良い時代が来ると思わないと何も叶わない。俺はいま、前しか見てないよ
──『淡々粛々』では俊美さんを筆頭に、他にもいろんな方に参加いただいてますよね。
藤井:俺が大学時代にお世話になったり憧れてた、サニーデイ・サービスの田中(貴/Ba)さんとか、ASA-CHANG(Dr&Perc)とかクージー(クジヒロコ/Key)さんとか。“あの人と一緒にやったら楽しいだろうな”っていう人と一緒にやれて、俺の大学時代の夢のアルバムにもなってるんだよね。田中さんと一緒にできるなんて思ってもなかったし、(レコーディングは)緊張するかなと思ったら意外に緊張しないでやれて。夢が叶ってるアルバム、でもあるかな。
──ASA-CHANGさんが参加している「RAINY BABY LOVE」も素敵なテイストで、藤井さんと同世代からすると渋谷系を思い出させてくれてきゅんとしたり。
藤井:その曲は7インチのレコードを出すけど、カップリングはCorneliusのカバー(「PERFECT RAINBOW」)で。これをカバーしたいって思ったとき、本当に(原曲で)叩いてる人にやってもらえたらどうなるんだろうと思って。ASA-CHANGもいわき市出身で同郷で面識はあるからお願いしてみようかなと思って、いろいろといい感じで繋がっていった感じで。
──同じく福島出身の富澤タク(グループ魂・Number the./Gt)さんも参加されておられるのもご紹介しておきましょう。ではライブのお話へ、ライブはどうされる感じでしょうか?
藤井:今回のレコーディングに参加してくれたメンバーでの3ピースにもう1人ギターを入れるのか、とか。アルバムの曲をどこまでやるのか、アルバムの順番通りにやるのか、とか絶賛悩み中です。アルバムの流れが良すぎるから、そのまんまやったら絶対に気持ち良いだろうなって思ったりするし。新しいアルバムでわーっと盛り上がってもらってから、懐かしい曲で盛り上がるみたいな2部構成にするかもしれないし。それはそれで楽しいはずだし、(新旧の曲を)散りばめたらどうなるんだろうって考えながら、今は全然答えが出ないなぁ。新宿LOFTでのライブはゲストに俊美さんも来てくれるしね。どういう曲順になるんだろうな……わからんなぁ。
──これはどうなるのかというのをライブで見るしかないですね。EP収録曲通りだと新宿LOFTでのライブはゲストの俊美さんボーカルでラストになりますしね(一同笑)。
藤井:BiSHみたいにさ、もう1回同じ曲をやるのもいいよね。結構俺、そういうの好き。1回経験した直後にもう1回おんなじ曲をやると、皆も経験してるからより盛り上がる(笑)。とは言えさすがにそれはできないとは思うけど、最善の楽しいライブにしたいし、します。
──そしてライブは「郡山編」もあります。
藤井:地元でね。そう、それこそEPのジャケットで郡山駅前の写真を使ってて。俺は(この写真撮影の頃は)いわき市に住んでたけど今は郡山に住んでるから、郡山の写真を使いたいなって思ってて。この写真は昭和59年(1984年)、俺が小学3年生ぐらいのときなんだけど、未来を感じる写真で。これからどんどん良くなっていくときのこの写真、何だかいろいろと伝わるなぁ、いい写真だなと思って。日本がこれから良くなっていく時代で、空気感ってこんなに写真に出るんだなと思って。バブルの前夜ぐらいだと思うんだけど、(郡山の)観光課の人に相談して今回、使わせてもらって。
──郡山にもマルイがあったんだ? とか思いますね。
藤井:そう、しかもマルイの中にヴァージンメガストアもあった。今は寂しくなっちゃったけど、“こうしたいな”って思えばさ。まだまだもっと、できるんじゃないかなって思ってさ。みんないろいろと諦めちゃってる感じがしてる気がして。俺は今回のEPで「この人と音を出したらすごくいいだろうな」って思い描いて。思い描かないと、叶わないからさ。だからこの時代のこの感じを忘れないで、って思う感じもありつつ。
──ちょっと世の中の閉塞感が続いている感じがありますよね。
藤井:そうなのよ。東日本大震災があってコロナもあって、ちょっとだけ暗い感じに皆、引きずられてるから。ギアを入れ替えると言うか、やっぱりさ、自分が生きている間に良い時代が来るって思わないと来ないわけじゃん。人間の100年なんか本当にあっという間なんだから。良い時代が来るって思わないと、何も叶わないよ。だから俺も本当に、楽しいことがしたいなぁと思ってさ。日々ワクワクしてる人が勝ちなんじゃない? 俺もいま前しか見てないですね、次はどういう楽しいライブにしようかなって。
──ジャケットの写真がおおよそ40年前として、その間にこれだけ風景が変わるんですものね。
藤井:そのぐらいの年に俺、ドラムを始めてるんだよね。でもドラムが叩けなくて、小学5年生ぐらいでギターに転身して。そこからずっとやってるし、そこからずっと夢見て生きてるわけで。“こうなったらいいなぁ”ってずっと、その連続で今まで来てる。それも大事かなぁ。
──重ねた年齢のせいにしてしまっている自分に、忘れていたものを思い出させてくれるような藤井さんの話ですね。
藤井:思い出しましょ、そして歳のせいにしちゃダメだよ。まだまだ長いからね。50(歳)過ぎたら、いや過ぎてこそ、貪欲になったほうがいいと思う。できることも増えてるはずだしさ。
──今春、山さん(山岡トモタケ/FLAMYNGS)との対談で「コロナ禍でずっと休んでたけど東京でライブに呼んでもらえて良いきっかけをもらえた」といった話をしてましたよね。
藤井:それこそ山さんは、止まってた俺を引っ張り上げてくれた感じでね。山さんは本当に前を向いて、楽しいことにしっかり向き合ってる人だなと思う。それが空回りすることもあるけどさ、山さんも俺の中ではヒント、かな。
──山さんと藤井さんのツーマンも新宿LOFTでしたし、人物と共に“新宿LOFT”という場所も存在しているのが面白いですよね。
藤井:そうだね。今回のLOFTでのライブはエレキギターを背負って、それが6年以上ぶりになるから身体が動くかどうか(笑)。(今まで)ライブはしてても座ってアコギを弾いてたから、エレキギターなのが心配。だから今回は何かハプニングもありそうだよね……だけど本当に来て欲しい、一生見られないようなハプニングが起こる可能性が高いから(一同笑)。EPをね、本当に聴いて欲しい、それでライブに来て欲しい。今は本当に、そんな感じかな。

















