聴いた人も鎖から解き放たれる作品になって欲しい
──アルバムを聴いても思ったのは、ユダ様って根は真面目でいいヤツなんだけど。流血ブリザードのユダになった時は、人が表に出さない悪意とか嫉妬とか捻くれた気持ちとかを、まさにGGアリンのように露悪的にさらけ出してて。人の欠点や嫌な部分を全部背負って、嫌われることも覚悟して「俺が代わりに言ってやる」みたいに矢面に立つ代弁者というか、生贄みたいな存在になっているじゃないですか? そんなことを長年やり続けているから、揺り戻しが来るのは仕方なくて。じゃあ、それをどう克服するかと言ったら、結局、歌にして音楽にして吐き出すしかないんだろうし。
ユダ:そうですね、まさにそれしかなかったですね。そこまで考えてなかったけど、そうやって言語化してくれると確かにそうやし。このアルバムを出したのも運命だったのかな? というのはすごく思います。
──でも今作ではそれを重くシリアスにならないように楽曲に落とし込んで、パッケージできているのがすごいなと思いました。
ユダ:そこはみんなで作ってるから、そういうものになっただけで。俺だけやったら、「あんまりギャグっぽくしたくない」とかいうのもあったのかもしれないけど。「苦しい苦しい」をそのまま言うたって、それは流血ブリザードでやることではないやろうってことで。そうやったとしても、面白おかしい部分を入れてっていう、バランスはすごく考えましたね。
──そこで救ってくれているのが、今作で再録した過去楽曲たちだっていうのも美しいと思って。みんなの思う流血のイメージを表した、面白おかしい要素も多分に含んだライブ定番曲が後半に入ってることで、ちゃんとバランスが取れてます。
ユダ:確かに。これ一枚持っとけば昔から現在まで分かる、集大成的なアルバムにもなってますからね。
SUZAN BO EALE|Bass
──しかもライブで磨き続けてきた過去楽曲たちが、最新型の流血ブリザードのサウンドで鳴らされていて。「I LOVE ME feat.EDDIE」は、「こんな贅沢なEDDIEさん(MAD3)の使い方、あります!?」って驚きました。
ミリー:あははは! ホント、贅沢だよな。意外とノリノリでやってくれたけどな。
ユダ:でも、夢のようでしたね。「俺があんだけ聴いてたMAD3のEDDIEさんが、こんなのやってくれるんだ!?」って。
──あはは。1曲目「アンチェインオーバーキル」からすごい振り切れてて、「流血の新作、こう来るんだ!」って驚いたけど、不思議とらしくないと思わなかったし。ライブも想像できるけど、いままでとはちょっと違った画が見える感じで、すごいワクワクしました。
ユダ:聴いた人にとっても鎖から解き放たれる作品になって欲しいし、新曲たちを引っ提げてやるライブは俺らも楽しみではあるんですけど。なんとかレコーディングできたけど、ムズい曲が多いんで、いまはもっと練習しないといけないっていうプレッシャーもありますね。あと、『FUCK OFF, WE MURDER!!!』では、ミリーが1曲歌ってて。
ミリー:そう。「Expose To Your Kids」はアタイがリードボーカルを取ってるんだけど、そんな機会もあまりなかったし。トラップビートの「When I Die」は、スーザンがトラックを作ってたり。これまでのアルバムでやってないこともやれたのが嬉しかったな。
ユダ:『FUCK OFF, WE MURDER!!!』はパンク/ハードコアを軸にしながら、それ以外の自分たちが好きな音楽やルーツも持ってきて。遊びの部分もありながら、自分たちなりの解釈やオリジナリティみたいなところが入ってるのが聴いてもらえば分かると思います。
──ではせっかくなので、『FUCK OFF, WE MURDER!!!』から好きな曲、特に思い入れの強い曲を一曲ずつ挙げてもらえますか?
