ラットボーンズに学校で教えない“ハレンチ”の美学を教えてあげて欲しい(アツシ)
──当時、ニューロティカのいたパンクシーンと、睦さんのいたロカビリーやサイコビリーのシーンって、交わることはなかったんですか?
睦:全くなかったですね。僕らが若い頃なんてそんなこと考えてなかったし、サイコビリーなんて派生の派生で、先輩もいないから俺たちだけだみたいな感じでやってきたから。日本のバンドとかは、関わることがほとんどなかったし。いま考えるとそん時楽しければいいみたいなパーティーみたいなもので、それがシーンにはなってきたんですけど。バンド単体で道を切り開いていくみたいな、そんな感じでもなくて。たまたまウチらは運が良かったのか、ニューロティカと宮古島でライブやれる機会もあったから、いまもこうやって一緒にやれるけど。当時はそんな感じじゃなかったですね。
アツシ:俺たちももちろん存在は知ってたけど、川崎クラブチッタで『TOKYO BIG RUMBLE』に呼んでもらったのが初めてで。「なんでここのお客さんは、痛いのに殴り合ってるんだろう?」くらいの感じだった(笑)。
睦:ちょうどあの頃くらいで、ウチらの中でも分かれていくって言うか。僕はどちらかというか、サイコビリーにいたけど、いろんなバンドが好きだったから。外に出よう出ようとしていたし、「ニューロティカみたいなバンドもサイコビリーのお客さんに見せてあげたいな」と思ったし。あれから俺も「もっともっと外出ちゃおうかな?」と思うキッカケになったんで、ああやって交わったことが面白かったなって。
──ニューロティカも若いバンドとかと関わるようになって、一気に世界が広がった感じがありましたもんね?
アツシ:そうだね、自分たちだけじゃ何もできなかったからね。
睦:いつぐらいから若いバンドとやるようになったんですか?
アツシ:前のメンバーが辞めて、小林雅之が「新しいバンドやるから観に来て」って言って、見に行ったのがPOTSHOTで。「これだ!」と思って仲良くなって、「ニューロティカが好きだ」って言ってるバンドの打ち上げに全部行ってバカやって、その日の打ち上げで3カ月後のライブを決めちゃうみたいな感じで。あれはありがたかった。
睦:覚えてますよ。POTSHOTがすごい人気あった時、ニューロティカとライブやるって聞いて、「あ~、ニューロティカも食うのに大変なのかな」って思って。最初は若い子に取り入ってみたいに見えたけど、ある時から「こうやって物語が生まれて、時代が来るんだ」と思うようになって、最終的には武道館まで行っちゃったからすごいなって。で、いまは孫連れて来るような人もいて、親子三代でライブに来たりするんでしょ?
アツシ:そうだね、そういうお客さんもいて。
睦:俺、すごいそれ目指してるんですよ。「親子三代で楽しんでもらえる、遊園地行くか、ライブ行くか? くらいの選択ができるようなエンターテインメントをやりたいな」と思ってたら、こんなに身近にいたからびっくりして。やっぱね、楽しいんだと思いますよ、お客さんが。自分のことなんかどうでもよくて、来てくれたお客さんが笑顔で帰ってくれるように楽しませるってカッコいいなと思うし、俺たちも負けたくないなと思って。今度の対バンで、どんな演奏するか? とか、そんなこと考えてませんもん。「どこで池ポンのメイクが変わるか? なんなら、最初からあっちゃんで行っちゃうか?」とか考えたり。あれ、あっちゃんの影響で白塗りにしてるからね。
アツシ:そう、一緒に対バンした時に初めて白塗りしたの。
睦:この前、白塗りに浪人風のかつらをかぶったんですよ。そしたら、すごい面白くて、「こうやって進化していくんだ!」と思ったら、「どうすっかなぁ…?」って余計悩んだり。もちろんバンドだから、音楽でってところはあるんだけど。プラス、ウチらの笑いでニューロティカのファンをちゃんと楽しませたいし。ウチらの客はニューロティカが好きだって人も多いから、どう楽しんでジャッジしてくれるか楽しみだし。そんなことばかり考えてます。
