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ゲスの極み乙女。、初の生配信ライブレポ! アリーナで趣向を凝らした大忘年会「僕のなかでの決意表明みたいな曲を」!

2020.12.10

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ゲスの極み乙女。 初の無観客配信ライブ「uP!!!NEXT SPECIAL EDITION 2020 ゲス乙女大集会−大忘年会アリーナ編− 」は、 川谷絵音(Vo/Gt)、 休日課長(Ba)、 ちゃんMARI(Key)、 ほな・いこか(Dr) が昭和の雰囲気漂う和室で和やかにこたつを囲み、 みかん片手に2020年を振り返るというシーンでスタート。 
 
今年やり残したことを話すなかで、 コロナ禍でメンバーとも会えなかったこと、 アルバム『ストリーミング、 CD、 レコード』をリリースしたが、 アルバムのツアーはできなかったこと、 ライブだけはどうしてもやりたかったことが語られ、 部屋のブラウン管テレビが今回のライブタイトルを映し出す──そして画面は、 ライブ会場へと切り替わった。 初の配信ライブは、 ゲスの極み乙女。 らしい趣向を凝らしたものになりそうだ。
 
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休日課長のスラップベースとリリカルなピアノが絡み合う最新アルバム『ストリーミング、 CD、 レコード』からの「人生の針」で幕を開けたライブ。 コーラス&キーボードのえつことささみおというお馴染みのメンバーを加えた編成を取り囲むようなワイドなスクリーンには、 映像が映し出され曲を幻想的に彩っていく。 メンバーそれぞれにカメラが近づき、 その卓越したプレイに肉薄できる感じ、 いつもとはちがった角度でもライブが見られるのはこうして映像にこだわった配信ライブならではだろう。 
 
続く「キラーボールをもう一度」では、 サックス、 トロンボーン、 トランペットのホーンセクションを交えたファンキーなサウンドで、 一気に華やかできらびやかな空間に。 「ロマンスがありあまる」では一転してモノクロの映像になって、 そのアンサンブルのドラマ性をエレガントに引き立てた。 
 
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また今回はAR(拡張現実)を用いた演出もあり「はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした」では、 歌詞のフレーズが街のさまざまなネオンサインとなり、 そのネオンと言葉が溢れる街をさまようような感覚。 グルーヴィなサウンドに乗せほな・いこかと川谷絵音のツイン・ボーカルが、 アンニュイでシュールな世界を紡ぎ出していく「秘めない私」、 星が降り注ぐ「星降る夜に花束を」、 そして「ハツミ」では心地よく詩的な雨だれのようなアンサンブルとラップに、 画面にも雨雫が滲む叙情的な時を生み出していく。 
 
最新作を中心とした前半から、 見所が満載。 残念ながらアルバムを携えたツアーはできなかったが、 作品の色鮮やかでふくよかなグルーヴや歌心を味わえる内容だ。
 
中盤からは、 冒頭にあったこたつのシーンを交え、 ゆるゆると、 楽しそうに語らう4人の話から曲につなげていくような構成。 視聴者もテレビ番組を見る感覚だ。 今年はどこにもツアーや旅行に行けなくて、 手にしているみかんが地球に見えてきた、 なんていう話から続いた「無垢な季節」では、 チャイナ服やアロハシャツ、 南米風ハットやロシア帽姿などメンバーがさまざまな国の衣装に身を包み、 世界の観光名所の映像やパネルを用いて旅気分を盛り上げる。 疾走感のあるサウンドとキッチュな映像でポップなトリップだ。 
 
続くもこたつのシーンで、 メンバーのInstagramの話やお腹が空いたからUber Eatsを頼もうなどやりたい放題。 そして「私以外私じゃないの」では、 メンバーのこの1年のInstagramの写真がスクリーンに映し出された。 「パラレルスペック」では、 「みなさんお元気ですか。 画面の前ですけど、 僕らはいつもみたいにライブをしているつもりでいるんですけど、 どう映っているんでしょうか」と川谷はMCする。 
 
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配信は反応が見えないから怖いと言い、 「今年初のライブがこんな形になるとは思っていなかったですけど、 でも今年はアリーナ公演も中止になってしまったので、 こうしてアリーナでできるのはありがたいです。 でもそろそろ、 ソロとか聴きたいじゃないですか? でもソロと言っても普通のソロじゃないですよ」と前振り。 
 
