自分に厳しい自分が自信を削いできたけど、褒めてあげられる自分も現れました
── 一昨年の『年末大感謝祭』に出演された時に出演者との対談記事を掲載したのですが、その中で「人生の中で一番曲をリリースした年でした」とお話しされていました。去年は『SCREW』というアルバムのリリースはあったものの、ちょっと落ち着いていたのかなという印象があって。明けて今年はリリースが3曲、去年から今年にかけて何か考え方が変わるようなことや変化があったのかな、と勝手に思っていました。
SPRINGMAN:そうですね……(今年リリースの曲も)2024年に作り進めていた曲ではありましたけど、考え方は変わった気がします。
──その対談では「音楽って楽しい、と心から思わせるためには、自分も楽しんで正直にやらなくてはいけない」というようなことも言っていたんですよね。
SPRINGMAN:良いこと言ってますね(笑)。2024年はですね……時代の変化というものを激しく感じまして、自分の好きだった音楽が日々日々変化することに、気持ちも、自分の音楽制作スキル的にも……ついていけていないのではないか、という疑心暗鬼な時期がすごくあったよう感じてました。非常に迷っていた期間でひたすら考え抜いた1年でしたが、その甲斐あって2025年は楽しいかどうかを一旦ちょっと脇に置きつつ、思いついてやれることを一つずつやっていこう、自分の人生としてもとにかく行動しなくてはと思っていろいろと動き出すことができたと思っています。2025年はそんな気持ちの切り替えをベースに制作というものに取り組んだ1年で、楽しみながら音楽を作ってはいるのですが苦しみや悲しみを投影することもまた音楽の一つだと思っていて、苦しい気持ちや辛い気持ちも音楽に表現してみた1年になったような気がしていて。そういう意味で、2025年はやり切ったなと思っております。
──そうでしたか。葛藤のような昨年を経ての今年だったのですね。
SPRINGMAN:ありがとうございます。おしゃべりが下手くそだってマネージメントにもご心配いただいてて(笑)。悔しい気持ちと自責の念がいっぱいなので、伝わっていればこっそりとおしゃべりの練習をしてきた甲斐があったなと思いました。マネージメントの皆様には本当に優しくご指導いただいてますけど、客観的な自分に非常に厳しくされております。
──客観的に見ている厳しいもう一人の自分がいるのですね。その厳しい自分は、音楽の部分にも顔を出してきたりします?
SPRINGMAN:音楽の側面こそ非常に厳しくしてきて本当に自信を削いでいきますね。今まではずっと、ソイツと僕の二人でやってきたんです。なんですが、自分のことを褒めてあげられるのは自分しかいねえぞっていう、もう一人の荒川大輔も生まれたんですよ。本当に出会えて良かったです。(その上で)何が大切なのかと考えたら、自分が前向きで自信を持って人の前に立っていることだろうということに気づけたのが11月後半で、やっと自分に少し優しくなれた気がしております。だから今年は本当にやりきったと感じて、来年がすごく楽しみなんです。
──11月後半のその気づきは、具体的に何かがあったのかな?
SPRINGMAN:やってきたことを(と言ってノートを取り出して見せながら)こうやって、紙に書く形で整理していきながら。やり切ったな、って思えたし、(これから)もう1周目が始められると感じました。僕はノートが本当に好きでノートはいっぱい買ってしまうんですよ。こんな(小学生が使うような)「連絡ノート」なんてもう買わないじゃん! みたいなノートで(笑)、“連絡すること”なんてないけど、このフォーマットとかも良くてちょっとフォーマットが変わるだけで、書くことや書いてみたいことも変わると思ってまして。結果それがクリエイティブ的にも、お仕事のやり方的にも何かいい方向に転がらないかという自分なりの試験的な行動でもありますね。
──そしてそれをまた見返したりして?
SPRINGMAN:読み返さないです、もう書きっぱなしです。(書いて)リセットしないと先に、次に進めないことが多いので。
──面白いですね。ちなみに歌詞を書くのもノート?
SPRINGMAN:歌詞もやっぱりノートや紙に書くのが好きです。ネタ帳的な意味では携帯にメモすることのほうが多いですけどね。でも(ネタ帳から)引っ張ってくることは滅多にないですね。
──なるほど、本当にただ記録しっぱなしみたいな感じなんですね。
SPRINGMAN:そうですね。要は脳味噌に溢れ出てくることを書き出しちゃうと忘れられるじゃないですか、そうすると(脳の)キャパが空くので。気づいたらずっと頭の中で考え事しちゃうので、スッキリさせたい時に(書き出す)。パソコンに置き換えると、デスクトップがこちゃごちゃになった時に僕はそれを一旦、日付のフォルダを作って“何月何日邪魔だったもの”っていうファイルを作って、全部ぶち込んでしまっておくんですよね。
──パソコンのデスクトップのほうには例えばメロディだとか歌詞とか、より作品に近いものを残して?
