童話をモチーフに描かれる現実的な歌詞の世界観と、ピアノロックサウンドが織りなすテクニカルで熱いステージが若い世代を中心に人気を集め、結成1年で大型フェスに出演するなど勢いを見せるPompadollSが、早くも1stワンマンライブを6月28日(土)Flowers Loftで開催する。チケットは1分経たないうちに即完売し、急遽決定した追加公演は3倍のキャパにも関わらず即完売という人気ぶり。バンドの‟作家"である五十嵐五十(Gt / Vo.)、リーダーの青木廉太郎(Gt)、藝大出身の但馬馨 (Dr)、小松里菜(Key)、音大出身のサイカワタル(Ba)、運命に導かれるようにして集まった5人が具現化する物語の根底にある五十嵐の想いや、青木が持つキッズのようなロックバンドへの憧れ、ライブ直前の6月25日(水)にリリースされるEP、ワンマンへの想いなどを聞くうちに、基盤はあくまでもロックでありながら、この先どんどんスケールが拡大していくであろうバンドの姿が窺えた。(Interview:小野妙子)
物語のつづきやアナザーストーリーを想像するのが好きでした
──童話との最初の出会いはどういうものだったんですか?
五十嵐:幼稚園の頃、家の近所の図書館が閉館になっちゃう時に、ご自由にその本を何冊か持ってっていいですよっていう期間があって。その時に持って帰ってきた、すごい分厚い『世界童話全集』をずっと子供の頃読んでいました。それが童話との出会いですね。
──ディズニーやジブリ、ハリー・ポッターなどのファンタジックな作品も好きでした?
五十嵐:普通に人並み程度に、金曜ロードショーとかで流れてたら見る程度だったと思います。
──物語に入り込んで主人公になりきったり、登場人物やストーリーを日常のシーンに重ねて見たりすることはありました?
五十嵐:意外と客観的に見てる部分があると思います。その人の行動を見て「あの小説っぽいな」とかは割と思いますけど、性格とかはあんまり思わないかもしれないですね。シーンとして認識することは結構あります。物語のつづきや、アナザーストーリーを想像したり、そういうのを考えるのが好きでした。
──転勤が多かったそうですね。友達との関係性を築くのが難しかったと思うのですが、童話の世界が友達の役割を担っていたんですか?
五十嵐:幼稚園から小学校ぐらいまでは転勤が多くて、当時はそう思ってなかったですけど、思い返すとちょっと拠り所だったんだろうなとは思いますね。
──童話との距離感、関係性は大人になって変化しました?
五十嵐:今は対等に対話をするみたいなイメージになったかなとは思います。考えに詰まったりとか、自分の経験では分からないことに当たった時にヒントを得たいとか、他の人の声を聞きたいと思って今は本を読むことが多いですね。居場所として包み込まれるというよりかは、対話する場所みたいなイメージです。
──青木さんはもともと物語は好きだったんですか?
青木:そうですね、僕は漫画編集者をやっていたので。あとゲームとかも好きなんですけど、RPG、ストーリーものしかやらないぐらい物語は好きですね。未だに中学生みたいな感じで、後輩とかと好きなゲームのシーンのモノマネしたりします(笑)。小中学生の時にそういうことをやってなかったんで、みんながやってるのが多分羨ましかったんだと思います。今やってみるともう一番楽しいですね。
──青木さんの方が入り込むタイプなんですね(笑)。いじめられっ子だったとか。
青木:小中は結構ずっと。いじめまでいかなくともスクールカーストは下の方を、地を這ってたので、発言権はない感じでしたね。その時に出会ったのがBUMP OF CHICKENで。それこそ物語的音楽、映像的音楽って言われますけど。それが一番最初のロック体験ではあるかもしれないですね。
──PompadollSの曲に出てくる童話を読み直したりしました?
青木:最初の方は読んだり、読まされたりはしましたね。最初にリリースした「日の東 月の西」のモチーフになっている『太陽の東 月の西』は名前も聞いたことない童話だったので。
──大人になって改めて読んでどう思いました?
