あれはブッチャーズ吉村さんと一緒にマイブラを観た時だから、2013年の2月になるのだろうか。
新木場のスタジオコーストに行く前に軽くひっかけようと有楽町の赤提灯に立ち寄り、そこで呑みながら話したのは、もっぱら石井岳龍監督とコラボする映画のことだった。
細かい話はもう忘れてしまったが、作品の方向性についてだいぶ苦悶されていたような記憶がある。
ブッチャーズの新しいアルバムはすでにその前年末に録り終えていて、それを発表する場として選ばれた映画作品がいつ完成するか分からないから、その前にもう一枚新たにアルバムを作るつもりだとも話していた。
だがご承知の通り、5月27日がやって来てしまった。
たしか5月末には映画撮影用のリハーサルも組まれ、7月にはライブパートの撮影が予定されていたはずだ。
映画の企画は頓挫し、ブッチャーズの新作はその年の秋に『youth(青春)』と題して単独発売された。
その後、石井監督が全く新たな劇映画の企画を着想し、ブッチャーズの楽曲とがっぷり四つに組んで完成に漕ぎ着けたのが今月号の本誌の表紙巻頭に据えた『ソレダケ / that's it』である。
そもそもは吉村さん発信の企画だったが、吉村さんが亡くなったことで完成した皮肉な作品とも言える。
でも、この映画に感傷めいたところは微塵もない。主人公の“死んでも生きる”不屈の闘志が終始描かれ、ブッチャーズの怒濤の爆音が全編あるのみ。ただソレダケ。吉村さんの歌とギターはフィルムに刻み込まれて瑞々しく輝いている。
吉村さんはこの映画を観て、どう思うのだろう?
今度、地獄の赤提灯で本人に聞いてみよう。
映画『ソレダケ / that's it』公開記念爆裂インタビュー
石井岳龍「bloodthirsty butchersの爆音と共鳴しながら描写した不屈の闘志、生への希求」
ソレダケ / that's it
2015.06.02