもらってるのに。黙ったまんまでいいんでしょうか?」
「それってもうどうにもならないんですか? 訴えれば勝てるのでは???」
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2018年7月21日<オナニーの日>。口腔底癌をカミングアウトして、多くの人からいだいた声に"コッチ系”のものも多かった。
いわゆる誤診クレームってやつ? いや、でもね……「誤診じゃねーか!」ってヤブなお医者さまんに言い寄ったところで「気づきませんでした」で終わってしまう気しかしない。
実際に誤診医院の最後となった日、初めてオイラの口の中をヤブ医者<以下、ヤブリー>が見て発した一言(オイラから舌の裏を見て欲しい、とお願いした)。その言葉にオイラはゾッとした。時間やお金をムダにしたどころじゃねーぞ、こりゃ……と。
そして、医者って人を殺せるんだな、と思った。この半年、ヤブリ―はオイラが喉がおかしいと話してもアルマジロの話しかしなかった。アルマジロがどうして、あんな皮膚になったかについて。しかも、オイラはその答えが未だにわからないままだ。
ヤブリーは「潰瘍ができてたのか?」と小さな声でつぶやき、見たことのない真剣な顔を一瞬みせた。「か、か、潰瘍ですか?」と聞くオイラに対して「いや、ま、そうですね……リンパですね」と口ごもるだけ。
アハハハハ。リンパって……リンパがどうなんだよ?(笑)
ガキの使い。
これは1日も早く大きな病院でちゃんと診てもらわないといけないとオイラは思った。ここにいてはダメだ、死んじゃうと。
「ぶっちゃけ、このポッコリは何なんですか? もう半年にもなりますよ」と言うオイラに最後、ヤブリーが悩み、苦しみつつ出した言葉が「結核かなあ……」。
アハハハハハハハハ!(大爆笑) 処置ナシ。
その場で渋谷の大きな病院への紹介状を書いてもらい、翌々日に渋谷からバスで30分くらいの場所にある巨大ショッピングセンターのようなハイテク総合病院へと行った。
そして、すぐに築地・銀座にある日本最大級の癌専門病院へと行くことが決まる。それ以来、ヤブリーのところには行っていない。
自分が癌<ガン>かもしれない、とわかったときにまずやったこと。下北沢のヴィレヴァンに行きクロッキー帳を購入。いつか絶対にネタになる。単行本化も夢じゃないかも? とまず思った。ただでは転ばない。癌にならないw あ、出版社募集チューです!
性病の方が数万倍わかりやすい
ふふふ。ムカつくでしょ? みんな、この話をすると大抵の人は怒りだす。そんなの許されない!と。「どこの病院か教えて欲しい。火をつけるか、スプレーでヤブ医者って落書きしてくるから」とオリコン時代からの友人。できれば後者にしてもらいたい。
でも、そういう誤診(?)に対する感情って意外にも身内になればなるほどに薄らぐというか、あまりどうでもいいみたい。血の濃さと比例するかと思いきや反比例。
実際、弘子<実母>は「ま、しょうがないわね~~。今更言っても癌なんだもの(笑)。あはははは」って。
東日本一、口やかまC、妹のミカですら誤診に関しては何ひとつ言わなかった。「兄貴~~、運悪かったね? 口腔底癌ってわかりづらいらしいよ。ま、好き勝手生きてきた罰が当たったんじゃないの? 生きててラッキーだよ。アハハハハ」
じゃあ、当事者、本人であるイノマーくんはというとナッシング。カッコつけるわけじゃなくね。ま、こうやっていつかはゲンコーとかのネタに使わせてもらおうとは思ったけど。実名、写真出してSNS拡散波動攻撃! とかは考えなかった。
癌になっちゃった本人はみんなそうなんじゃないのかしらん。マブでそれどこじゃないから。もう取り返しつかないんだもん。怒ってるだけ、悩んでるだけの時間と体力のムダ。
何より癌っていつどこでなったか? ってさっぱり見当がつかない、わからない。あ~、あんときのあれか~~~!? ってないからね。性病とはわけが違う。相手がわからんw
癌と宣告された本人は癌って言われた瞬間に頼むから誤診であって欲しいと願う。そう、誤診に腹を立てるよりも、むしろ、誤診であるように、と。それじゃないかなあ? だから、誤診を断罪しようなんて思わない。
誤診万歳! VIVA誤診!
