絵恋ちゃんの ああ えらそうに コラムが書きたい

　わたしは丸顔です。中学生の時、同じクラスの黒沢くんがわたしの顔を「カボチャみたい」だと笑ってから、しばらく10月が苦手でした。10月はハロウィンがあるので、そこら中にわたしみたいなカボチャが飾られます。しかもわたしは10月生まれで、10月に生まれたからこんなカボチャみたいな顔になってしまったのではないか、と本気で思っていました。今では、それとこれとはおそらく無関係だとわかるようになりました。生きているとどんどんかしこくなるので、ありがたいです。

　今よりかしこくなかった時期、わたしはかしこそうな仕草に人一倍憧れを抱いていました。空き時間に数独を解く、映画の話題になるとすぐに監督の名前を言う、指先を素早く動かして暗算する、デパートコスメの英語で書かれたブランド名を読むことができる、止血に詳しい、600円のお会計で1100円出して500円玉をもらう、などです。どれもかしこい人じゃないと咄嗟にできない、かしこそうな仕草です。そんな数あるかしこ仕草の中で、とくにわたしがかっこいい！と思って夢見ていたのが「気圧の変化で頭が痛そうにする」人です。

　バイト先にわたしと同い年でお勉強ができるお友達がいたのですが、雨が降ると「今日気圧しんどくない？」みたいなことを聞いてくるのです。その気怠げに気圧を感じ取る姿は、頭が良い人だけに与えられた特殊能力のようで、大人な感じがしました。本人は体調不良でつらそうなので憧れてることは打ち明けませんでしたが、その判断ができる程度の知能がわたしにもあったことが救いです。

　最近、嬉しいことにわたしも世間が言ってる「気圧で体調悪い」がどういうことかわかってきました。雨の日はいつもより眠たかったり、たしかに頭痛もするし、ぼんやりします。そうなるとわたしはついつい、今よりかしこくなかった頃のなごりで「今日気圧しんどくない？」と大袈裟にアピールしてしまいます。怠そうに頭痛薬を取り出すわたしの姿は、かしこくない人たちから見たらきっとものすごく輝いていることでしょう。まだかしこくなってない方々に、早くこちら側の景色を見せてあげたいです。わたしは今も丸顔ですが、かしこくなることができて本当に良かったです。

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