ARBの曲を唄い継いでいくことがKEITH生誕祭の大切なテーマ
──こうして見ると、今年も最強の布陣による最高のセットリストになりそうですね。
柳沼:やっぱりARBというバンドは特別な存在で、ARBのことになると誰しも無邪気な“ARB KIDS”に返っちゃうんです。今回も頭から最後までプレイリストを作って、自分が演奏しない曲でもやっぱり聴き込んでしまうし。そうすると当時の思い出が鮮やかに甦るんです。そこで浸っていると練習ができなくなるので困るんですけど(笑)。
KEITH:俺もプレイリストを二種類作って、改めて聴き込んでる。オリジナル音源とライブ音源の二種類をね。ライブはどうしてもテンポが速くなるから、オリジナルを聴き直してテンポを戻したほうが歌はいいんじゃないかな? とか考えたり。
柳沼:KEITHさんは歌をちゃんと聴かせたいという視点でドラムを叩くので、各セクションのボーカルをたっぷり堪能できると思いますよ。
──どのパートにも勢いのあるナンバーばかりでなく、じっくりと聴かせるスローナンバーが用意されていますしね。
KEITH:そうだね。お客さんもそのほうが楽しめると思う。速いテンポの曲をワーッとやるだけじゃ単調になってしまうから。
柳沼:お祭り騒ぎのライブをやるだけなら勢い任せの曲ばかりでいいと思うんですけど、幅広い曲調をレパートリーとするARBの世界観を伝えるのも今回のテーマなので。それとさっきも話したように、選曲があまり被らなかったのもARBの奥深さを象徴しているような気がするんです。たとえば「×××××」を選んだのは延原さんしかいなかったりして、みんな思い思いのARB像があるんだなと思って。特に後半に出てくる方々は年齢がほぼ一緒で聴いてきた音楽が近いし、ARBに対する思い入れも世代的に強いんですよね。
KEITH:自分としては選曲を見てなるほどなと思うよね。人気が高いのもわかるし、みんなが求めるARBとはこういうことなんだなと感じたり。今回のライブを観て、お客さんたちもきっといろんな思い出が蘇ると思う。
柳沼:そうでしょうね。2018年にLOFTで行なわれたARBのデビュー40周年記念ライブで、ウチの中尾(In the Soup、4-STiCKSの中尾諭介)が「Heavy Days」を唄う前に満席のフロアへ向けて「ここには500人分のARBへの思いがある」と話すのを聞いて、思わずうるっときたんです。500人いれば500通りのARBに対する憧れ、思い、愛情があるんですよね。
──アンコールでは、去年、初の試みとして喝采を浴びたあの曲がまた披露されるそうですね。
柳沼:今年はどうしますか? とKEITHさんに確認したら、ぜひやりたいということで。
KEITH:ボーカリストはヤギちゃんの推薦でね。
柳沼:××さんは絶品の歌唱力だし、人を惹きつける歌声が持ち味ですから。
KEITH:音数が少なくても楽曲本来の良さが際立つんだよね。楽器が減る分ごまかしも効かないし、緊張感もある。ただ叩いてるわけじゃないし、いかに歌と寄り添うか、自分としてはプレッシャーでもある。
柳沼:ボーカルも怖いはずですよ。それは去年唄った中尾も言ってましたから。
──今回も選曲の被りが少なかったり、こうして然るべき楽曲が選ばれているのは、ARBという屋号を絶えず守り続けているKEITHさんが“ARBらしさとはこういうものなんだ”という指針を発信し続けているからだと思うんです。発表から40年以上が経過しても決して色褪せぬ楽曲の普遍性と強度ももちろんあると思いますが。
柳沼:曲自体が今の時代に求められている部分もありますよね。閉塞したこんな世の中だからこそARBの“WORK SONG”がリアルに響くんだろうし。僕は京浜工業地帯に生まれ育ったので、たとえば「ファクトリー」で唄われる情景や世界観はとてつもなくリアルなんですよ。
KEITH:時代の流れに耐え忍んで残った曲って言うのかな。上から目線ではなく、聴き手に寄り添うような曲、背中を押してくれる曲ばかりが自ずと残ったんだと思う。今年もこうしたライブをやることでARBの曲を次の世代へ残していきたいよね。
柳沼:そう、ARBの曲を唄い継いでいくことがKEITHさんの生誕祭ライブの大切なテーマの一つなんです。
KEITH:誰にも唄われず、埋もれたままにしておくのはあまりにもったいないからね。
自分のドラム・スタイルの究極は去年の生誕祭のアンコールで演奏したあの曲
──リハーサルはこれからですか。
KEITH:2月に入ってから集中してやるつもり。トータルで50曲以上叩くことになるんじゃないかな。
