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トップレビューレイラ「夏風邪」- 振り切れなくてもとにかく走り続けなきゃという焦燥感を昇華したポップサウンド

レイラ「夏風邪」- 振り切れなくてもとにかく走り続けなきゃという焦燥感を昇華したポップサウンド

2025.05.23    | CD

発売日:2025年5月23日(金)
品番:SHLU-11
レーベル:SHELTER UNITED

収録曲:
1.夏風邪

 横浜のオルタナティブロックバンド・レイラが、下北沢SHELTERが立ち上げたレーベルSHELTER UNITEDに所属後初のシングルを結成9周年記念ワンマンライブ当日にリリース。イントロから夏を感じさせる爽快さとライブ感のあるパワフルなサウンドに乗せて歌うのは、「精一杯走ってまた追い越された」という焦燥感のある歌詞。ベイスターズファンであるVo&Gt.有明が観に行くはずだった試合を観に行けなくなった実体験を元に、理想の場所へ中々たどり着けないもどかしい想いを重ねる。
 
 ワンマンのタイトル『精一杯走って』ともリンクする「精一杯」という言葉には、全力を尽くすという意味と、限界ギリギリというプラスにもマイナスにも取れる側面があるが、まさにどちらの意味合いも込められているのだろう。有明のパワフルな歌声や起爆力のあるステージで観客を惹きつけていく勢いを見せる一方で、日々生きづらさを抱える有明の心象風景を映像化したようなオルタナティブな奥深さや、中々思うようにいかない現状に苦悩する言葉をSNSで綴るなど、どちらともとれる「精一杯」が、サウンドにも歌詞にもよく表れている。
 マスロック、エモのテイストを感じる間奏では、Gt.みうらたいきがモヤモヤした想いを吹き飛ばすように轟音ギターを掻き鳴らす。ライブでも感じるように、みうらだけでなくサポートメンバー達の曲の理解度の高さや、有明の気持ち、レイラというバンドに寄り添う思いやりが、一音一音丁寧に込められているのがよく伝わってくる。
 
 不安、焦り、嫉妬、恐怖、プレッシャー、そういったものに飲み込まれて動けなくなってしまってもただ時間が過ぎていくだけで、何も変わらない。だったら振り切れなくても、全部抱えたままでもとにかく走り続けなきゃという、焦燥感を越えた先の覚悟や強さが軽快でポップなサウンドに昇華されている。(小野妙子 / Rooftop編集部)

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