【ホントシオリ】vol.17
“世界で一番幸せかもしれない”
そう思い、にやけながら心の中で小さくガッツポーズをして、ひとりその喜びを噛みしめた朝。いつだって、彼はわたしがひとり“会いたい”と強く思ったときに必ず連絡が来る。わたしの身体の中に盗聴器でも仕込んだんじゃないか?と思うほど、タイミングが良い。
すべて忘れてしまうから/ 燃え殻
扶桑社/ ¥1,500+tax
平積みされた本の中で、帯に書かれた“おかざき真里”さん(個人的に作風や色使いが好きで特に「サプリ」や「&」は何度も読み返している)の名前と「あの時の“無かったこと”にした自分の気持ちを届けてもらいました」に目が止まる。ふ~ん、と思いながらも-ボクたちの人生は、なぜか忘れられなかった小さな思い出の集合体でできている―のひと言に完全に心を奪われ、“買う”以外の選択肢はなかった。
表紙や作中の挿絵には阿佐ヶ谷ロフトAと馴染み深い長尾謙一郎さんが担っていて(みんながよく目にしているステージの壁画を描いてくれた方)表紙を眺め、ペロッとめくった裏表紙を見たときにタイトルとの親和性を感じ、“こういう気持ちを抱くのはわたしだけではないんだな”と安心感を抱いた。是非、手元に書籍がある方は裏表紙も合わせて作品を味わって頂きたい! 日記のような構成なので、本が苦手で読めない人もこの秋に少しの時間で日々少しずつ読める本として読んでみたり、眠れない夜にページを捲ってみるのもおすすめ。挿絵がたくさんあるので“次はどんな画があるんだろう?”と楽しみに読めたり、燃え殻さんの抜け感にちょっとクスっと笑えてしまったり、誰かの日記をコソ読みしている感じもあって、ページを捲るんにワクワクできる。
燃え殻さんの作品は「ボクたちはみんな大人になれなかった」も拝読させて頂いており、こういうタイトルにわたしは惹かれやすいんだな、と再確認をした。少し余韻のある言葉というか、自分自身の経験と重ねやすい気がして、ね。勝手に。今回はもう、重ねに重ねましたよ。それで、文字を書きたい! という衝動に駆られている訳ですよ。(本当に単純で、感化されやすいな。笑)あくまでも『ホントシオリ』はわたし自身の実体験を軸に書籍を紹介するので、ここからはいつも通りのわたし自身のくだらまい話ばかりになるので、興味ない人はすぐにUターンを。
今日も歯ブラシはひとつ
“今この瞬間、わたしが誰よりも世界で一番幸せかもしれない”と噛みしめながら職場に向かう。
ちゃんと寝息を立てて一緒に寝ていることに心から安心をし、愛おしく思えたし、わたしの方が起きるんが早いんはこの日が初めてだった。(いつもは夜中に帰るだのなんやかんや言い出して険悪な空気が漂ったり、彼の方が仕事の時間が早いから7:00頃に起きて静かに出ていってた。「ホントシオリvol.3」に登場している彼である)身支度を整え、ずっと眺めていたい寝顔に(本当はこのまま寝かせてあげたかった)「もう出るよ、準備して」と。むくっと起き上がり、昨夜散々「不味い!」と言ってケタケタ笑って言ってたAesopの歯磨き粉を付けながら歯を磨き、準備をして、一緒に家を出たのは初めてで、それだけでも“今日は幸せ過ぎる”とにやけていたのに「今日も仕事、頑張ってください。無理ない程度に(小さくガッツポーズをしながら ※何をしてもとりあえず格好良い)」と言われたときに魔法に掛けられたかのように頑張れる気持ち120%になった。遠くなる彼の姿をゴミ出ししながら眺めていたら、珍しく振り返り手を振ってくれた。“こんなに幸せな瞬間があるんだ”と心の中で飛び跳ねた。いや、実際に角を曲がった瞬間にスキップしてしまった。
とびっきりの大好きな笑顔でいてくれるだけですごく幸せだし、その笑顔を絶やさないで欲しいと願っている。今まで一番幸せだったから最後なのかもしれない。すべて忘れてしまわないように、書き留めておきたい。
いつかきっとすべて忘れられてしまう。彼にとっては“そんな人もいたね”くらいなんだと思う。近い将来、彼の隣にはとびっきりお似合いの可愛くてお洒落な子がいて。その子を温かい、優しい眼差しで見つめ、守ってあげるんだろうな。そして、いつまでも大好きなめちゃくちゃ格好良くて可愛い笑顔でいて欲しいと思ってる。
追伸:潔癖症なんに彼のゲロを普通に素手で処理できたあの日からわたしは潔癖症を克服できたのかもしれない。