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トップレポートロウ・イエ監督作品『シャドウプレイ【完全版】』の公開を記念して、枝優花(映画監督・写真家)、ゆっきゅん(電影と少年CQ)によるトークイベントがアップリンク吉祥寺で開催

ロウ・イエ監督作品『シャドウプレイ【完全版】』の公開を記念して、枝優花(映画監督・写真家)、ゆっきゅん(電影と少年CQ)によるトークイベントがアップリンク吉祥寺で開催

2023.01.23

1989年という奇しくも天安門事件が起こった年から、社会主義市場経済が押し進められ激変する中国の30年間──。中国、香港、台湾との離れがたい関係と、ある家族の姿を通して描くネオ・ノアール・サスペンス、『シャドウプレイ』(完全版)が1月20日(金)より公開されている。
 
このたび本作の公開を記念して、『さよならスピカ』『少女邂逅』の枝優花監督と、アヴァンポップユニット『電影と少年CQ』のメンバーで映画やJ-POP DIVAについての執筆など多方面で活躍するゆっきゅんがトークイベントに登壇。監督の視点やものづくりをとおしてロウ・イエ作品の魅力を語った。

『シャドウプレイ【完全版】』公開記念トークイベント

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日時:2023年1月21日(土)21:54〜22:20頃 トーク
登壇者:枝優花(映画監督・写真家)、ゆっきゅん(アイドルユニット「電影と少年CQ」)
会場:アップリンク吉祥寺(武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 パルコ地下2階)
 
枝優花(映画監督・写真家)プロフィール
1994年生まれ。群馬県出身。
2017年初長編作品『少女邂逅』がロングランヒットを記録。MOOGICLAB2017では観客賞を受賞、海外映画祭でも評価される。TV『みなと商事コインランドリー』やMVなどの演出のほか、写真家としても活動している。最新作は、2月よりU-NEXTで配信となるオムニバス映画『イカロス 片羽の街』のうち『豚知気人生』。
 
ゆっきゅん(アイドルユニット「電影と少年CQ」のメンバー)プロフィール
1995年、岡山生まれ。
映画をモチーフにしたアイドルユニット「電影と少年CQ」のメンバーとして活動。
2021年にセルフプロデュースによる「DIVA Project」を始動し、1stアルバム『DIVA YOU』が各所で話題に。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻を修了し、映画やJ-POP DIVAについての執筆やトークも行なう。
 
──『シャドウプレイ【完全版】』を観た感想や印象に残ったシーンは?
 
枝優花「情報量も尋常じゃなくて。私は試写で拝見させていただいたのですが、すごく疲れてしまって、ボーッとしていたので、記憶がおぼろげなんですよね(笑)。私はロウ・イエ監督がすごく好きなので何作か観ていて、今までの作品の中で一番規模も大きくお金もかけていて、でも今までよりもハードではなかった印象があって、アクションとかは確実に凄いのですが、今日話しながら解明したいです(笑)」
 
ゆっきゅん「私は、サスペンスとかノワール的な映画には興味がないので、そういうジャンル映画的な物は観ないのですが、だけどこれはロウ・イエ監督の作品だから、もちろんジャンル映画としては、物語としてはそうだし、アクションもあるのだけれど、結局描いているものっていうか、今までとあまり変わらない。人間の影というか夜を撮る人だなって。ただ、画面がすごく暗いから映画館で観るのが大正解だと思います。パソコンとかで観てもただの「黒」みたいな区別がつかない感じがして。一貫してこういう作品であっても孤独や愛が描かれている。印象に残ったシーンとしては、ヌオがピンクのウィッグで香港のクラブで働いていたところに、ヤンが来て、タバコを吸いながら出て行って、つけま(つけまつ毛)を取って、ヤンが語りかけるシーンがとても可愛くて。嘘だったりとか、隠していることだったりとか、思惑とか、イヤな要素も重なり合った世界が描かれているのだけれど、その中でああいうイノセンスというか、ピュアなものが映っていると、結構感動しちゃう。すごく可愛かった」
 

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──初めて観たロウ・イエ監督作品とその中で最も好きな作品について、観た時期やなぜ好きかなど、その理由と併せて教えていただけますでしょうか?
 
枝優花「2017年に渋谷のアップリンクで観た『ブラインドマッサージ』が本当に好きで、ロウ・イエの真骨頂、見えない光の照らされていない部分が描き出されているところが、個人的には一番色濃く出ている感じがして、眼が見えない人たちの話なので、その中のセリフの中で『眼が見える人たちは影に隠れることができるけれど、眼が見えない人たちは影に隠れることが出来ないから光に晒される』それが自分の中ですごく衝撃を受けて、ちょうど長編映画を撮る前に観たのですが、その時に私も、自分の作品を作る上で『見えている物が全てではなくて、見えないものにこそ本質がある』というのを自分の中ですごく感じていて、タイミングも良く、いい出会いでした」
 
ゆっきゅん「2017年の22才の大学生の時に『ブラインドマッサージ』をアップリンク渋谷で観ました。数週間で終わった、すごく貴重な機会だったみたい。その後、友人からすごく薦められて『スプリング・フィーバー』を観て、『スプリング・フィーバー』もすごく良かったですね。観たのは結構前なのですが、いくつか観たけど1本挙げるのなら『スプリング・フィーバー』です」
 

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──本作脚本のマー・インリーが監督したメイキング作品『夢の裏側』では、ロウ・イエ監督の音楽や美術、細部に至るまでのこだわりと検閲との闘いが描かれております。お二人が作品を作る上で大事にしていることはなんでしょうか?
 