SPRINGMAN:デスクトップに残すものはもうちょっと幅広くて、イラストレーターで作ったアートワークのデータとかグッズのデザインとか楽曲のデモやPDFの資料とかいっぱいですけど、いちいちフォルダ分けしてる時間もなかなか取ってあげられなくて。そういう時間を取れる人間になりたいとは思ってるんですけど(笑)、一旦まとめてしまっておく(バックアップを取る)時が2カ月に1回ぐらいありますね。デスクトップ上がアイコンで埋まっちゃって、2カ月に1回ぐらいで(画面が)パンパンになるんですよ。そうなると、画面に散らばっているフォルダを全部まとめて一つのフォルダに入れて、外付けのハードディスクに移してます。
──見返すことはないかもしれないけど、保存はちゃんとしてるんだ(笑)。
SPRINGMAN:そうですね。非常にアーティスティックなことかと思いきや、僕も周りの皆もそうだと思うんですけど、僕らがしてることって非常にビジネス的なはず……だと思うんですよね。ジップにまとめて転送するとか、フォーマットや書式を気にするとかそういうことも(笑)。
新宿LOFTと壮大なストーリーをこれから迎えられますように
──さて、『年末大感謝祭』が間近となりました!
SPRINGMAN:今年も『年末大感謝祭』に呼んでいただきまして、『年末大感謝祭』がSPRINGMANとして今年は最後のライブになります。毎年、呼んでくださって本当にありがとうございます。僕らが楽しそうにしてないとお客さんも楽しめないと思っておりますので、僕らも楽しまないと! と思ってます。
──初めての大感謝祭はBARステージへの出演でしたが、2023年からはホールに出演されていますね。
SPRINGMAN:今年も『年末大感謝祭』という場所でホールを任せていただいたのは本当にありがたいなと感じておりますし、その気持ちに応えるライブをできたらなと思っております。
──かつてBARステージのことを「ライブハウスという環境でこう見せればいいというのをシンプルに教えてもらったストイックな場所」と評していましたね。
SPRINGMAN:メッチャ良いこと言ってますね(一同笑)。いや本当にその通りなんですよね。
──ではホールのほうの印象や感じていることなども伺いましょうか。
SPRINGMAN:これはあくまでステージに立つ人目線の話で足を運んでくださるリスナーの皆さんにとっては関係のない話なんですけど、ホールは下(=床)のチェック・市松模様が見えなくなって初めて一人前だと。そういう皆さんのお言葉を聞いているのでどことなくやっぱり意識してますね、ステージに立つと僕はまだ「(市松模様が)見えるな」って。
──補足すると、お客さんがまばらだと新宿LOFTの床・白黒の市松模様が見えるけど、お客さんがパンパンだと床が全く見えない、ということですね。
SPRINGMAN:ホールステージは付け焼き刃な感じじゃダメだなと思っているので僕は、ホールのステージに立つ時には“まとめる力”というのを何となく意識しているかもしれません。MCもそうですし、思いつきだけでは良い演奏や良いと思っているパフォーマンスをお届けできないステージだなと感じてます。でもそんなことはアーティスト・ミュージシャンとしてのスタンスなだけで、お客さんからしたらどっちのステージでも変わらないんですよね。それが一番のアンサーかもしれないです。
──個人的には今回のインタビューで荒川大輔という音楽人の現在の思考を多少なりとも垣間見られて良かったです。次回お話を伺う時は果たしてどんな思考になっているかも(笑)楽しみですよ。
SPRINGMAN:考えが変わったら報告します(笑)。短期的には(考え方は)変わらないと思うんですけど、そうは言いつつこれから壮大なストーリーを新宿LOFTと迎えることができた時には、それをファンの皆様にも解説したり説明してお届けしたいと思うようになることもあるかもしれないな、といま思いました。
──本当に前向きな感じを受けながら最後に、SPRINGMANとして来年の目標や目論んでいることなどを聞かせてください。
SPRINGMAN:ファンの皆様・応援してくれている皆様にはまず、いま非常に前向きな状態の荒川がたくさんのことを目論んでいるということだけはお伝えしたいです。自分がこれから取っていく選択肢や行動、そして僕が伝えていくことが。必ず皆様にとっても嬉しいことだし、皆様の力になれるものだと本当に信じておりますので、来年のSPRINGMANもよろしくお願いしますという気持ちと、期待していてくださいという気持ちです。少々お待たせはしてしまうと思いますが、待っていてください!