ミリー:一曲っていうと難しいけど、アタイは「Outraw Scumfuc」だな。原曲はイナタいロックンロールって感じの曲調なんだけど、ユダのよく通る声を活かしたかったんで、あえてポップ・パンク、言ったらGREEN DAY調の楽曲にして。なるべくGGアリンの原曲とは違う方向にしたかったんで、そういうアイデアを出したんだけど。ずっと流血でやってきて、自分のアイデアをここまで取り入れてもらったことってなかったから、それも嬉しかったな。
スーザン・ボ・イール:『FUCK OFF, WE MURDER!!!』はこだわりポイントが結構あるんですけど、「Expose To Your Kids」とかも、ミリー・バイソンがメインボーカルで歌うっていう、いままでなかったことに挑戦してるし。こだわりポイントとしては、「ギターソロのところにタンバリンを入れてみよう」ってオラがアイデア出して、やってみたらビートルズみたいでカッコ良かったり。ひと言では語れないこだわりをいっぱい入れました。
セクシー・ダイナマイト・プッシー・ガロアⅧ世:僕は「I Wanna Fuck Myself」。ライブでみんなで一緒にノレる曲になったと思うのですごく好きですね。
ユダ:「I Wanna Fuck Myself」はスキンズとかOiパンク調のカバーになってて、GGファンからしたら、「こんなカバーの仕方はダメだろう!」って怒られそうなアレンジになってるし。声聴いても、俺が歌ってるふうに思えないのがオモロいですね。
Sexy Dynamite Pussy Galore Ⅷth|Drums
──世界のGGファンから、いろんな感想聞きたいですね。そして、ユダ様の思い入れの強い曲はどれになりますか?
ユダ:明日になれば、また違う曲を選ぶと思うんですけど。いまの気分やと「Abuse Myself, I Wanna Die」ですね。これ、GGアリンの曲で一番好きなんですけど、何回歌っても上手くいかんくて。とにかく歌詞が多すぎるのと、半分フリースタイルみたいな感じなんで、「こんなん日本人が英語でやるのは無理や! もうやめよう」って言ってたくらいで。「一番好きな曲やのに、満足のいくボーカルが録れんかったな」と思ってたんですけど、あとで聴いたらミックスとかで化けてくれて。CDで聴いてても、シャウトのところの声色もすごい好きで、結果、良い曲になったなと思えて。まぁ、明日聞かれたら「KILL THE POLICE」とかになってそうですけど、いまはそれですね。
──Diwphalanxからのリリースということで、レコーディングや環境の変化は?
ユダ:良い環境でレコーディングさせてもらいました。エンジニアを中村宗一郎さんにやっていただいたんですが、中村さんは歌とかも2回くらいしか歌わせてくれないんですよ。「はい終わり。やり直したって一緒だよ」みたいな感じで、「おいおいおい!」みたいな(笑)。中村さんはGAUZEとかギターウルフとか、俺の好きな著名な人らをいっぱいやってる人なんですけど、後からこね回すのが嫌いみたいで。こうしたいっていうと、「意外と細かいねぇ!」と言われたり、シビアでドライなこともいっぱい言う人で。「いまはバンドやって儲かるような時代じゃないんだから、楽しまなきゃダメだよ。これがどんなに良いアルバムだろうと、昔みたいにめっちゃ売れたりすることはないんだから」って言ってたんですけど。出来上がったアルバムを聴いた時、「……さっき俺、そう言ったけど、何が起こるか分からない気もするね」ってポロッと言ってくれて嬉しかったし。実際にアルバムが出てから、パルプンテ的なミラクルが起きたら嬉しいですね。
セクシー:このアルバムをキッカケに、日本にGGアリンブームが来るかもしれないし。
ミリー:このアルバムを引っ提げての、ワールドツアーがあるかも知れないしな。
ユダ:「MY SWEET HOME OSAKA」が「好きやねん、関西!」みたいな、関西のCMに使われるかもしれへんし(笑)。
──大阪万博に間に合わなかったのは残念だったけどね。
ユダ:そうですね(笑)。しかし今回、レコーディング期間中、ひたすらGGアリンを聴き続けてて。あそこまでパンクを聴き倒した日々も珍しかったし、あの時期にしかなかった熱があったから、ガッとなってるモードの時にアルバムが録れたこともすごい良かったです。「パンクのCDの中で一番好きなアルバムは?」って聞かれたら、いままではセックス・ピストルズとか言うてたかもしれないけど、「この2枚です!」って自信を持って言えるアルバムができたんで。それが何より嬉しいですね。

