枝優花「撮影する時は全て偽物じゃないですか、ドキュメンタリーですらも偽物ぐらいに思っているのですが、全部が偽物、役者もそうだし、美術とかも再現してやっているわけで、その中で、唯一本物で撮れるなといつも思っているのが感情だなと思っていて、だから結構役者とかに感情だけは嘘をつくなみたいなことをずっとやっていて、こちらもそれを見抜いて捉えていかないといけないのですが。その後ロウ・イエの作品を観るとどうやって撮ったのかよく分からない。なんでこうやって撮れるのかとか、自分が言ってそれがいかに難しいのかがいっぱいあるので、役者のコンディションもありますし、単純に天気が悪いというだけでやっぱり現場の空気も変わってしまいますし、自分のコンディションが悪いと見抜けなくて嘘を発見してしまうということもあります。本当に難しいのにどうしていつもこんなに本質を撮れるのかなあっていうことをこのメイキングの中でいろいろ、それも細かく、本当にどの部署もプロフェッショナルで、さらにそれをロウイエがこてんぱに言っているのを聞いて、こういうものづくりが出来たら本当に理想だなあって、すごく羨ましいなと思いながら観てました。どうやって衣装選んでいるのか、どうやって撮影のシーンを撮って、役者にどう語りかけているかとかそういうのを全て『夢の裏側』でまとめている」
 
ゆっきゅん「私はそんな厳しいものづくりはしていませんので(笑)。自分で自由に。なんか映画ってなると関わる人の数が違うじゃないですか。どんなに小さな現場であっても。私は歌詞とか書いて歌うぐらいなので、自由にやらせてもらっているなと思いますね(笑)。でも、なんか譲れないことは譲らないというか、例えば私は作曲をしてないし、演奏もしてないので、でも頼む人はその専門家なわけですよね。だから映画での衣装は衣装のプロで、でなんか自分がアマチュアな部分に対して絶対わがままを言わなければならないじゃないですか。それはめっちゃ思います。(わがまま言うことが)めっちゃ疲れる。でもそれが仕事。自分は何にも分かんないし、言っていることも、もしかしたらとんちんかんかもしれないけど、でも歌うのは私じゃないって?思って」
 
枝優花「でもそれは、私もやる人が50代くらいの大御所とかで、結局遠慮しちゃって、こんなひよっこが」
 
ゆっきゅん「ダメですよ、遠慮」
 
枝優花「遠慮はダメで、だから『お前、遠慮するなよ』って言われてから、好き放題やります。自分でも言っていることが分からないけど『これはやりたい』って。どれだけ『わがまま』になれるか」
 
ゆっきゅん「言って無理なこともあるかもしれないけど、譲らないようにするっていうことは多分何を作る人にとってもありますよね。その道のプロに馬鹿かもしれないけど言う。一人で解決するタイプではないので」
 
枝優花「プロって言う人たちに自分の『わがまま』を『おもろい』って思わせるって言う試練があって、『じゃあやってみよう』ってなって、『これなら俺でも思いつく』ことは言えないから、とんちんかんでも訳のわからないことでも言ってみると『じゃあやってみよう』って言って新しいものがうまれる。だからいつも言われるのは俺らを越えて来いよとは言われます。それは、『技術的』なことではなくて『思い』として越えて来いっていう意味で」
 

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ゆっきゅん「私、枝さんが(シャドウプレイで)印象に残ったシーンが聞きたいです」
 
枝優花「『人を燃やすところ』。人を燃やすところなんて生きている間には観られないじゃないですか。それがいいか悪いかじゃないのですが、スクリーンを通してたと観れるじゃないですか。なんかそう言う、言葉が合っているのか分からないのですが『夢がある』なと思う。そういうシーンがこの映画はいっぱい観れるのがいいなって。
 
ゆっきゅん「その話を聞いて、つけまつ毛についても、適当に日常の中にあるけど、映画に残そうと思って、パッと印象的に残る生活のシーンではないかもしれないけれど、映画の中で観ると、つけまつ毛外してるってなるからそれも映画の一つの方法。なんか向かい合って話さないなと言うことをすごく思っていて、向き合って話せないようなことを描いているから、だから性愛とかもそうだけど、向き合って話せないようなことを物語にしているなって思いました」
 

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──最後に、今日観に来た皆さんに一言ずつメッセージをお願い致します。
 
枝優花「ロウ・イエのファンの方もいらっしゃると思いますが、初めて観た方がどう感じているかが私は楽しみなのですが、メイキング『夢の裏側』もぜひ一緒にセットで観たらさらにものづくりとかも面白さも観れるんじゃないかなと思って。ぜひ観てください。ありがとうございました」
 
ゆっきゅん「皆さまもぜひプロにわがままを言っていいものつくってください」
 

商品情報

『シャドウプレイ』(完全版)

監督:ロウ・イエ(婁燁)
出演:ジン・ボーラン(井柏然)、ソン・ジア(宋佳)、チン・ハオ(秦昊)、マー・スーチュン(馬思純)、チャン・ソンウ ェン(張頌文)、ミシェル・チェン(陳妍希)、エディソン・チャン(陳冠希)
2019年 / 中国 / 129分 / 北京語・広東語・台湾語 / DCP / 1.85:1 / 原題:『风中有朵雨做的云』
©DREAM FACTORY, Travis Wei
配給・宣伝:アップリンク
2023年1月20日(金)より新宿K's cinema、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺 ほか全国順次公開

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