下北沢SHELTER 34周年イベント『POOL SIDE - SHELTER 34th Anniversary -』が10月1日(水)下北沢SHELTERで開催される。出演は片想い、MUSIC FROM THE MARS、DJ : TA-1(KONCOS)。イベントに向けて、ex.ザ・なつやすみバンド、片想い、うつくしきひかり、Pome Shih Tzuのほか、多数のバンドでサポートを務めるマルチミュージシャンMC.sirafu、MUSIC FROM THE MARSのフロントマンであり、downyのメンバーらとfresh! などでも活動する藤井友信、そして2011年に解散し、今年11月より1年間限定で復活することが発表されたriddim saunterのドラマーであり、KONCOSのキーボーディスト、TA-1の3人で座談会を開催。シーンで長く活躍する40代ベテランミュージシャン3人が語る昔のライブハウス事情や、お互いの音楽性について、また、大人になってからの生活と音楽との付き合い方など、貴重な話をたくさん聞くことが出来た。[Interview:小野妙子・川本俊(SHELTER副店長)/ Photo:Tetsuya Yamakawa]
下北沢の角打ちこと「SHELTER」
──今回のイベントを開催することになった経緯から聞かせてください。
藤井:SHELTERには去年の秋から頻繁に出させてもらってるんだけど、いい思いしかしてなくて。なぜなら、平日なのにお客さんがいっぱいいるのよ。海外のお客さんが多くて、物販もめっちゃ買っていくんだよね。アニメ(『ぼっち・ざ・ろっく!』)の影響もあるんだろうけど、単純にライブハウス文化を楽しもうとしてる海外のお客さんがいて、最初から最後まで聴いてくの。SHELTERは昔からずっと出ててマーズの15周年も20周年もSHELTERツアーやったんだけど、なんかまた盛り返してるというか、楽しくて。平日で昔ながらのパーティーっていうか。土日だとちょっと責任感も伴うからさ(笑)。
MC.sirafu:土日に来る人はいろんな選択肢がありますからね。
藤井:レコ発とかいろいろなものを装飾しなきゃいけないじゃん。ディズニーランドと比較されなきゃいけないわけだから。でも、平日の仕事疲れたあとにちょっと寄って現実逃避したいとか思う人もいるだろうし。それで普通に観光客の人もいるっていう、その雰囲気がめちゃくちゃ良くて楽しいなと思って。それで川本さん(SHELTER副店長)に相談して、片想いとはこの間名古屋で隣でライブやってて、「一緒にやりたいね」って言ってたし、ちょうど空いてる日がSHELTERの34周年の初日だっていうから、それでいこうって。川本さんがまさかTA-1君をDJで誘ってくれると思ってなかったから、めっちゃいいじゃんと思って。しかも『POOL SIDE』(※2015年から開催されているSHELTER企画イベント)は毎回フライヤーを描いてくれるのがいいんだよね。昔来てたお客さんとか、懐かしんでくれる人とかも絶対楽しいなと思って決めました。
──SHELTERで共演されたことはあるんですか?
MC.sirafu:KONCOSとは前(2017年)やりました。マーズとは片想いではないんですけど、昔ザ・なつやすみバンドをやっていた時に上野の角打ちでやったよね。狂乱の(笑)。
藤井:なんかそういう場所でやりたいっていうか。だから下北沢のね、角打ちと呼ばれてるSHELTERで(一同笑)。KONCOSとは去年初めてLIVE HAUSで対バンしたよね。
──みなさんの出会いはいつ頃なんですか?
MC.sirafu:俺、2人ともマジで覚えてない。
藤井:sirafu君は一回、角打ち行ったじゃん。溝の口かどっかの。それで、ザ・なつやすみバンドと一緒にやるって決めたのが最初かな。
TA-1:僕、一方的にsirafuさんのことをずっとライブで見たりして知ってましたね。ザ・なつやすみバンドとか、『インディーファンクラブ』で見てました。
MC.sirafu:2013年~2015年ぐらいかな。
──お互いの最初の印象はどうでした?
