監督:園子温
出演:神楽坂恵
5月14日シネマカリテ、他にて公開
園子温監督が再び福島で映画を撮っていると聞いて、どんな映画になるのかいろいろ想像していた。原発20キロ圏内で取材を重ねて作った『希望の国』の後、次はもっと腰を据えてじっくり撮りたいと語っていたのだが、それがこの『ひそひそ星』だろう。物語設定は遥か遠い未来、アンドロイドの女性が主人公というSF映画で、一部のパートカラーを除き、全編モノクローム、登場人物は囁き声で口数少なく話すというのは、園子温が海外で注目されるきっかけとなった初期の代表作『部屋 THE ROOM』を連想させる。そして優れたSF映画がそうであるように、この映画も現実世界を鋭く反映している。アンドロイドが運ぶ人間宛ての荷物が「たった一枚の写真」や「よくわからない手書きの似顔絵」なのは、すぐに3.11後の被災地における膨大な遺品を連想させるだろう。「そして今日も常に死と隣り合わせに生きる全ての人間に対しての祈りの映画にしようと思っている」と語る園監督のある種の覚悟が静かながらも熱く伝わってくる作品だと思う。(加藤梅造)