癌<ガン>日記の1ページ目、初日のボヤき。こんなんがほぼ毎日。現在4冊目に挿入―――。おもろいよ。しつこいけど、出版希望。なんで、スポンサーを募集しております。オイラの公開しているメアドまでプリーズ。3日以内には返信します。返信なければ死んだと思ってくんちゃい(笑)。
検査発表~~~~~~!
だって、癌ってね? イメージは"死”だから(笑)。「あなた死にますよ」宣告。いや、しみません。必ず死ぬわけじゃないけど。癌って令和になった今でも不治の病、みたいに思われてるでしょう?
治る、っちゅーの(メイビー)。
癌と宣告されたときは、まさにクールポコ状態。「な~~に~~? やっちまったなーーーー!」と。そんだけ。いや、これホント(笑)。ドラマみたいのないよ。「腫瘍です」と言われ、腫瘍って何だろう?と考える。まだ、癌というワードは出てきていない。
そうそう。癌あるある。なかなかセンセーは簡単に「癌」って言葉を言い出さないんだよな。オイラの場合、渋谷の大きな病院で宣告もどきをされた。ガチ宣告の前に。プッチ癌時代。あれは7月18日とかだったんじゃないかな?
年齢、ルックス共に女優の高樹澪に似た感じの女医さんだった。ワンレンのクール・ビューティーってやつ? 2回しか会わなかったけど、あんまり好きになれなかった。
※
〔高樹澪<初日>〕
高樹澪に口の中を見せると、彼女は急いでスタッフを呼んだ。集まったのは男女合わせて6~7人くらい。多いよ。もう、これ、完全に癌じゃーーーん(涙・笑)。
まずは癌の検査。その方法が原始的。ハサミで腫瘍を切り取る。これが激痛。いちお、局部麻酔もするのだけれど、ほとんどきかないと考えてもらえれば。口にハサミを入れられたのは初めて。10時間の手術なんて何でもない。舌切ってお腹の肉を移植したけれど、それよりもハードだった。
切り取った腫瘍を検査に出す。結果が出るまで約1週間。高樹澪がなかなか「癌」と言い出さないのでオイラが聞いた。「腫瘍って何ですか? 悪性ですか? それって癌ってことですよね? 癌ですか?」
「それを調べます」、高樹澪は言った。「1週間後に結果が出ますので、また」
〔高樹澪<最終日>〕
この日のことを思い出すと未だにとても嫌な気分になる。ロビーで待つこと3分。名前を呼ばれた。四畳半もないであろう狭い診察室に入る。彼女は背を向けて座っていた。
オイラが入ると回転式の椅子をくるりと器用に動かしオイラの顔を何とも言い難い目で見た。彼女がため息をつく前にオイラが聞いた。
「癌ですか?」
「そうですね」、高樹澪は言った。
「イズ・ディス・ア・ペン?」
「イエス・イット・イズ」
そこには何の感情もなかった。「紹介状を書きますので、それを持って1階の受付に行って手続きを取ってください」
「誤診ということはないですか?」、オイラは躊躇することなく聞いた。「何かの間違いってこともあるじゃないッスか?」
「セカンド・オピニオンというのもあります」と高樹澪は言った。
「なるほど」とオイラは言ったけれども、セカンド・オピニオンの意味がわからなかった。
癌とオイラと大川興業
何だろ? 未だに誤診だと思ってる自分がいたりするのも正直なところ。舌切っちゃったんだけどね。もう遅いけどさ。
冤罪じゃないけど、もしも誤診だったとしたら、これ取り返しつかないよなあ(笑)。だって、切っちゃったんだよ。ぶっちゃけチンポ切るよりもしんどい。オナニーマシーンとして正しい発言じゃないとは思うけど。
