本書は、日本のロック・ミュージックが真の意味で市民権を勝ち取る前哨戦を、ライブハウス「ロフト」の創設者が自ら回顧する壮大なクロニクル。
1970年代に日本のロック・シーンはわずか数年で怒涛の如く成長し、やがて国内の音楽業界全体を席巻する存在として巨大な発展を遂げていった。この熱狂の先頭をいく気鋭の音楽家たちと常に併走してきたのが、ライブハウス「ロフト」だ。
本書は、日本のロック及びフォーク界のスーパースターを育てた「聖地」の創設者である著者が、いまや伝説として語り継がれる「1976年の新宿ロフト」のエピソードを大きな軸として、日本のロック・ミュージックの長く曲がりくねった歴史を、アーティストたちの素顔や業界の生々しい実情とともに明らかにする。歌謡曲に対するカウンターカルチャーとして、ロックが市民権を得ていった軌跡を堪能できる一冊だ。
『日刊ゲンダイ』での連載記事『「ロフト」創業者が見たライブハウス50年」を大幅に加筆、70年代にロフト・レーベルにも参画した音楽プロデューサー・牧村憲一との対談は本書のための録りおろし、1976年10月に行なわれた新宿ロフトのオープンセレモニーにまつわる貴重な資料も収録。ライブハウスという新たなカルチャーが胎動した時代の息吹と熱狂を感じ取れるだろう。
「80年代に入ると空前のバンド・ブームが訪れ、ホコ天にイカ天と、多くの若者から絶大な支持を得た日本のロックは全盛を極めるようになった。その発火点として新宿ロフトが果たした功績は大きい。そして、その新宿ロフトがオープンに至る過程もまた重要であり、そこからさらに遡り、前時代的だった60年代後半の日本の音楽業界の在り方や、それに異を唱えるべく1971年3月に烏山ロフトが生まれた時代背景を再検証する必要がある」──プロローグより