アツシ:よく、「新宿ロフトは学校じゃ教えてくれないことを教えてくれる」って、言ってるんだけど。ラットボーンズには親子三代に“ハレンチ”ってものを教えてあげて欲しいね。そんなの学校で教えてくれないからね(笑)。ハレンチはラットボーンズのすばらしい美学だと思いますもん、ライブは美学ですから。
睦:おっしゃる通りです。
アツシ:ラットボーンズに胸貸していただきます!(笑) この日、なにしようか? っていうのは、ウチもメンバーと話してるんだけど。ニューロティカはもともとチープだから、チープな美学をお見せしましょう。
睦:あはは。でも、そのチープな美学を積み重ねた上に、いまがあるのがいいなぁと思って。スタジオで会話をちょろっと聞いてると、「これはこういうふうにしようか」ってすぐに話がまとまったりして。「すぐまとまるんだ」と思いながら、そこに至るにはいろいろあったんだろうなと思うし、昨日今日じゃなかなかできないことだと思うんで。ちょっとしたミスがあった時、そこにみんなが気付いてたりして。「やっぱ、そこは気付くんだ」と思いながら、それも息が合ってるからこそだよなと思ったり。そういうのがたまらんですね。
──ラットボーンズはどうなんですか? やはり睦さんが司令塔になってまとめていってるのか、みんなからのアイデアも汲んでるのか?
睦:だいたい自分がやって、ステージでお客さんが食いついてきたら、「ここでやるか」みたいな感じで。一度、女を顔面騎乗させて……(中略)そしたら誰も笑わなくて。
──当たり前じゃないですか! なんつう不謹慎なギャグですか(笑)。
睦:自分の中では「すげぇな、俺!」と思ったんですけど、先行きすぎた(笑)。
アツシ:あはは。俺もMCとかはある程度考えてるけど、全然思うようにいかない。
睦:勘違いって面白くて、勘違いでもやり続けると面白くなってきたりして。なんだっけ、あっちゃんの言い間違い? サイモン&ガーファンクルを言い間違えて……。
アツシ:サイモンガールファンガール?(笑) 「あの二人組いいよね、サイモンガールファンガール」って打ち上げで言ったらシーンとなって、アルバムタイトルにもされちゃった。
睦:その話を聞いた時、すげぇな! と思って。なまじロックを知ってたら、「ロックはこうじゃないきゃいけない」ってなるんだけど、知らないままパワー全開で走り続けてきたのって、ジャンルとか関係ない本人の人間力だからね。うろ覚え的な勘違いで、常に視界がぼやけたまま運転して、ここまで来れてるわけだから。本当にすごい。
アツシ:あはは、これは褒められてるのかなぁ?
睦:でも、そういうのに勇気を貰えるっていうか。カッコいいロックスターみたいなのは、矢沢永吉で十分だし。ロックスターの名言みたいなのもSNSで流れてくるから、もういいじゃんって思うし。実像として、そんなヤツ誰もいねぇんだからって。だったら、街のスターってどんなもんか? って言ったら、昔はウチの隣の左官屋のオザワの親父っていう、前歯が全部ない親父がいて。夏になると白のピカピカのブリーフに、革靴でタバコを買いに行って。挨拶すると「オウッ!」って返してくれて、あんな人見たことないからカッコいいんだけど。あっちゃんも八王子の親善大使まで登り詰めたんでしょう?
──このまま市議会議員まで登り詰めるかと思われたんですけど、八王子J:COMホールの地元凱旋ライブの入りがいまいちだったんで、市議会選で勝てないんじゃないか? って。
アツシ:そう。市役所の人が「3,000票取れれば、余裕で当選しますよ」って言われてたんだけど、J:COMで2,000枚が売れなくて。2階3階が荷物置き場になっちゃったから、これはヤバいぞ!? って(笑)。
──あはは。では、最後にビッグ・ウェンズデーに向けての意気込みというところで。せっかくなんで、2組のコラボも観れたらいいなと思いますが?
アツシ:俺はコラボよりもプロデュースされたい!
睦:あの素晴らしいヘタレ具合というか、遊び疲れた卑猥で淫らな体を活かしたいですね。