凶悪鬼畜ロック集団・流血ブリザードが、実に7年ぶりとなるフルアルバム『UNCHAIN OVERKILL』と、彼らが愛してやまない史上最凶のパンクロッカー・GGアリンのトリビュートアルバム『FUCK OFF, WE MURDER!!!』を2枚同時リリース。流血の最狂傑作であり最大の問題作と言える最新アルバムは、極悪かつアグレッシブな歌とサウンド、怒りも苦しみも下衆っぷりも赤裸々に綴った歌詞世界と、バンドの多彩さやユダの鬼畜ぶりと人間らしさが凝縮。11月15日(土)には下北沢シェルターにて、レコ発ライブ『OUTLAW SCUMFUC TRADTION』も控えた彼らに、2枚のアルバムについて熱く深く話を訊いた。(Interview:フジジュン / Photo:菊池茂夫)
露悪な見せ方を徹底的にこだわり通したGGアリンは美しい
UD Allin
──4枚目のフルアルバム『UNCHAIN OVERKILL』と、GGアリン・トリビュートアルバム『FUCK OFF, WE MURDER!!!』の2枚を同時リリースする、流血ブリザード。聴かせてもらって今回、この2枚を同時に出すことにすごく意味があると思って。GGアリンのトリビュートから、流血ブリザードの音楽や精神的なルーツ、バンドの根幹にあるものがちゃんと見えるから、オリジナル・アルバムで何しても許されるし。リスナーも併せて聴くことで、バンドに対する理解力や説得力がすごく生まれると思います。
ユダ:嬉しいです。『FUCK OFF, WE MURDER!!!』に関しては、俺らがここまでストロングなパンクをやったのは、下手したら初めてかもしれないですからね。
──この2枚のレコーディングや制作のタイミングって、どんな感じだったんですか?
ユダ:もともと、GGアリンが大好きやったんですけど。実は日本でGGアリンを広めた第一人者がDiwphalanx Recordsの広中さんで。広中さんが書いたレビューとか仕掛けたイベントを見て、俺らはGGアリンにどんどんハマっていったんですが。その仕掛人から「GGアリンのカバーを出しませんか?」って声を掛けてもらったのが、今回のリリースのキッカケだったんです。
──わ、そんな運命的な出会いだったんですね!
ミリー:広中さんがGGアリンがすごい好きで詳しいっていうのは、GG界隈では有名な話で。ユダと話も合いそうだなと思ってたところで、カバーの話をいただいたんだよな?
ユダ:そう。そこで僕らだけでチンタラやってたら、トリビュートだけ出して喜んでたかもしれないですけど。広中さんが「せっかくならオリジナルの新作アルバムも同時に出そう」と言ってくださって、本当にありがたかったですね。Diwphalanxは僕がよりGGにハマっていくキッカケになったSTUPID BABIES GO MADがいたり。ほかにもBALZACとか、好きなバンドがたくさんいるレーベルやったんで。「いつかDiwphalanxから出せたらええな」と思ってたら、このタイミングで声を掛けていただいて。
JUDA|Vocal
──このタイミングでの出会いやリリースは運命的にさえ感じますね。では順番に話を聞くと、GGアリンのトリビュートについて。実際、カバーしてみての感想はいかがでした?
