トシ(石塚俊明)の爆発力は他のドラマーにはない
撮影:Shigeo Jones Kikuchi
──トシさんとの付き合いも長いですよね。
友川:私は一時期、頭脳警察の追っかけをやってたんです。頭脳警察のメンバーがみんなで大井町に住んでた頃に会いに行ったこともあるし、駒澤大学の学園祭に頭脳警察が出たときに私が前座をやったこともある。追っかけするようになったのはその前座をやってから。トシもパンタも同い年で、私は特にトシのファンだった。彼が一心不乱にコンガを叩く様が凄まじくてね。いやあ、あれには驚いた。「ふざけるんじゃねえよ」って歌のインパクトも凄かったね。
サミー前田:1975年の大晦日に渋谷屋根裏で行なわれた頭脳警察の解散コンサートで、一番うるさかったお客さんが友川さんだったというエピソードがありますよね。
友川:そうそう。私がずっと絶叫してたのよ。それを見たNHKの波多野紘一郎さんというディレクターが私を『若いこだま』というラジオ番組のパーソナリティに起用したんです。ちなみに、渋谷ラママ代表のはたの樹三さんは波多野紘一郎さんの弟です。
──『若いこだま』はパンタさんや矢野顕子さん、甲斐よしひろさんらもDJを務めた、『サウンドストリート』の前身というべき番組でしたね。
友川:私はスタジオでウイスキーを飲みながらやってた(笑)。だから途中から私だけ生放送をやめて収録にしたのよ。後から余計な部分をカットできるから。
──話が逸れましたが、トシさんとはウマが合うといったところで長年の共演が続いているのでしょうか。
友川:それもあるけど、やっぱり音ですよ。トシの音は最近また特に凄い。爆発物処理班が必要なくらい爆発しすぎなのよ(笑)。私の歌なんてもうどうでもいいし、あの音はホントに凄いと思う。彼の場合、ただのリズムじゃないんです。メトロノームじゃない。トシの爆発するエネルギーは他のドラマーにはない。私は昔、ビリー・コブハムっていうマイルス・デイヴィスとかと一緒にやってたドラマーが好きでLPも1枚持ってたけど、トシはそのビリー・コブハムを彷彿とさせる並外れた音を出すね。
石塚俊明|撮影:Shigeo Jones Kikuchi
──パスカルズの永畑雅人さんも、友川さんを支える鉄壁のバンド編成に欠かせない一員ですね。
友川:永畑さんも即興が多いんだけど、トシとうまく呼応するんだよね。それは彼もトシを尊敬してるからだと思う。トシも永畑さんも、同じ曲をやっても毎回違った感じになるのが凄い。いざ曲が始まれば後は野となれ山となれ。
永畑雅人|撮影:Shigeo Jones Kikuchi
──そうした一期一会の境地こそがライブの醍醐味ですよね。
友川:もちろんです。どうなるかわからない部分の出た音楽のほうがずっといい。やっているほうも充足感がまるで違う。
──大友さんとは初手合いですし、事前にリハーサルに入る予定などはあるんですか。
友川:ライブ当日、いつもより少し長めに音を合わせる程度です。私は普段からリハーサルはほとんどやらないし、もっと言えばリハなんて要らない。でも音響さんのためにやってるの。リハはできれば5分くらいで終わりたい。トシもリハが嫌いだし、私もリハが嫌い。「巨人(トシの才気にオンブして)」という曲があるんだけど、それは特にリハをやってほしくない。そのことは音響さんに伝えるし、大友さんにも伝えようと思ってる。ああいうトシの即興が活きる曲はリハをやっちゃダメ。だけどロフトの音響さんはいいですよ。凄くいい。
──昔から練習は嫌いなんですか。
友川:練習は嫌い。本番が好き。ギターの練習もしない。歌をつくるときだけ弾くくらい。デビューした頃は少しは練習したけどね。Fを押さえられなく苦労しました。
ストレスを溜めないために大切なのは一人でいること
撮影:Shigeo Jones Kikuchi
──50年以上活動を続けていれば、ライブでお客さんから定番曲や代表曲を絶えず求められるものじゃないですか。
友川:いやいや、ないよ。あなた、ないと思ってるでしょう?(笑)
──「生きてるって言ってみろ」「トドを殺すな」「夜へ急ぐ人」「死にぞこないの唄」……他にも無数にあると思いますけど、そうした曲を求められるのはやはり飽きるものですか。
友川:相当飽きてるのよ。だから新しい曲をつくってる。曲ができたときは自己満足の極みで「素晴らしい曲ができた!」と思うけど、すぐに飽きる。でもまた違う曲をつくればいいわけでね。
──では、今は最新作である『イカを買いに行く』の収録曲がまだ新鮮ですか。
友川:そうでもないね。昔の曲も新鮮味を出すために引っ張り出してやってるから。『イカを買いに行く』に入ってる曲も最近は変わってきたけどね。
──曲がライブで育ってきたというか。
友川:いいこと言いますね。成長してるのか衰退してるのかわからないけど、曲は生きものだからどうとでもなる。ちなみに最近作ったのは「ホニュー類」という歌。「ヒトを殺したクマだから ヒトがクマを殺したんだ」という歌詞でね。
撮影:Shigeo Jones Kikuchi
──また話が逸れてしまうのですが、昨年のインタビューでも伺ってとても興味深かったので日本の政局について聞かせてください。連立政権を組んでいた自民党と公明党が連立を解消し、自民党と日本維新の会が連立政権を作ることで合意しました(このインタビューの時点では高市早苗の首相選出前)。この一連の流れを友川さんはどう見ていますか。
友川:あれは維新の下心ですよ。国民民主党にもスケベ心がいっぱいあるけど、どれも高市に利用されるだけ。これまで自民党と連立を組んで生き残った政党は公明党だけだし、自民というのはどこまでもしたたかで狡猾なんです。維新が議員定数の削減を政策として打ち出してるけど、あれは最初、野田(佳彦)が首相だったときに言い出した。安倍(晋三)との党首討論で、消費増税の代わりに定数削減をやり遂げたい、それを飲むなら衆議院を解散してもいいとまで言った。安倍もぜひやりましょうと言ったけど、一切やらなかった。結局、安倍の勝ちなのよ。一枚も二枚も狡さが違う。日本は実質的に自民党の独裁国家なんだから。でも今回の連立解消という公明党の判断は実にわかりやすかったね。代表が斉藤(鉄夫)って人だからスパン!と行けたんじゃないかな。真面目でまともな人なんだと思う、あの人は。
──今回の新宿ロフト公演は『生存確認コンサート』というユニークなタイトルですが、友川さんなりの長生きの秘訣を教えていただけますか。
友川:嫌なことをしないってことでしょう。ストレスを溜めないこと。
──どこまでもしたたかで狡猾な自民党が日本を牛耳る限り、ストレスが溜まる一方だと思うのですが。
友川:だから私は新しい歌(「ホニュー類」)の中で「頭にきてるから選挙には行くよ」って歌詞を書いたの。政治については、ホント頭にきてる。自民党の派閥の裏金問題について誰もちゃんとした説明をしないんだから。
──右傾化が加速する時代にストレスを回避する術はあるでしょうか。たとえば定期的にネット断ちしてみるとか。
友川:私はそもそもネットを見ないし、ケータイもパソコンも持ってないから。大切なのは一人でいることだろうね。誰でもいろんな人たちに囲まれて生活を送る中で、嫌なことをやらないのは難しい。
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