「今年、 ベースを弾かずに料理本出していたやつのベースソロ、 聴きたいか!」、 「会ってない間に、 家の中が植物だらけになっていた、 植物の精霊のキーボードソロ、 聴きたいか!」、 「来年Netflixで水原希子とダブル主演するやつのドラムソロ、 聴きたいか!」と煽って、 各自華麗なソロのプレイで魅せて、 「パレレルスペック」をさらにプログレッシブに彩る。 
 
普段のライブももちろんだが、 バンドのどの角度から見ても、 どのプレイヤーから見ても、 音楽的な醍醐味にもエンターテインメント性にも富んでいるのがゲスの極み乙女。 だ。 その個々のプレイと、 アンサンブルの凄みに触れる場面だろう。
 
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再びこたつのシーンに戻って、 Uber Eatsが到着。 頼んでいたのは、 餅。 そして「餅が食いたいかー!」という掛け声から「餅ガール」へという、 コテコテの流れで楽しませてくれる。 餅アニメと“餅”の字が疾走感溢れるサウンドに乗ってじゃんじゃんスクリーンから飛び出してくるARの演出で、 画面内はポップなカオス状態。 ちゃんMARIのキーボード上にも小さな焼き餅が飾られていたりと、 ぬかりない。 
 
また懐かしのゲームの話からつないだ「キラーボール」では、 メンバーが8bitのキャラクターになって、 RPGや格闘ゲームやアクションゲームを繰り広げる。 さらに間奏パートで、 休日課長のポージングに合わせてちゃんMARIが即興で音をつけるというシュールなエチュードまではじまって、 やりたい放題だ。 
 
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終盤に差し掛かるところで川谷は、 「今日は見ていただいて本当にありがとうございます」とMCをはじめる。 「今年は(コロナ禍で)メンバーにも会わなくて。 レコーディングも今年頭にやったものが6月に出てるので、 音源は発表しているんですけど、 ライブはすべてできず。 このバンドは特殊なので、 4人それぞれがいろんなところでちがう活動をしていて、 久しぶりに集まってリハーサルをやって、 こうしてライブやって──バンドがちゃんとライブをやることが、 精神衛生上大事なんだなということに気づいたりとか、 長くバンドをやっているけど無観客でライブをやるのってなかったなと思って。 いい経験になったし、 またアリーナでできたことが嬉しい」という。 
 
そして今回の“ゲス乙女大集会”は2016年の武道館公演以来のタイトルとなったが、 当初はこのタイトルをつけることに迷いはあったが、 今ならいいかなと思いがあったと語る。 
 
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「見てくれている人も、 この“ゲス乙女集会”という言葉に懐かしい響きや大事な響きがあると思うんですけど、 僕らにとっても大事な1日になったかなと思います」と川谷。 久々にライブをやると改めて音楽はいいなと感じたと率直にその思いを述べると、 「僕のなかでの決意表明みたいな曲を」と、 2018年にリリースした「もう切ないとは言わせない」を演奏した。 
 
ここまでたくさんの演出が施されてきたが、 この曲ではバンドの演奏を真正面から捉えて、 その歌をまっすぐに伝えるものになった。 笑いあり切なさあり感動ありと緩急たっぷりのライブはいよいよラストへ。 
 
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最新作から、 憂いのポリリズムが美しい「綺麗になってシティーポップを歌おう」から、 金銀テープがキラキラと舞うなか「両成敗でいいじゃない」の晴れやかなメロディも舞って、 まさに大団円の大忘年会が幕を閉じた。 
 
エンドロールが流れるなか、 笑顔でステージを離れ観客のいないアリーナを歩く4人。 その先にはあのこたつの部屋のセットがあり、 改めて大きな会場をこんなふうに使っていたんだなとわかる。 ライブに関わっているカメラクルーなどたくさんのスタッフの姿も見え、 ひとつの“ライブ”や大事な1日を作り上げるマンパワーもうかがい知れる。 配信という形ではあるけれど、 より一層ライブが好きになるような、 楽しさに満ちた一夜になった。
 
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セットリスト

01. 人生の針
02. キラーボールをもう一度
03. ロマンスがありあまる
04. はしゃぎすぎた街の中で僕は一人遠回りした
05. 秘めない私
06. 星降る夜に花束を
07. ハツミ
08. 無垢な季節
09. 私以外私じゃないの
10. crying march
11. パラレルスペック
12. 餅ガール
13. キラーボール
14. もう切ないとは言わせない
15. 綺麗になってシティーポップを歌おう
16. 両成敗でいいじゃない
 
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≪ 12/13(日)までアーカイブ配信中!今からのご購入でもOK! ≫
 
Text:吉羽さおり Photo:小境勝巳
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