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オフィスオーガスタ主催の新人発掘イベント『CANVAS vol. 7』ライブレポート

2023.01.25

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音楽プロダクション・オフィスオーガスタが運営する新人発掘・開発プロジェクト「Canvas」のニューカマー・ピックアップ・イベント『CANVAS vol. 7』が1月23日(月)新代田FEVERで開催された。
有観客&配信のハイブリッドでの開催もお馴染みとなった今回、出演した3組のパフォーマンスはもとより、放たれるメッセージの強さにそれぞれの個性が感じられた。
 

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最初にステージに登場したのは、luvis。昨年11月に京都から上京したばかりという才能を秘めたZ世代のシンガーソングライターだ。今回のステージでは若手気鋭ドラマー/クリエイターのGaku Kanoを携えて、独特の緊張感と浮遊感のあるグルーヴが会場を包んだ。
 

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エレキギターのアルペジオに乗せて語るように歌う「Journey」からライブはスタート。ジャズ、R&Bを主成分に、時折アバンギャルドなフレーズを駆使して編み込まれるサウンドは一口にこれとは言えないオリジナルのもので、あえて言えば、今を鳴らすポップミュージックといった同時代性を強烈に感じさせるものだ。まるでその場で作っているような自然発生的なメロディにフリーキーなアンサンブルが絡み合って、曲の構成やアレンジも掴めそうでなかなか掴ませてくれない、するりと逃げるような絶妙な驚きと(いい意味での)焦ったさがたまらない。トム・ミッシュとサム・プレコップがセッションしたらこんな感じになるのかも? なんて思いながら体を揺らす。
 

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特筆すべきは、4曲目に披露した「走馬灯で逢いましょう」の歌詞は、現実の風景とも心理描写ともつかない両者の“あわい”をたゆたうように流れていく。
〈夏の残り香に耳を澄ませば 少しの痛みと柔らかな温もりが さよならを歌っている〉
メッセージとして何かを訴えるものではないが、メロディに乗せた日本語表現として、例えばはっぴいえんどや井上陽水、そして坂本慎太郎が試みている地平に繋がりうるものだと思える。
ラストは「Dance」。不穏と激情の中で弾けて消えるような一瞬を掴み切り、ステージを終えた。
 

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2番手は、沖縄からやって来たボーカル+ギターの2人組、No plan
地元沖縄ではストリートライブを中心に活動しているというだけあって、その場の雰囲気の作り方に巧みさを見せる。
1曲目は「たばこ」。自分の不甲斐なさのために別れることになってしまった“あなた”を想う歌だ。2人の間にあったものとして、たばこが象徴的に登場するのだが、特筆すべきは、たばこの煙がいつまでも〈こびりついている〉と歌われること。消えてなくなるものという表側の意味を匂わせつつ、けれどいつまでも離れ難くあるものとして、その裏側まできちんと描くことで聴き手を歌の奥に誘導することに成功している。
「僕たちと同じ沖縄の尊敬するアーティストHYさんの曲をカバーします」ということで、3曲目には名曲「366日」のカバーを披露。沖縄のポップス文化が連綿と受け継がれていく様子を直に見せてもらったようで興味深かった。近年ではAwichなどのヒップホップ/ラッパー勢の躍進に目を見張るものがあるが、決してジャンルで細分化されているわけではない沖縄のチャンプルー精神を、彼らの切なさをたっぷり含んだ「366日」を聴きながら思った。
 

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最後に披露したのは「記念日」。愛を誓う真っ直ぐさが力強く響いた。
 

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今回のトリを務めたのは、シンガーソングライターのかわいるい
キーボードとパーカッションとのアンサンブルで彼の描く曲の世界をカラフルに彩っていった。
1曲目は「HITOMEBORE」。一癖も二癖も持っていそうなポップスでありながら、歌詞やメロディラインには可能性を感じさせるポピュラリティがあり、その茶目っけと清潔感のバランスが彼のキャラクターとも相まって音楽に説得力を与えている。次に披露した「サービスエリア」は、どこか懐かしさを感じさせるメロディが心地よいグルーヴを生んでいく。サービスエリアという言葉から喚起されるイメージを物語中の記憶として描くことで歌の世界を奥行きの広いものにしている。
 

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「僕は音楽をやる上で人の心を動かしたいとか、優しいものを届けたいと思っていて。寂しい人にどんな言葉をかけたらいいんだろうって考えた時に、“大丈夫幸せになれるよ”っていうような前向きな言葉じゃなくて、孤独も全然あり得ることだし、孤独な人はいつだっているよって伝えることが一番寄り添った考えなんじゃないかなと思いました。未来に自分が種をまくような気持ちで作りました」と言って披露したのは「タネを蒔く。」。性差や境遇などすべてを超えたところで鳴らされる普遍的なポップスは、そのまま彼の志向する表現の根本へと向かう。前向きというのとは違う、悩んだままを肯定する決意に溢れた音楽だ。
 

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ラストは、「自分にとって大事な曲です」と言う「愛の囚人たち」。鋭く生々しい言葉で描かれる歌詞もさることながら、ボーカルの良さが際立つ曲だ。いくつもの可能性という煌きとともにステージを後にした。
 
今回も、三者三様の個性が揃った『CANVAS vol. 7』。どのアーティストからも今の時代を生きる軽やかな覚悟のようなものを感じられた。ここから新しい才能がどのように花を開かせるか、その日は意外と近いかもしれない。(Text:谷岡正浩 / Photo:永田拓也)

アーカイブチケット

アーカイブチケット(販売価格¥1,000)は1月29日(日)23:59まで販売
 
【luvis】
 
【No plan】
 
【かわいるい】

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