ヤバいバンドと出会ってゾクゾクする体験は、なかなか滅多に得られない。個人的には、1991年にNIRVANA『ネヴァーマインド』の試聴音源を聴いた時とか、2015年のフジロックでおとぼけビ~バ~を見た時とかがそうだった。そして去年、初めて赤いくらげのライブをくらって、久々にあのスリリングな感覚を味わった。以降、昨年リリースされたアルバム『回転世界』をずっとリピートし続けている。
彼らの曲はどれも、聴いたらすぐに持っていかれるフックが満載だが、売れ線狙いでキャッチーな曲に仕立てたイヤらしさがない。きっと、ボーカルとギターが振りまく強烈なキャラクターに嘘がないからだ。そのキャラを象徴する「声」も、作為的なところは全くない。そして、そんな歌声を、グイグイ動きまくるベースと、パワフルかつシャープなドラムがガッチリ支える、見事なパワートリオが確立している。
活動キャリアはおよそ10年、熱心なファンからしたら、「何を今さら」と言われそうだが、時間をかけて、じっくり磨き抜かれてきた強靭な個性は、十分な新鮮さを保ったまま、まさに今ここにきて極まった様子だ。いよいよ大きな飛躍が期待される空気が満つる中、バンド自身にも期するところが大いにあるようで、この6月には初のワンマン・ツアーが決行される。
絶好のタイミングで、初めてのロング・インタビュー。まだ取材慣れしていない、初々しさを残す話しぶりながら、夏生(Vo/G)の自己表現にかける情熱、まつな(Ba)のバンドに対する誠実な想い、しげる(Dr)の頼もしい兄貴らしさといった、赤いくらげの重要ポイントが伝わる内容になっていると思う。
少しでも何か引っ掛かるものを感じた人はもちろん、むしろイメージ的に偏見を持ってしまいそうな人ほど(可能な限り生で)チェックしてほしい。(取材・文:鈴木喜之)
いきなり東京に出て、もう「とりあえず鳴らす」みたいな
──恥ずかしながら、赤いくらげのことを去年までよく知らずにいたのですが、結成は10年ほど前に遡るんですね。
夏生:そうですね。去年ちょうど10周年でした。
──最初は夏生さんと、まつなさんで始めたそうですが。
夏生:最初に、このふたりが出会って。ドラムは別の人でした。
──しげるさんは、いつ頃に入ったんですか?
しげる:6年くらい前に、最初はサポートとして。前のドラムが抜ける時、ちょうど対バンしたんですよ。自分はベルノバジャムズという別のバンドをやってて。で、ライブ終わった後、「しげるさん時間あります?」「ドラム叩いてくれませんか?」「じゃあサポートだったらいいよ」みたいな感じ。ちょっと歳も離れてるから、自分より若い子を入れて、年齢の近い3人でやったほうが動きやすいはずだと思ったんで、しばらくサポートだった。でも、そのうち、なっちゃんから「入ってくれ、入ってくれ」って言われて、「うん、わかりました」って。
──やっぱりそれは、この人だったら間違いない、みたいな確信を持てたわけですね?
夏生:そうですね、びびびびっときたっていうか。(しげるが)前やってた嘘つきバービーっていうバンドが、昔から好きだったんですよ。で、これはいけんじゃねえか? って。
──では、夏生さんとまつなさんはどういう感じで知り合ったのでしょう?
まつな:ミクシィですね。
夏生:そう。ミクシィで知り合って、バンドやるかってなった。
まつな:それこそ、嘘つきバービーのコミュニティとかで。
──おお、じゃあバッチリ回収したというか、いい話じゃないですか。
まつな:その頃の自分は九州の大学にいたんですけど。バンドやるからって辞めて、東京に出てきました。
──東京に出てくる前に、まずは音合わせしてみて、とかはなかったんですか?
まつな:いや、何もない(笑)。
──いきなり東京に出て、いきなり一緒に何か曲をやってみた、という感じ?
夏生:曲ってか、もう「とりあえず鳴らす」みたいな。
──コピーをやったりとかはしなかったんですか。
まつな:何もやってないです。
夏生:とりあえず好きなことやろうって。
──当時は、どういう音楽を好きで聴いてました?
夏生:え、なんだろう?
まつな:まあ、それこそ嘘つきバービーとか。他にはミドリとかモーモールギャバンとか、日本のロックですね。
夏生:お互い好きなバンドを共有して、私からは、つしまみれとか戸川純を教えたり。