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トップコラムイノマー<オナニーマシーン>の『自慰伝(序章)』第四回「=手術当日= 考えない、感じない、無になって零になる」

回「=手術当日= 考えない、感じない、無になって零になる」

第四回「=手術当日= 考えない、感じない、無になって零になる」

2018.12.04

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手術前、最初の入院をする前になぜか自宅でとりつかれたかのように書き続けてた

手術前夜〜当日にかけて……諦めることも大事なのねん

 
手術室まで来て、「やっぱりヤメる」って逃げ出す人っているのかな? いるんだろうなあ。そういうモードになっちゃったとしたらオイラだって自信がない。だって、恐いもん。手術室に入ってそんなことをふと思った。
 
ちなみに、オノチンはMRIの密閉感に堪えることが出来ずに1分もしないでカプセルから自力で這い出して逃げた(実話)。友達のバンドマンは乗ってから自分が高所恐怖症であることに気づき、飛行機を止めた。
 
オイラは諦めが早い。すぐにアナルに白旗突っ込んで2つのキャンタマちゃんをプラプラさせる。その辺に関してのプライドはない。
 
ただ、ここにきても自分が癌<ガン>であるということが納得いかないというか、誤診ではないのか? というモヤモヤを抱えたまんま手術当日。でも、後戻りは出来ない。
 
ま、舌切っちゃうけど……どうにかなるか、って。きちんと喋れなくなるし、歌えなくなるけど、それはそれでおもろい方向に転がってくれればいいかな、って。
 
オイラの担当で執刀医のMセンセーはチョイ二枚目のアラフォー。どっちかっていうと好きな顔。いや、でも、これ重要。生理的にNGなんていう野郎に身体いじられたくない。ましてや命を預けるってね(笑)。そういった意味では今回はついてた。ラッキー。
 
って、あら〜〜〜〜〜〜〜〜。ごそっと後ろの髪の毛が抜け落ちた、なう。襟足の部分。今、何気なく触ってたら……来たか、遂に。
オイラも例外ではなかったってことだな。
 
 

麻酔は大がかりで、大袈裟な寝落ち

 
で、実際の手術話。なんてったって舌を切って、かわりにお腹の肉をくっつけるっていう大胆なプレイ。禁じられた遊び。こういうことをしちゃあいけない。静脈、動脈? わかんないけど、結びつけたとのこと。
 
人間の身体って凄いな。そんなことされても生きてるんだもん。もちろん、まったく気づかなかった。そりゃそうだ。
 
自分で歩いて、ちと背の高いベッドっぽい手術台(?)に横たわる。『これから長いこと同じ姿勢になりますので……』なんて言われながら、まずは右手に点滴針ブスーーー。
 
朝から水分は禁止されていたので口にしていない。手術に差し障りが生じるんじゃないか? と思うくらいに喉がカラカラに乾いてた。センセーにスプーン一杯でいいから水が欲しいとリクエストしよう思った瞬間、口にマウスピースを自分でハメるよう渡される。呼吸器をあてがわれたとことでタイムオーバー。
 
ZZZZZ
 
〜10時間後〜
 
わかったことは夢なんて見ない、ということ。
 
1回も目が覚めずに爆睡。でも、「よく寝た〜〜〜〜」なんていう気持ちの良い爽やかな目覚めとは明らかに違う。
 
異様に自分の身体が疲れ切っていることが起きた瞬間にわかる。こりゃダメだ、って。
 
とにかく寒い。そんだけ。
 
 

最終着地点は?

 
母ちゃんは横で泣きながらオイラの名前を呼び続け、拝み、両手をこすり合わせてた。ヤな光景だな、って見えないフリ(笑)。
 
執刀医のMセンセーが腕を組んでほくそ笑みながらオイラのことをじっと見ているのがわかった。「俺はやるべきことはやった。次はオマエの番だな」って。オイラは「任せろ」と、アイコンタクトで返す。手術の日までいろんなことを相談して自分の希望だけは常に伝えてきた。でも、やはり、それは医者の立場と患者の立場ではまるで違うわけで、すべて互いに大賛成でゴーゴーゴー! というわけにはいかなかった。
 
ま、結局のところ折衷案。譲り合う精神、大事ね。共通することを大切にして、そこから進めましょう、と。そして、両者が問答無用で優先順位ぶっちぎり1位としたのが“生きる”ということ。
 
生きる。
 
そう、オイラとセンセー、両者の目指すところは“生きる”という極々、シンプルなものだった。さすがにオイラ、死にたくはない。センセーが医師として大前提としてあるのは患者を生かす、ということ。オイラは生きる。
 
そりゃそうだ。大前提が“殺す”じゃシャレにならない。殺人教団だ。
 
だったら、ふたり、お互いに、その生きるということに関して最善を尽くしましょう、と。
 
 
 
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憧れのマジックミラー号との再会に喜ぶオイラ……思わずシェーーーー(笑)
 

主治医<執刀医>のMセンセー……

 
今年の8月は毎週月曜日にセンセーと会うことになった。オイラの癌は“口腔底癌”というマニアックなもの。痛みが週イチで激変するため、飲む薬もかわる。癌<ガン>の痛みについてセンセーは“骨折の100倍の痛み”と言った。
 
さすがにそれは大袈裟だ。
 
具体的な手術や治療の話もそうだが、センセーとは手術前、そして手術後の生活や心の持ち方について話すことも多かった。オイラは自分がパニック障害であることと、2年前まで強度のアルコール依存症であったことを話した。もちろん死にかけた話も。「芸能関係の方は多いですね」とセンセー。
 
オイラ、芸能関係ではない……。
 
バンドをやっていることも話した。ベースを弾きながら歌っていること。バンドは今年20周年で大切なライブが年内、来年と決まっていて、しかも、新しいアルバムの制作に8月から入ることになることも。
 
