4月27日(土)より[東京]ユーロスペース、[福岡]KBCシネマ1・2、[大阪]第七藝術劇場を皮切りに劇場公開するドキュメンタリー映画『正義の行方』。
いまも〈真相〉は、あの森を彷徨う。「飯塚事件」とは何だったのか?
1992年に福岡県飯塚市で2人の女児が殺害された「飯塚事件」。DNA型鑑定などによって犯人とされた久間三千年(くま みちとし)は、2006年に最高裁で死刑が確定、2008年に福岡拘置所で刑死した。“異例の早さ”だった。翌年には冤罪を訴える再審請求が提起され、事件の余波はいまなお続いている。
本作は、弁護士、警察官、新聞記者という立場を異にする当事者たちが語る──時に激しく対立する〈真実〉と〈正義〉を突き合わせながら事件の全体像を多面的に描き、やがてこの国の司法の姿を浮き彫りにしていく。
“オールドメディア”の存在意義をかけて。文化庁芸術祭大賞受賞の傑作ドキュメンタリー、ついに映画化
極めて痛ましく、しかも直接証拠が存在しない難事件の解決に執念を燃やし続けた福岡県警。久間の無実を信じ、“死刑執行後の再審請求”というこの上ない困難に挑み続ける弁護団。さらに、圧巻は事件発生当初からの自社の報道に疑問を持ち、事件を検証する調査報道を進めた西日本新聞社のジャーナリストたち。その姿勢は、マスメディアへの信頼が損なわれ、新聞やテレビなどの“オールドメディア”がビジネスモデルとしても急速に翳りを見せる今日、たしかな希望として私たちの心を捉える。
誰の〈真実〉が本当なのか? 誰の〈正義〉が正しいのか? スクリーンを見つめる私たちは、深く暗い迷宮のなかで、人が人を裁くことの重さと向き合うことになる。
【本予告】がついに解禁
「特報」に続き、さらにスリリングでパワフルな「本予告」が解禁。貴重なアーカイブ映像に加え、「飯塚事件」をめぐって激しく対立する、警察、弁護士、新聞記者たちが語るなまなましい言葉と表情に注目だ。
▼映画『正義の行方』本予告(2024年4月27日公開)
激推しコメントが続々到着
すでに公開されていた森達也のコメントに加え、ドラマ『エルピス -希望、あるいは災い-』のプロデューサー佐野亜裕美、映画監督の岩井俊二、フリーアナウンサーの久米宏、ジャーナリストの青木理、時事芸人のプチ鹿島らの激推しコメントが到着した(以下、順不同)。
観ているあいだ、自分は今、とんでもない作品を観ているとの意識が、ずっと身体の内奥で駆動し続けていた。ここ数年、いや間違いなくもっと長いスパンにおいて、これほどに完成度が高く、そして強く問題を提起するドキュメンタリーは他にない。
──森達也(映画監督/作家)
傑作という表現を使ってよいのか躊躇した。この30年間の「正義」を根底から揺さぶられてしまうのが先だからだ。でもやはり傑作としか言いようがない。
地元紙が自らを検証する姿に、最後の「エルピス」(希望)を見た思い。
──プチ鹿島(時事芸人)
不完全さを抱えた人間という存在が人の罪を扱うという、非常に複雑で難しい問題であるというそのこと自体を映し出している映画だった。昔取材で刑事事件専門弁護士から聞いた「真実は人間の数だけある」という言葉を思い出す。自らの真実、自らの正義に寄りかかって進まざるを得なかった事件関係者たちの証言の先に見えるものを、私たちは目を凝らして見つめなければならないと思う。
──佐野亜裕美(ドラマプロデューサー、『エルピス -希望、あるいは災い-』)
死刑囚の遺族、元捜査一課の刑事たち、弁護士たち、新聞記者たち。多岐に渡る登場人物。木寺演出はその表情を克明に切り取る。どの証言も正しいように思えてくる。飯塚事件という迷宮に迷い込んだ彼らの葛藤はきっと永遠に終わることはないのだろう。司法の女神は瞑った眼で今なお沈黙を守っているかのようである。
──岩井俊二(映画監督)
歪み切った「正義」を振り回す警察捜査に、司法も科学もメディアも跪き、追随してしまった。結果として私たちは、取り返しのつかない過ちを犯してしまったのではないか──そんな鋭利な刃を、この国に生きる同時代の者たちすべてに突きつける秀逸で、しかし残酷なドキュメンタリーである。
──青木理(ジャーナリスト)
怖い。
このやり方を怖いと思わなかった人たちがたくさんいたことが怖い。
──武田砂鉄(ライター)
これは冤罪事件なのか? 真実はどこにあるのか? そんな目で見ているうちに、だんだん見方が変わって他人事ではいられなくなってくる。自分が捜査する立場だったら、報じる立場だったら、どうするだろう、と。立ち止まれるだろうか、向き合えるだろうか、と。
──上西充子(法政大学教授)
飯塚事件に関わったメディア、警察、検察。それぞれの「正義」が暴走する様子を当事者たち自らが証言する衝撃のドキュメンタリー。