柳沼:本番までギリギリのタイミングでリハをやることになりますけど、今回もARB愛に溢れた人たちしかいないので何の心配もありません。みんな底知れぬARBへの愛情があるから即座に一つになれる。それに、ARBの曲を唄い継いでいく試みはこの先もずっとやっていけると思うんです。出たいと言ってくれる人たちがまだたくさんいるし、僕なりの視点でKEITHさんと組んでほしい人もいるし、KEITHさんの中でも一緒にやってみたい人がいるので。
KEITH:こうして今年もまた誕生日にライブをやれるのは来てくれるみんなのおかげだよね。北海道とか広島とか遠方から来てくれる人たちもいるしさ。
柳沼:ありがたいことですね。でも、それだけの価値があるライブをやるつもりですから。滅多にお目にかかれない面子だと思うし。
KEITH:結局、ARBのメンバーでこんなことをやってるのは俺だけなんだよ。やるにしても、原曲を崩したアレンジにしてみたりさ。俺自身はやっぱり原曲のニュアンスを大事にしたい。その曲をレコーディングした当時の思いがずっと残ってるからね。
柳沼:意図的にアレンジを変えることがダメと言うよりは、基本に忠実であることをKEITHさんは常に大切にしているんだと思います。その思いやスタンスがARB KIDSにも伝わっているんじゃないですかね。
KEITH:当時のメンバーが試行錯誤した上で固まった納得のアレンジ、ベストな形でレコーディングしたわけだから、やっぱり自分としては原曲に忠実でありたいんだよ。
柳沼:今回、HAKUEIさんに「どんなアレンジになるのか事前に知りたい」と言われたんですけど、どんなアレンジも何もレコードのままですよと答えたら「そうなの?!」と驚かれました(笑)。
──KEITHさんとは新宿LOFTを通じて盟友関係にある、同じドラマーで“原子のドラム”の異名を持つあの方は今年もいらっしゃいますか?
柳沼:きっとお見えになるでしょうね。去年もアンコールでステージへ乱入して勝手にシンバルを叩いてましたから(笑)。
──KEITHさんは今年で74歳を迎えますが、実感としていかがですか。
KEITH:全然ピンとこないよね。まさか70を超えてまでドラムを叩き続けているとは思わなかったし。新宿LOFTでめちゃくちゃ飲んでいた若い頃は30代までは叩くのかな? とか漠然と思っていたけど、29歳で大病を患って酒をやめたりして。それからは1日でも長くドラムを叩き続けたいと思うようになった。
──若きKEITHさんが師事していたつのだ☆ひろさんはKEITHさんの3歳年上で76歳。ロックの世界ではつのださんが現役ドラマー最年長ということになるでしょうか。
KEITH:でも、いまだに全国をまわってライブをやり続けているドラマーは俺かまこちゃん(髙橋まこと)くらいじゃないかな。まこちゃんは俺の2個下だから72か。俺はいまだに5日間連続でライブをやったりしてるけど、やってるほうが楽しいし、体が安定するんだよね。
柳沼:KEITHさんがこうして現役でドラムを叩き続けている以上、まだ若い我々は年齢のことで言い訳にできませんよね。若いと言っても50代後半なんですけど(笑)。
KEITH:同世代のバンドマンがどんな感じなのかわからないけど、自分としては日々の鍛錬が今も欠かせない。毎日散歩したり、2.5kgの鉄下駄を履いたり、足に錘を付けて動いてみたり。
──若い世代のドラマーにもぜひKEITHさんのプレイを見ていただきたいですね。我を出すよりも周囲を引き立てる、その人となりがよく出たドラムを。
KEITH:どうかな。今の若い人たちはツーバスで速く叩いて凄いテクニックだなと思うし、俺のドラムは彼らの求めるものじゃない気もするけどね。俺は決して難しいことをやってるわけじゃないし、チューニングも全然違うだろうしさ。ただ、俺は俺で自分にしかできないことをやるしかないし、俺のドラム・スタイルの究極は去年の生誕祭のアンコールで演奏したあの曲で見せたかった。俺はこういう気持ちでドラムを叩いているんだよと伝えるにはあの曲をあの形で演奏するのが一番だから。今年もやるつもりだから気合いが入るよ。
──では最後に、新宿LOFTへお越しになるみなさんへ一言ずついただけますか。
柳沼:去年の生誕祭が大成功だったので今年はさらに盛り上げたいですし、前回とはまた違った見せ方ができるはずなので、生粋のARB KIDSの方々も含めて絶対に観たほうがいいと思います。バンドをやっている方々も世代を問わずぜひご覧になってほしいし、充実した各セクションのプレイを存分に堪能していただきたいです。あと、開演直後のオープニング映像も必見なのでお見逃しなく。
KEITH:74歳になってまた新宿LOFTでドラムを叩けるのは、お客さんや出演してくれる仲間の協力があってのものだから幸せに感じます。2月6日にLOFTでみんなと会えるのを楽しみにしています。















