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INTERVIEW

トップインタビューレイラ - ポップもオルタナもごちゃ混ぜにしたい。憂鬱も抱えたまま進むしかない。10周年を前にそれぞれが自分と向き合った転機作『Summer days』

ポップもオルタナもごちゃ混ぜにしたい。憂鬱も抱えたまま進むしかない。10周年を前にそれぞれが自分と向き合った転機作『Summer days』

2025.08.08

 今年4月に下北沢SHELTERのレーベル「SHELTER UNITED」への所属を発表し、5月にはO-Crestで9周年記念ワンマン(SOLD OUT)を開催した横浜のオルタナティブロックバンド、レイラが8月6日(水)にNEW EP『Summer days』をリリースした。今年に入ってから自分自身と向き合い、思い悩む言葉をSNSに綴っていた有明(Vo/Gt)の憂鬱を吹き飛ばすかのようにワンマン当日に先行リリースした爽快なサマーソング「夏風邪」、シンセの音色がカラフルでチルな雰囲気もあるポップソング「ダンスホール」、ざらついた重いギターサウンドのオルタナティブロック「ハイウェイ」、切ない過去の恋愛を歌った「サマーエンズ」と、夏をグラデーション的に描いた4曲。ポップとオルタナティブのバランスなどサウンドに対しての向き合い方が変わって壁にぶち当たり、このEPで一皮剥けたとみうらたいき(Gt)が言うように、2人がそれぞれ自分としっかり向き合ったことで、周囲がどうであろうと自分で答えを出すこと、自分を信じることに確信を持ち、ジャンルや概念に捕らわれない自由なサウンドを構築。来年10周年を迎えるレイラにとっての転機作となった。何も解決はしていないけど、解決するために走り続けるしかない。ツアー目前にそう淡々と話す2人の姿に、揺るぎない覚悟を感じた。(Interview:小野妙子)

SHELTER UNITEDへの所属

──4月にSHELTER UNITEDに所属されて、5月にO-Crestで9周年記念ワンマン、そして今回のEPリリースにツアーと勢いづいている印象ですが、ここまでいかがですか?

有明:忙しかったです(笑)。

みうら:色々次のための準備とか、もちろん曲も作ったり、3月ぐらいからずっとワンマンに向けてEPに向けてツアーに向けて、っていう準備をバーってしてたところだったんで大変でした(笑)。

──大塚さん(LOFT PROJECT / 音楽部門統括)と義村さん(SHELTER店長)とはもう関係が長くて密だと思いますが、所属前と所属後で何か変化はありましたか?

有明:大塚さんは飲み友みたいな感じでずっと仲良くて定期的に会ってたんですけど、ちゃんと事務所の人として踏み込んでくれた。でも、まだ友達な感じはするけど。

みうら:大塚さんが仕事をしてる姿を見る機会がなかったんで、「あ、大人だ」って思いました(笑)。

有明:仕事とかするんだみたいな(笑)。義村さんはライブにいっぱい来てくれるようになりました。やっぱりどこの事務所とも違うのは、現場に来てくれる回数が多いことですね。

──曲や活動についてのアドバイスをされることはあるんですか?

みうら:「こういう面白いことやろうよ」とか、それぐらい。今までと大きくは変わんないですね。ずっと言ってくれてるんですけど、「ライブがいいからライブを軸にしていこう」って。

──基本的に好きなことをやっていいっていうスタンスなんですね。

みうら:そうですね。

今回のEPで一皮剥けた

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──今回のEP『Summer days』は夏がテーマになっていますが、最初からテーマを決めた上で制作されたんですか?

有明:作り始めた時は夏っぽいEPにしようっていうことは全然決めてなくて。『Summer days』ってタイトルも一番最後に決めたんです。ただ、「夏風邪」を出すことだけは何よりも先に決まってて、その後に作っていく過程で「なんか夏っぽいね」みたいになったんだよね。

みうら:「夏風邪」は去年の夏にできたんですけど、その後10月ぐらいに「サマーエンズ」ができて、EPの道筋みたいなのが見えたんですよね。この2曲が最初と最後になるなって感じがしたんで。だから夏っていうテーマを決めて制作したわけではなくて、自然と夏になったっていう感じです。

──今回初めて制作されたZINE(※ライブ会場限定販売)に「今回乗り越えなきゃいけない壁がたくさんあった」とみうらさんが書かれていましたが、具体的にどういうことだったんですか?

みうら:「ヒットソング」ぐらいから曲に対する向き合い方がちょっと変わっていって、今回のEPで一皮剥けたなって思ってるんですよね。そういうのを想像しながら作ってはいるんですけど、すぐにはうまくいかないんで何回も録り直すんですよ。作って、もう一回作り直して、本当に何回も全曲作ってて。そういうところで壁を感じてます。目標値が見えてるんですけど、現状の自分じゃできない。それがパッと乗り越えられた4曲が出たって感じです。

──やりたいことに対して技術が追いついていないということですか?

みうら:やりたいことっていうか、やりたいバランスでできてるかどうかですね。ポップさとオルタナティブさのバランスとか。あとは音楽的にもバンドサウンドにこだわってはいるんですけど、それに囚われてるわけじゃないっていう感覚がすごいあって。そういうのを表現できたかなと思って作ってました。

──有明さんは今回制作する上で苦労したことなどありますか?

