Text:絵恋ちゃん
すっかり寒くなり、街にはきらびやかなイルミネーションが飾られ、あちらこちらでクリスマスソングが聴こえてきますね。わたしは基本的にお部屋から出ないので想像で言っていますが、多分そんなかんじなのでしょう。メリークリスマス! 地下アイドルの絵恋ちゃんです。
今年は「ご当地アイドルなりきりツアー(ご当地絵恋ちゃん)」という、ちょっと変わったライブツアーをやってきました。ツアーというと例えば1日名古屋でライブして、その次は1日大阪でライブして…と1~2公演ごとに各地をまわっていくのが一般的ですが、わたしがおこなった「ご当地絵恋ちゃん」企画は、各地に10日間ほど実際に住んで、その期間ライブやローカルラジオ出演、カフェやお店での1日店長、地元アーティストの方からの楽曲提供など、その土地のご当地アイドルになりきって活動するツアーです。まったく土地勘のない場所に単身で飛び込み、また、受け入れ側もよくわからない地下アイドルがいきなり地元民顔でやって来るわけですから、お互いに体力や精神力、その他いろんなものが削られ、誰もやらないことには理由があるなあ、なんて思ったりもしました。それでも、その土地のファンの方が喜んでくれているのを見ると、心から挑戦してよかったと思えるツアーでした。
期間中はほぼ毎日スケジュールが詰まっていましたが、地元のファンの方がおすすめのお店やご当地フードを教えてくれるので、夜中に食べに行って、次の日報告したりの交流が楽しかったです。大阪では、ひとりで鉄板焼き屋さんに行き、となりの席の60代くらいの女性と仲良くなって、そのままバーに連れていってもらいました。職業を聞かれ、地下アイドルと言う勇気がなくて「アイドルグループのスタッフみたいなことをやってて…」と嘘をつき、帰り際に「じつはわたしが地下アイドルで」と、まるで「わたしがゴマキ」のような言い方で告白したら、「最初からわかってたで!」と笑われてしまいました。ポケットがパンパンになるくらいのアメちゃんをもらって解散し、「大阪のお母さん」を思い出しながら毎日大切に1個ずつ食べました。
そんな「ご当地お母さん」は沖縄でもできました。
小さな食堂に入ると、お客さんはわたしひとりで、店員のおばさんが優しく話しかけてくれました。なんだか心配そうにしてきたのは、わたしが迷子の学生に見えたからだそうです。マンゴージュースやゴーヤのピクルスなど、頼んでないものをいっぱい食べさせてくれました。食べてる間、わたしは地下アイドルのことやツアーのこと、沖縄ではどこに住んでて昨日は何を食べたかなど、いろいろなことを話しました。沖縄のお母さんは、うんうんとにこやかに聞いてくれて、お会計が終わってお店を出て歩いていると、うしろから「えれんちゃん!」と追いかけてきて、わたしに沖縄の郷土料理のじゅーしーのおにぎりを待たせてくれました。「こんなことは普段はしないからね、特別だから誰にも言わないで、ネットにも書いちゃダメだからね」と言われ、わたしは「わかりました!」と言いながら、このことはコラムに書こう、と思いました。翌日、ふぞろいの大きさの3つのおにぎりを食べながら、「沖縄のお母さん」の優しさを思い返しました。わたしはまた絶対会いに行こうと思い、沖縄を離れる前に、もう一度お母さんの食堂に行きました。
二度目に扉を開けたわたしは、小声で「また来ちゃいました」と言いました。そんなわたしを見てお母さんは驚いた様子でいます。こういうのなんだか照れるな…と思っていたら、お母さんはあの時と同じ優しい顔でわたしに声をかけました。
「来たことあるんですか?」
まったくおぼえられていませんでした。わたしは静かにおそばを食べて、となりの席の人に「お嬢ちゃん、しょこたん系だね」と声をかけられてもうつむいたまま、恥ずかしくなって、食べ終わったらすぐにお店を出ました。
「ご当地アイドルなりきりツアー」は、来年も続きがある予定です。新しい場所でまたご当地お母さんに出会ったら、1回しか会わないようにしようと思います。
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