歌うたいが舌を切るって……。
「オナニーマシーンは誰にも真似することの出来ないバンドになった」
<阿曽山大噴火>
オナマシの20周年記念アルバム『オナニー・グラフィティ』のレコ発となった2019年2月15日(金)新宿LOFTのライブを観た大川興業の芸人である阿曽くんの言葉。
嬉しかった。
今のオイラにとって、最大のホメ言葉だ。そして、何よりどこの音楽評論家よりも的確。
阿曽くんは昔からのつきあい。もう20年以上になるかもしれない。オイラがオナマシを始める前、阿曽君がホームレスだった頃から。
そう、だから、オナマシをいちばん知っている男が阿曽くんかも?(笑)。裁判ウォッチャーみたいなポジションの阿曽くん。そこは約20年かけて彼が築いた場所。嬉しい。
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大川興業といえば、エガちゃん(江藤2:50)。手術前、入院中、退院後……毎日のように電話をかけてきてくれた。
「絶対大丈夫、絶対大丈夫、絶対大丈夫、絶対大丈夫、絶対大丈夫、絶対大丈夫……」
エガちゃんはオイラが電話に出ると、一方的に話し続けた。終わりそうもなかったので、オイラは「ありがとう」と言って静かに電話を切った。
手術入院する前のエガちゃんからの電話。念を送ってくれたんだと思う。その辺のことはニューアルバム『オナニー・グラフィティ』に収録されている「ヤレる気がした。」という曲を聴いてもらいたいw
エガちゃんのことを歌った曲(笑)。
誰にも真似することの出来ないバンドか……誰も真似したくないというか、癌にならなくちゃいけないってハードル高いよなあ。さあ、どっからでもかかってこい!恋、来~~い!
心の中に生きる幻がオナニー道?
放射線治療は約1ヵ月半続いた。その間にエガちゃんと会った。本当は2018年11月、オナマシ♪ワンマンコに出てもらうはずだった。オイラの癌でその計画は実現不可となった。そのことを詫びたかった。
エガちゃんに会うのは7~8年ぶりくらいだった。10年ぶりの再会は汚れた笑顔で。お互いにいろいろあるね~~、と(笑)。
オイラもエガちゃんもどうにか生きてる。そのことを半泣きで抱き合いながら確認した数分後……
「峯田~~、あの野郎~~~、売れやがって~~~~~~!」
何でよ?(笑)。
何年かぶりに会って、対談はエガちゃんともうひとり、銀杏のミネタくんともやると話したら(本紙2018年12月号)、この言葉。アハハハハ。
絶対に何も考えてないと思う。深い意味なし。
でも、癌になって、手術して退院して。で、退院と同時に新しいアルバム発売。20周年のご褒美に取材も兼ねて会いたい人と対談。それがミネタくんとエガちゃん、っていうね(笑)。
「ヤリたいよーーー。ヤリたい、ヤリたい、ヤリたいーーー! 中野のドンファンって呼ばれたいもん」
エガちゃんはニヤニヤと笑いながら、最近は性欲がないと嘆くオイラに言った。「イノマーもちゃんとオナニーしなきゃダメ! みんなの夢を背負ってるんだから」
嘘でも「ヤリたい」と叫ぶパワー。大事だな、って改めて思った。“癌だから”って理由にならない。オナニー道……深く、険しいな。
そして、長く果てない。
幻なのか?
大好きなエガちゃんとの2ショットは雑誌SODの対談にて掲載された。どうしても欲しい人はSODまでリンリン。
<<TO BE CONDYLOMA……>>