有明:今回のEPはそんなに苦労はしてないんですけど、どんどん自分に近づいていってる感じはしますかね。ずっと生活だったり、目の前にあることをテーマにしてたんですけど、それがより自分の人生に近い言葉や近い情景を残せたのかなと思ってます。

解決したというよりは「進まなければ」

──1曲目の「夏風邪」はまさに夏を感じるパワフルで勢いのある曲ですよね。SHELTER UNITED所属になって一度リセット、リスタートするような軽快な明るさを感じる一方で、いろんなモヤモヤも全部抱えたままとにかく走り続けるしかないという覚悟も感じます。今年に入って有明さんがSNSに憂鬱な気持ちを書き綴っていたり、3月にSHELTERで街人と2マンライブをされた時にMCでかなり辛そうな心情を語っていましたが、ワンマンまでの2カ月間でどう切り替えたんですか?

有明:シンプルにチケットが売り切れたとか、SHELTER UNITEDに所属したことに対する反応があったりとか、そういうことが私的にはすごい大きくてありがたいことだし、どんどん覚悟が決まってくというか。ちゃんとしなきゃなとか、期待されてる分ちゃんと返さなきゃって思った時に、自分に対する内向きな感情が外に出続けているのは、前に進むことにおいて一番必要なことじゃないなと思って。だからもう抱えたまま進まなければいけない。今が一番新しいレイラとして注目してくれてる人も多いだろうし、期待してくれてる人も多いからこそ、ここで今迷ったり潰れてる暇はないなって。だから実際、解決したというよりは「進まなければ」という気持ちが大きくなった感じですね。

──休止するという選択肢はなかったんですか?

有明:なかったですね。生きがいがバンドしかないから、もうバンドがなくなったら死のうと思ってるんですよ、本当に(笑)。それ、今の方がより思うんですけど。そこだけは何があっても止めたくないなって思ってます。

──みうらさんはその時期の有明さんを見ていてどうでした?

みうら:僕はそんなに心配とかはしてなかったです。

──そうなんですね(笑)。

有明:ご飯とか食べさせてくれたよね。「食べない」って言ったら「ご飯食べた方がいいよ」って言ってた(笑)。

みうら:休止するんじゃないかとかそういうのも頭になかったし。そういう感じじゃないんです。それを収めるために続けないといけないっていう。

──やり続けることでしか解決できない。

みうら:そうですね。うん。

──そういうものが解消はされなくても全部吹き飛ばすパワーのある曲ですよね。

有明:確かに励まされました、自分で(笑)。ワンマンや『ムロフェス』でもやったんですけど、ライブで見てる人の表情に励まされて。レイラにとってより良い景色を見せてくれそうな曲だなって思います。去年の夏に作った曲なんですけど、2サビの一番最後の確信に触れる部分<どれだけ日々を抱きしめても一瞬で過ぎる なら風邪はひきたくない>は、所属する直前の2月とかに作ってます。結構全ての曲において歌詞の中に一点の光は置いておこうっていうのは意識してるんですけど、「夏風邪」だけは入れてないんです。

みうら:サウンド感が光になってるんですよね。

曲の方向性について一回揉めて。半分ただの喧嘩みたいな(笑)

──2曲目の「ダンスホール」はシンセが入っているカラフルなポップソングで、途中、ジャズやシティポップなどのチルな雰囲気もあり、場面が切り替わっていくように展開が多くて面白いですね。

みうら:この曲がEPの中で一番最近できた曲です。最初別の曲を作っていたんですけど、どうしても完成しきれなくて、曲の方向性について一回有明と揉めました。半分もうただの喧嘩みたいな(笑)。「じゃあもういいよ! この曲はボツにしてもう1曲書くよ!」ってなったんですけど、でも、そのボツにした曲が結構良かったから「いや、それボツにするの違くない?」、「子供やん!」みたいな(笑)。結局それはボツにして、10日くらいで新しく作ったのが「ダンスホール」です。音楽的に面白いことをやりたいなって思ってたんで展開が多くて、一曲通してサビしか繰り返すメロディーがないんですよ。そういうのをずっと作りたいなって思ってたし、割と最近のトレンド感があるなって思って意識して作りました。

──ZINEにも書かれていましたが、飲みの場でのとりとめのなさがサウンドによく表れていますよね。

みうら:結構気に入ってるよね。

有明:割とずっと気に入ってるよ(笑)。本当に楽しむ心さえあればどこでも最高の遊び場になると思ってるので、人生のルールとして楽しく生きるっていうのはファンの人にも持っててほしいなって思うよね。私もそういうポリシーで生きてるから。

みうら:サポートメンバー含めてレコーディング前に一回リハ入ったんですけど、その時も「ダンスホール」の時ノリが良かった感じがして、嬉しかったです。

有明:たしかにみんな嬉しそうだった(笑)。元気があった。

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EP『Summer days』

2025年8月6日(水)デジタルリリース
レーベル:SHELTER UNITED

iTunesStoreで購入

【収録曲】
1. 夏風邪
2. ダンスホール
3. ハイウェイ
4. サマーエンズ

先行配信された「夏風邪」と、新録となる「サマーエンズ」「ダンスホール」「ハイウェイ」の全4曲を収録。夏の日々に寄り添った作品となっている。
今作のジャケットおよび新たに刷新されたアーティスト写真は、音楽シーンのみならずファッション、テレビドラマなど様々な場面で活躍するフォトグラファー、Kana Tarumiが手掛けた。

LIVE INFOライブ情報

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レイラ EP Release Tour 2025 “あの街に行こうねって約束覚えてる?”
8月11日(月・祝)下北沢Flowers Loft
8月16日(土)伊那GRAMHOUSE
8月30日(土)名古屋RAD SEVEN
9月7日(日)広島ALMIGHTY
9月8日(月)福岡LIVE HOUSE Queblick
9月22日(月)大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
9月27日(土)下北沢SHELTER【FINAL / ONEMAN】
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