一昨年から続いている根本敬さんの出版ラッシュ。久しぶりのストーリー漫画『生きる2010』に続き、今回は文庫版『人生解毒波止場』が発売された。1995年に単行本で出された本書は、根本さんの読み物シリーズ第2弾で、前作『因果鉄道の旅』で提示され世の中に衝撃を与えた人間(因果者)フィールドワークの続編とも言える内容だ。「この世には、人知を越えた何か得体の知れない力が緩〜く働いている」と書いている通り、本書にはゴミの城に住まう老婆、電波系喫茶のママ、究極のプロ・マゾヒスト、自称"タイガーマスク三代目"になるはずだった男、ゴミの求道者・村崎百郎など、知性や論理が全く通用しない(=堅気じゃあない)人達が多数登場する。「くだらないと思えることほどこの世の真理に近い」という事実を頭でなく体で感じられる人は是非本書の因果宇宙を探索して欲しい。但し堅気の世界に戻って来れる保証はないが。(加藤梅造)