センセーにすべてちゃんと話をしないと癌<ガン>とは向き合えないと思った。できるだけ正直に。オイラは思いつく限り多くのことをセンセーに話した。バンド名がオナニーマシーンである、ということを除いて。
 
手術の数週間前、センセーは「舌の80パーセント以上は切ることになります」と言った。ちょっと前までは半分と聞いていた。癌<ガン>の転移が広がっているとのこと。切らないとどうなるのか聞いたら「3年です」と。
 
これが属に言う、イノマーの余命3年事件。
 
「舌を切ると厄介なことって?」とオイラはセンセーに聞いた。「ろれつが回らなくなり、上手く喋ることができなくなります。あと、食べる飲むということにも影響が出てきます」とセンセーは言った。
 
「喋れないってことは、歌えないっていうことですよね?」とオイラ。「今まで通りというのは非常に難しくなると思います。でも、ベースは弾けると思いますよ。回復の度合いは人によって違うので何ともですが」と、センセーはあっさり言った。
 
「ベースなんて弾けなくてもいい」、口にはしなかったけれどオイラは思った。
 
 

手術後1ヵ月経った今も記憶にない……

 
手術は9月の1週目に決まった。
 
自分が癌<ガン>であることがわかってから手術日まで約1ヵ月。その期間を『思い残すことないよう過ごしてください』といきなり言われても正直、困る。
 
自分から歌が奪われてしまうことに関してはどうしても最後まで受け入れられなかったが、それも手術してみないとDOなるかなんてわからないと開き直り、何も考えないようにした。とにかく生きることだ。
 
レコーディング、ライブ、マジックミラー号、混浴温泉、SOD女子社員作品……8月のオイラのスケジュールはバカバカしくも真剣に真っ黒こげ。炎上。1日も休みがなくなった。
 
とにかく声があるうちに歌を残さないといけない。そのことだけを考えた。もう一生、歌えなくなってしまう。“世田谷区アウアウ合唱団”なんかを作ったとしてもストレスがたまるだけだ。
 
9月に入り、3日に入院、5日に手術。なぜか手術しても自分は喋れる、歌えるという根拠のない自信だけはあった。
 
手術は知らないうちに終わり、身動きできない状態で集中治療室にオイラ。生かされてるだけ。誰かが電源をOFFにするか管を引っこ抜けばオイラの命なんてマッハで終わる。
 
呼吸は喉に穴を開けて弁が差し込まれている。水分、栄養などは点滴や鼻から胃へと。尿道に差し込まれた管からオシッコは自動にポリ袋へと。話もできないし、右目がずっと開かなかった。寝返りさえうてない固定されたベッドの中のオイラは人間もどき。
 
手術後のせん妄に苦しみながら、まずはここから出て一般病棟に移送されないとMセンセーに会えない。話ができない。
 
集中治療室には1週間いた。普通、2〜3日程度だ。オイラ、よっぽどだったんだろう。
 
 
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『オナニー・グラフィティ』の「恋する童貞」、コーラス入れ作業……オノチンが指揮者(笑)

 

深イイ話(?)

 
一般病棟に移った日のこと。廊下でMセンセーとバッタリ。「あ、手術、ありがとうございました」とオイラ。「そっか、手術以来、会って話をしてなかったですよね。全部、切ったんで。きれいに取ったから大丈夫です」と言ってセンセーはエレベータに乗り込んでいった。相変わらず忙しい人だ。
 
オイラは閉まり切ったエレベーターのドア—に深々と頭を下げた。「人の舌を切っておいて、相変わらずだな」
 
次の日の午後、血圧を測りにきた看護師さんとどうでもいい世間話をしている中、「イノマタさんがサンボマスターと一緒に出したCDを手術中に先生、ずっとかけてましたよ。珍しいんですよ、そんなこと」と言った。
 
ドッカーーーーーーン、メリメリメリメリ、バキバキバキバキっと血圧が上がった。
 
Mセンセーにバンド名は話してない。オナニーマシーンなんて言えない。でも、まー、今の時代……わかるか(笑)。
 
アマゾンで自腹購入したのだろう。でも、有名な国立病院手術室にオナマシが流れるって……やっぱ、名医だったんだな。普通じゃない。うん、まともじゃあないよな。
 
「オイラはどうせ死んじまうんだろ♪」って。どういうチョイスだよ?(笑)
 
センセーはセンセーでオイラの歌のこと、何も言わないくせに、ちょっぴりは気にしてくれてたんですね。そりゃ手術前にあんだけ、オイラに言われればね(笑)。しつこくてしみませんでした。
 
オイラ、意地でも歌えるようになるんで。そんときはオイラがセンセーの自慢をする番。日本にはこんな名医がいる、だから、諦めちゃダメだよ! ってね。
 
 
 
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遂に完成したオナマシの20周年&執念アルバム『オナニー・グラフィティ』はオノチン大絶賛(笑)で平成最後の迷盤と早くも炎上中。
 
 
 
●PROFILE:いのまー。大学を卒業してオリコンに入社。32歳で退社後に雑誌『STREET ROCK FILE』<宝島社>を創刊、性春パンクバンド“オナニーマシーン”をスタート。インディーズ、メジャーと渡り歩き現在に至る。
 
 
 
 
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「オナニー・グラフィティ」

品番:LOCA-1031
発売日:2018年12月5日
JANコード:4545850500400
レーベル名:LOFT RECORDS
価格:2500円(+tax)

01. 全力オナニー・グラフィティ
02. 思春期
03. GIFT
04. ブリキの太鼓
05. イッツ・ア・スメール・ワールド
06. えんざい
07. ヤレる気がした。
08. なか指
09. 0721
10. 恋する童貞

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