青木:子供の頃より面白い気がしますね。すごいひねくれた子供だったので、何かを教えようとしてきてる感じがなんか嫌で。童話とか昔話とか「これが世の中で正しいとされてます」みたいな感じが嫌だったんですけど、大人になって、正しいことも必ずしも正しいわけじゃないっていう思考を持つようになってから読むと、正しさ一辺倒だけじゃない教訓とかを結構書いてあって面白いなと思います。
本気でようやく音楽ができるかもしれない
──音楽的なルーツに五十嵐さんはBLANKEY JET CITY、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの名前が挙がっていますが、ミッシェルとブランキーもロックで、歌詞が物語的というか、空想の風景の描写が結構出てくると思うんですが、それがPompadollSのもとになっているんですか?
五十嵐:今言われて「あ、確かに」って思ったぐらいなんで(笑)あんまり意識はしてなかったんですけど、もしかしたら無意識に思ってたのかもしれないですね。出で立ちだったりとか、ライブの風景とかがすごいカッコよくて、純粋に「うわ、めっちゃカッコイイ!」と思って聴いていました。
──高校生の時に作っていたオリジナル曲はまだ童話モチーフではなかったんですか?
五十嵐:一曲だけ童話モチーフの曲を作ってましたね。高校の時に作った曲の歌詞を今作ってる曲に一節入れ込んだりとか実はしてます。高校の時にやってたバンドもキーボードがいて、かなり同じような編成だったので名残があります。
──青木さんはBUMP OF CHICKEN、Led Zeppelin、Hi-STANDARDなどルーツが幅広いですね。PompadollSの前に組んでいたバンドはどんな感じだったんですか?
青木:当時、大学生とかでもう一番ひねくれてたんで、シューゲイザーとか、日本であんまり受けてない、サビが楽器のメロディの曲とかをやるみたいな、そういうバンドでした。
──シューゲイザーも結構聴いていたんですか?
青木:大学生で時間あったので(笑)シューゲイザーとかエモとか。DIIVやRideとか、シューゲイザーとは離れちゃいますけど、The Promise Ring、Cap'n Jazzとか好きで聴いてましたね。
──1回バンドから離れてもう1回バンドでって勇気ある選択だと思うのですが、そう思わせるものがPompadollSにはあったんですか?
青木:そうですね。なまじ偏差値は高い大学に通っていたので、みんなサークルとかでやっていて上手だからオリジナルバンドやろうぜってなるんだけど、4年生になったらみんな就職しちゃう。だから音楽をちゃんとやりたいなあって思ってたんですよね。最後に組んでたバンドも本気度はあったけどバラバラで。でもPompadollSのメンバーは会った時に、とにかく楽器が上手だから、本気でようやく音楽ができるかもしれないって思ったところはありましたね。書いてくる曲もとても本格的なものが出てくるし、それをアレンジする僕たちもちゃんとした音楽の素養がある。それはいいなと思って、やってみたって感じでしたね。
一個、分かりやすい何かが無いと、と思って
──PompadollSを最初どういう風に構想していったんですか?
五十嵐:ゼロから何かを作って世に発信するっていうのは初めてだったので、私は。パッと人が見た時にこういうものなんだなって分かるものを最初から作るのはすごい難しいだろうなと思ったので、一個分かりやすい何かが無いと、と思ったんです。それでまず童話モチーフにしようと思いました。童話モチーフだったらその世界観に合う見た目もあった方がいいなと思って、見た目を絵に描いたりとかして。それでメンバーも集まったので、メンバー本人たちと自分のイメージを融合させるじゃないですけど、できる範囲で反映できるように色々衣装とか、曲調とかを考えていきました。だったらジャケット写真はこういうのかなとか、グッズもそこから派生して考えていって、どんどん核から広げていく感じでPompadollSを作ってた気がします。
──PompadollSのサウンドの要ともいえるピアノは最初からイメージにあったんですか?
五十嵐:そうですね。ピアノの音がすごい好きなので、それは絶対入れたいなって思ってました。
──全員がテクニカルであることは必須条件だったんですか?
五十嵐:それはたまたまなんです(笑)。私も上手くてびっくりしました、最初。
青木:僕らは誰も誰とも友達じゃなかったんですよ。だけど紹介、紹介、紹介で一日二日で決まったんです。最初ピアノの子は違う子でしたけど。運命的というか、運が向いてきてるなって思いましたね。