中田裕二のツアー『“LITTLE CHANGES”変幻自在』のファイナルが8月18日、shibuya DUO MUSIC EXCHANGEで行なわれた。
中田は3月から弾き語りツアー『中田裕二の謡うロマン街道』13公演と、アルバム『LITTLE CHANGES』を引っ提げたこの“変幻自在”ツアー13公演を並行して行ない、さらにこの“変幻自在”ツアーでは3公演ずつ違う凄腕ゲストミュージシャン[八橋義幸(G)/平泉光司(G)+カトウタロウ(Backing Vocal&others)/千ヶ崎学(B)+sugarbeans(Key)/隅倉弘至(B)+張替智広 (Dr)]と、セットリストを変えながらセッションを繰り広げるという、中田にしかできないまさに変幻自在のスタイルでファンを楽しませた。
この日の東京公演はそのグランドフィナーレということもあり、ファンはもちろん、中田とミュージシャンも心の底から音楽を、セッションを楽しんでいるのが伝わってきた。
中田の鍵盤が「Little Changes」のイントロを奏で、ライブがスタート。隅倉、張替のリズム隊の太いリズムと中田の色気のある歌が重なる。中田の歌と隅倉の歌うようなベースが絡むジャジーな「Terrible Lady」が投下される。「日本屈指のイケオジ3Pバンドです」と中田が語っていたが、3ピースで極上のグルーヴを作り上げ、“薫り立つ”音を奏で心地いい空間を作っていた。
メロウな「魔性」では中田の哀愁を帯びたギターの音色と妖艶な歌、まさに“中田劇場”に客席はひきつけられる。『LITTLE CHANGES』というアルバムは、“引き”の美学を感じる音数が少ない作品で、それだけに中田の歌と楽器の音色が、“間”や歌詞の行間に色気や艶を溢れんばかりに感じさせてくれる。“ムード”を大切にし、聴き手に妄想させる一枚だ。この日のライブもそうだった。
グルーヴがどこまでも気持ちいい「疑問」、そして「眩暈」「あげくの果て」「プリズム」と切ないメロディに胸が締め付けられる。中田が作るメロディは“血が通っている”と言葉が適切かどうかわからないが、温もりと深さを感じせてくれる。そんなメロディを物語性を感じる声で歌い、さらに歌を立てる演奏と相まって、どこまでもドラマティックな世界が生まれる。コロナ禍でSNS上で知り合った、ドイツのミュージシャンと作り上げた全英語詞のフューチャーソウル「PALE STRANGER」は、アルバムの中で異彩を放っているが、ライブではよりチルな雰囲気になり、客席はたゆたうように楽しんでいた。
「わが身ひとつ」では一緒にツアーを回ったカトウタロウが、続く「こまりもの」では平泉光司がコーラスで登場。さらに「口ほどにもない」ではギター八橋義幸が登場し、滋味深い音色で曲をさらに表情豊かなものにする。ツインギターを中田は笑顔で楽しんでいる。
イントロが始まった瞬間、客席から歓声があがったのは「なんとなくやりたくなって」と語っていた椿屋四重奏の「螺旋階段」だ。ずっと中田を応援してきたファンには嬉しいサプライズだ。「感慨深い夜になった」と客席を見渡し、「静寂のホリゾント」で本編は終了した。
アンコールに応え登場した中田は「20年コツコツやってきたからこそ実現できた」とこのツアーを振り返る。中田の人柄、音楽に惚れ込んだ最高のミュージシャンたちが、笑顔でセッションを楽しんでいるこのステージ、瞬間こそが、まさに20年間築き上げてきたものだ。「ツアーも1本も飛ばすことなく、ここまで来ることができました。本当にありがとうございます」と客席とスタッフに感謝の言葉を贈る。ゲストメンバー全員でのセッションはまだまだ続く。ラストの「誘惑」ではベースの千ヶ崎学も登場し、うねるベースでグルーヴを作り出し、まさに“変幻自在”のグランドフィナーレにふさわしいセッションで締めた。
変幻自在にアドリブが加わるセッションと、それぞれのミュージシャンのノリや熱量が絡み合い、高い自由度から生まれる極上のグルーヴ。そして中田の“深化”し成熟した歌。いつまでも観たい、聴きたいと心からそう思ったステージだった。
Live Info.
プラネタリウムライブツアー『LIVE in the DARK tour w/中田裕二』
日程:2022年11月5日(土)
場所:福岡市科学館6階 ドームシアター(プラネタリウム)
出演:中田裕二[サポート:八橋義幸(Gt.)/ sugarbeans (Key.)]
時間:19:00開演(18:30開場)
※福岡公演は1公演のみの開催です
日程:2022年11月11日(金)
出演:中田裕二[サポート:八橋義幸(Gt.)/ sugarbeans (Key.)]
時間:1st Stage 18:00開演(17:30開場) / 2nd Stage 20:00開演(19:30開場)
※1st/2ndは同じ内容です