MC.sirafu:俺はこの2人すごい大好きなんですけど、作る曲に関してのプログレ感がすごい好きなんですよ(笑)。もっとそのままの進行で行けば絶対お客さんはハッピーなのに、っていうことを絶対にやらない2人(笑)。変なブリッジを入れたり。そこは信頼してますね。でも、藤井くんはちょっと天然でやってる気がするけど。TA-1君はシンガロング入れるんだけど、ちょっと変(笑)。
TA-1:sirafuさんに言われると嬉しいですね。
MC.sirafu:片想いって子供のお客さんが多くて、ザ・なつやすみバンドもちょっとそういう意識でやってたんですけど。自分が見てきた昔のアニメの主題歌って耳障りが良くて歌えたりするんだけど、今思うと毒を注入されてたなっていうのが昭和のものってすごくあって。それをずっとやりたいんですよ。だからポップスがやりたくてやってるんですけど、そこを共感できる2人ですね。
藤井:俺もそうかも。2人の印象っていうよりは音楽に興味があったから、会って、「ああ、やっぱこういう人たちなんだ」と思って安心するっていう感じだったかな。だから、やっぱKONCOSは衝撃的だった。ベースいないし。なんか足らないものがあるのをちゃんと表現してるのがめっちゃいいなと思って。片想いも手練れたちではあるけど、足らないものを表現する感じがあるじゃない。それって天然でやってるか分かんないけどさ。例えば、ジャズの人がやったらそれはカッコイイんだろうなっていう演奏を足らない人たちがパンクスピリットでやる、みたいなのにテーマがあったりするから。
MC.sirafu:でも、ちょっと足りないことがカッコイイと思ってます。片想いは、半分プロで半分アマチュアなんですよ、みんな。ボーカルの(片岡)シンさんは銭湯の若旦那だし、オラリーも普通の主婦だし。自分がいちばん音楽で感動するのが、例えば市民楽団のオーケストラとか、アマチュアがプロを凌ぐ瞬間。うまくなりすぎるとできないことだったり、忘れちゃうこととか、アマチュアだから出せる衝動とか、そういうのがいちばん俺はカッコイイと思うんで、それをやりたいから片想いはプロにしたくない。最初からこれで食っていこうっていう意識がないバンドなんですよ。
『下北沢インディーファンクラブ』
藤井:そういう意味ではTA-1君、ピアノ弾いたことなかったのに弾いたんでしょ? それであれだけ弾けるっていうのもすごいんだけど。
TA-1:2011年にリディム辞めてから始めたんです。それまでのことってなんとなく勢いでしかなかったんで、「もうこれじゃねえよな」と思って辞めた時に、sirafuさんの音楽に『インディーファンクラブ』で出会ったのが結構デカくて。人生変えられたというか。
MC.sirafu:そうなんですか?(笑)
TA-1:日本のアンダーグラウンドでやってる人をもっと見ないとダメだって思いながら全会場回って見た時に、新たな流れがちゃんと生まれてることに衝撃を受けたんです。っていうのは、さっきsirafuさんが言ってたような、誰にでも入ってくるような音楽にどこかひねくれたことがあるみたいなやつが好きなんすけど、「こういうことやってる人いるんだ」と思って、すぐ仲良くなりたいと思いました(笑)。その時に、ミツメとかトリプルファイヤーとか、自分より下の世代がすごく面白くて、もう強烈な印象だったんですよね。「ここしかないな」と思って、2014年ぐらいにライブハウスに戻らないとダメだって思ったんですよ。sirafuさんのあの音楽に出会わなかったら今ないですね。
藤井友信(MUSIC FROM THE MARS)
MC.sirafu:『インディーファンクラブ』とか絶妙な感じは今はもうできないですよね。いろんなシーンがあって、ずっとやってた人たちが若い人たちを認めてはいるんだけど、交じり合わないみたいな。ちょっとピリピリ感みたいなのもあって。今はみんなハッピーですよね。それが羨ましくもあるんだけど。
TA-1:藤井さんは、僕、2001年頃にDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENのローディーをやってたんですけど、その時の空気感がなんとなくあって。PANICSMILEとかもその時にDATE COURSEとやってて、その時のあの周りの空気感がすごく似てるというか。
藤井:みんな優しいじゃん、DATE COURSEの人とかって。俺、それに惹かれちゃって。しかも出す音みんなえげつないみたいな。「これがやりたい」って思ったんだよね。俺、大学入ってから高円寺20000Vでライブを始めて、俺らもそこそこ尖ったことをやってるつもりではいたけど、その比じゃないっていうか。もっとナチュラルボーンみたいな人たちがいっぱいいた。山本(精一)さんとか、ボアダムス全盛期の時代だったから、すごくいい世界だなと思って。GOING STEADYと大学が一緒で仲良かったんだけど、GOING STEADYが20000Vの上のGEARに出てて、GEARって上下関係あるんだ、パンク怖えなって思ってた。20000Vはもう50歳の人とかもみんな自由だし、無礼者に対しても寛容、だけど音怖えみたいなのがあった。SHELTERも20000Vの売れてる人たちがレコ発やる場所みたいな感じで憧れの場所だったね。SHELTERはオーディションがあったから。
MC.sirafu:いや、どこもありましたよ。屋根裏もあったし。