『ガキ帝国』、『パッチギ!』などの傑作を世に送り出してきた井筒和幸監督の8年ぶりの新作長編で、EXILEのMATSUこと松本利夫を主演に迎えた『無頼』が12月12日(土)に公開。
井筒和幸監督をはじめ、松本利夫、木下ほうか、中村達也、阿部亮平が、東京・新宿のK's cinemaにて行なわれた舞台挨拶に登壇した。
泉谷しげるが歌う主題歌「春夏秋冬~無頼バージョン」に乗って登場した登壇陣。最初に挨拶を求められた井筒監督は、満員の客席からの万雷の拍手に照れくさそうに「かなりドキドキする映画なので楽しんで見てください。今日はありがとうございます」と頭を下げる。
今回、映画の登場人物は約400人で、オーディションには井筒作品に出たいと約3,000人が集まった。社会のはぐれ者たちの戦後を描いたこの『無頼』だが、井筒監督は「映画って本当に難しい。いつも悩んでます」としみじみ。そして本作、および自身が映画監督になる“きっかけ”になったという、1973年に大阪・道頓堀で『仁義なき戦い』を見たときの強烈な思い出を回想。
「僕はちょうど二十歳で人生が決まってなくてフラフラしてました。最後に(舞台挨拶に)深作(欣二)監督が登場して、ひと言だけ『本日はどうもありがとうございました』って言ったら、やんややんやの喝采で…。真ん中に菅原文太さんがいるのに(菅原さんへの歓声以上の喝采で)ワーっと。あの時、『映画を作ってやろう。やくざ映画を作ってやろう』と思った。あれから47年も経ったのか…」と感慨深げに語っていた。
松本利夫は「もともと井筒さんの大ファンだった」とのことで、主演でのオファーに「嬉しく思いましたし、身が引き締まる思いでした」と振り返る。撮影について「難しかったのは全部なんですが、特に大変だったのは刺青をペイントで入れるのに3人がかりで7時間かかって、夜中の12時に初めて、朝7時に(ペイントが)終わってすぐに撮影で、そのまま夜中まで…という感じで。特に刑務所のシーンでは、ペイントの後に坊主にしないといけなくて、(看守に)素っ裸でケツの穴を見られるというシーンで、そのときだけは『俺、何やってるんだろう?』と人間崩壊するんじゃないかって思いました(苦笑)」と明かした。
木下ほうかは、16歳の高校2年生のときに井筒監督の『ガキ帝国』のオーディションに合格し、同作で俳優デビューを飾って以来の付き合いであり、「いま56歳だから40年ですよ! この方がいなかったら、映画に出会ってなかったらここに立ってなくて、間違った方向に行ってた」と語る。そんな長い付き合いの木下だが、今回の民族派活動家の男という役柄に関して「非常に難しくて、正直、自信がなくて断りたかった」と意外な告白。それでも「難しかったけど助監督がずっとリハーサルに付き合ってくれて、ちょっとずつ稽古することでギリギリできました」と充実した表情を見せていた。
阿部亮平は2度目の井筒組だが、ほかの現場にはない井筒組、井筒監督ならではの特徴として「役者に優しいです。いいものが撮れるまで撮ってくれるので」と役者のために厳しくも粘ってくれる監督であると語り、「だから、役者がみんな画面の中で生き生きしてると思います」と力強く語る。
中村達也は初めての井筒組となったが、「監督は恐ろしいんだろうなぁと思ってたら、意外と優しく演技指導をしてくださいました。気温は低かったけど、温かい現場でした」と現場の様子を明かす。そんな中村について、井筒監督は「すごく律儀で、いつも直前まで台本を読んでいた」とその真面目で真摯な姿勢を称賛していた。
本作はデジタルではなく、フィルムで撮影されており、井筒監督は「フィルムが回り出すと緊張感が違う!」と俳優陣の熱い思いがフィルムに焼き付けられていると熱弁。最後に改めて「本日はありがとうございました。真面目に作りました。社会の底辺で生きる者たちの昭和史です」と語り、会場は再び熱い拍手に包まれ、舞台挨拶は幕を閉じた。
『無頼』はK's cinemaほか全国にて順次公開中。
商品情報
無頼
2020年12月12日(土)より新宿 K’s cinema 他全国順次公開中
配給:チッチオフィルム
配給協力:ラビットハウス
©2020 「無頼」製作委員会 / チッチオフィルム