最前線にいた元警察官たちが語る捜査の実情や裏側はあまりにも生々しく、それをどう受け止めるのかが観る者に委ねられる。
無実を訴え続けた久間元死刑囚の死刑執行はなぜあんなに早かったのか。突きつけられる多くの示唆とさらなる疑問から目が離せない。
──長野智子(キャスター・ジャーナリスト)
「死刑」は取り返しのつかない刑罰だ。決して誤りがあってはならない。
だが、人間はときどき間違える生き物であり、そして裁判官も人間である。
──高橋ユキ(傍聴人、フリーライター、「つけびの村」著者)
題名は『真実の行方』ではなく『正義の行方』。
証明する手段のない事件を取り囲み、複数の関係者が持ち寄るそれぞれの真実。
二律背反する証言はやがて観る者を底の見えない螺旋へと飲み込んでいく。
問われるのは“何が真実か”ではなく、“何を信じ正義とみなすか”ということ。
私たちが思うより真実はずっと脆い。これは、もう一つの『落下の解剖学』。
──ISO(ライター)
32年前、福岡でこの事件は起きた。
容疑者は逮捕され、16年前に死刑が執行された。
ところが、最近、目撃証言のひとつが訂正された。
そう、裁判はまだ生きているのだ。
担当刑事や弁護士、取材を続けた新聞記者たち。
彼らの話を聞いていると、心拍数が上がってくる。
あと、裁判官の話と死刑執行を決定した人の話が聞けたら、
この国はずいぶん良くなる。
──久米宏(フリーアナウンサー)
登場するのは、現場の警察官、地元新聞記者、DNA鑑定研究者、弁護士たち。それぞれの現場で、それぞれの正義を真摯に追求する人たちだ。そこに覆いかぶさるのは、正義の行方を判断し、死刑という凶器をもった国家。今の日本の司法制度に、死刑宣告の権限を委ねることの無謀さと不条理を知るために、多くの人に見てもらいたい映画だ。
──林香里(東京大学大学院情報学環教授(メディア・ジャーナリズム研究)、東京大学理事・副学長)
木寺一孝監督メッセージ
異例の早さで死刑執行された人物は真犯人だったのか。いったい何が真実で、何が正義なのか…。この作品がこだわったのは、弁護士・元警察官・新聞記者という事件の当事者それぞれが信じる〈真実〉と〈正義〉です。立場の異なる人たちの考えを多角的に構成し、三者がぶつかり合う様子をありのままに提示したいと考えました。是非、自分の眼で“真実”とは何かを探ってみてください。
【プロフィール:監督:木寺一孝(きでら かずたか)】
1965年佐賀県生まれ。88年に京都大学法学部を卒業後、NHK入局。一貫してディレクターとして現場にこだわり、死刑や犯罪を題材にしたドキュメンタリーやヒューマン・ドキュメンタリーを制作してきた。NHKスペシャル「母・葛藤の日々~息子が殺人犯となって一年~」(99)、NHKスペシャル〈こども・輝けいのち〉シリーズ第1集「父ちゃん母ちゃん、生きるんや~大阪・西成 こどもの里~」(03/文化庁芸術祭優秀賞・ギャラクシー賞特別賞)、ハイビジョン特集「少年院~教官と少年たち・250日の記録~」(05)、ハイビジョン特集「死刑~被害者遺族・葛藤の日々~」(11/ギャラクシー賞奨励賞)、福岡発地域ドラマ「いとの森の家」(15/放送文化基金賞奨励賞)、ETV特集「連合赤軍~終わりなき旅~」(19/ギャラクシー賞奨励賞)。『“樹木希林”を生きる』(19)で映画初監督。BS1スペシャル「正義の行方~飯塚事件 30年後の迷宮~」(22)で文化庁芸術祭大賞、ギャラクシー賞選奨を受賞。23年にNHKを退局し、現在は「ビジュアルオフィス・善」に所属し、ディレクターを続ける。
商品情報
映画『正義の行方』
監督:木寺一孝 制作統括:東野真 撮影:澤中淳 音声:卜部忠 照明:柳守彦
音響効果:細見浩三 編集:渡辺政男 制作協力:北條誠人(ユーロスペース)
プロデューサー:岩下宏之 特別協力:西日本新聞社 協力:NHKエンタープライズ
テレビ版制作・著作:NHK 制作:ビジュアルオフィス・善 製作・配給:東風
2024年/158分/DCP/日本/ドキュメンタリー
©︎ NHK
4月27日(土)より[東京]ユーロスペース、[福岡]KBCシネマ1・2、[大阪]第七藝術劇場ほか全国順次公開
書籍『正義の行方』
著:木寺一孝
四六判/248ページ/定価1,700円+税
ISBN:978-4-06-535560-2
発行:講談社
2024年4月4日(木)発売
【目次】
1 遺体発見
2 捜査開始
3 地元紙のプライド
4 捜査一課長交代
5 逮捕
6 死刑判決
7 DNA型鑑定
8 目撃証言の検証
9 調査報道
10 警察庁長官
11 終わりなき闘い
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