ユダ:やっぱり好きこそものの上手なれじゃないけど、結構、サクサク行きましたね。音もすごくいいのが録れて、ミリーも「あれ? こいつ、こんなん弾けたっけ?」みたいな、アメリカン・ロックみたいなみたいリフが引き出されたりして。
ミリー:GGアリンってもともと脱いだりするパフォーマンスをやってたわけじゃなくて、正統派のポップ・ロックをやってた人で。アタイももともと、ガールズバンドをやってたんだけど、「世の中自分より才能ある人だらけだし、音楽辞めようかな?」と思ってた時に流血ブリザードに出会って。その時、「いままでの自分を捨てて、ミリー・バイソンとしてやっていこう」って覚悟を決めたのは、GGアリンに触発されたところがあって。
──そこで覚悟を決めた結果、おしりに“売女”の刻印が押されて。“日本発のバイタ・ショック”(CDジャケットに書かれたキャッチコピー)が起こるわけですね。
ミリー:まぁ、そういうことだな。
ユダ:バイタ・ショックってなんやねん! って話やけどな(笑)。
ミリー:そんなこともあって、アタイもスピリット的にも、GGアリンにシンパシーを感じてたんだけど。今回、音で考えたのは、代表曲の「Bite It You Scum」だけは原曲に寄せて、それ以外は流血にしかできないカバーにしようということ。それが形にできたことがすごく良かったし、演ってて楽しかったな。
ユダ:『FUCK OFF, WE MURDER!!!』には他のジャンルのパロディやオマージュも詰めて、かなり楽しみながら作れましたね。あと、GGってパフォーマンスとか逸話に目がいきがちなんですけど、楽曲がええんやってことを再確認しました。キャッチーやし、パンクロックとしてすごく曲が良いし。あと改めて歌詞を見て、俺は泣きましたね。どれもヒドい歌詞なんですけど、寂しい男の生涯を感じられたり。GGアリンという生き方をひとつ決めて、破滅に向かって進んでいったんですけど、ヒドい歌詞の中にすごいピュアなエナジーや衝動を感じて、すごく美しく感じたんです。あとはとにかく徹底的に露悪な見せ方にこだわり通して、どこまでもヒールに徹したGGの美しさ。映画『ジ・アリンズ 愛すべき最高の家族』を見て知ったんですが、彼もGGアリンであり続けることがしんどくて、やめたい時期もあったらしいんです。けど結局、最後までGGアリンという破滅的なパンクロッカーとして死んでいったところが、やっぱりすごいなと思うし。指さして笑う人もおるでしょうけど、「じゃあ、お前らはできんのか?」って話やし、やっぱ感動しますよね。
Milly Bison|Guitar
──うん、そういう意味では『UNCHAIN OVERKILL』収録曲のユダ様の歌詞を見て、いつも以上に心の奥底から言葉を救い上げている気がしたし。その話に近い感覚がありました。
ミリー:ユダとGGアリンって被るよな? GGアリンはGGアリンとしての人生を全うしたけど、それはユダにも感じるところで。
ユダ:GGアリンが「もうやめたい」みたいな手紙を母親に書いていたことがあるんですけど、実は俺も「バンドも何もかもやめたい」と思った時期があったんです。でもこの人生、流血ブリザードとして長いこと時間を使いすぎて、普通の人に戻ろうとしても無理やと思って。それで頭バーンとおかしくなって、メンタルがヤバいところまでいってた時期があったんです。『UNCHAIN OVERKILL』にも、そういう時期のダークな歌詞が結構あるんですけど……。
──いや、いまの話が今回のアルバムそのもので。母親への手紙は「OKAN OOKINI FOREVER」だし、もう普通の人には戻れないって思いは「RPG」だし、メンタルがヤバいところまでいった時の気持ちは「SICK PARADE」に書けてるし。そういったユダ様の物語や心の揺れ動きが今作にしっかり反映できてるし。英語の歌詞も増えたけど、逃げることなく日本語詞でしっかり書き残しているところに覚悟を感じたし、言葉が痛いほど伝わってきました。
ユダ:「SICK PARADE」は同じようなことで苦しんでる人に「自分のことを歌ってくれてると思った」と言ってもらえて。いいことを歌ってるわけじゃないですけど、すごいリアルなことを歌ってるんで、そう思ってくれたのかなと思ったり。その後、「しゃーない」を聴いて、「すごい救われた気持ちになった」って言ってくれたり。
──「しゃーない」でちゃんと歌ってますもんね、<自分くらいは 自分をゆるそ>って。ユダ様もそこに救いがあったんだろうし、聴く人もそこに救いを感じたんですね。
ユダ:自分のメンタルがヤバくなった時、メンバーがすごいサポートしてくれて。その時はひたすら自分を責め続けてたし、「自分はこれ以上、生きてちゃいけないんだ」って考えにしかならなくて、毎日すごい苦しかったんです。もう何年も前から、ちょこちょことそういう状態があったんですけど、そのMAXが去年の夏にきて、もう電車も乗れないし、ライブも無理になってしまって。メンバーには、ボーカル抜きでスタジオに入ってもらったりして。その時、ミリーが俺にかけてくれたのが「自分くらい、自分を許したら」って言葉やったんです。
ミリー:いまとなっては笑い話だけど、あの時、まだ加入したばっかりのスーザンに「ベースボーカルでやってくれ」って言ってたもんな(笑)。流血ブリザード17年やってたけど、そんな精神的に辛そうなユダを見たことなくて。
ユダ:でもまぁ、そんな状態やのにバンドのスケジュールは決まってて。よく覚えてるんですけど、俺がしばらく実家にいて、東京に戻る時の新幹線の中で書いた歌詞が「SICK PARADE」と「しゃーない」やったんです。そんな状態やのに歌詞書いてる自分に、「ワーカホリックやし、真面目やな、俺」と思いましたね。

















