その人の音であるか、その人にしかできないものなのか
──嬉しいですよね。忘れてモーテルズも40代になって、お客さんの人生も変化していく世代でしょうね。
283:その通りで。それをネガティブに捉えててもしょうがない。じゃなくてたとえば子育てが終わって人生が落ち着いてライブに行けるようになった時、俺たちがずっとライブをやってるってことが大事で。怒髪天がずっと続けてくれているのは凄い勇気もらえるし。
増子:まあ、本気じゃないと続かないよね。だから同世代のバンドに共鳴するしリスペクトもある。いろんなものを犠牲にしてやってきたんだろうなって。あらゆるものを犠牲にしないとバンドなんて続かないから。うちなんてほぼ全員、社長やスタッフ含め、ほぼ全員がバツイチだからね。東京バツイチクラブ作るかって(笑)。
283:僕らも同世代のバンドに対して、きっとここまでくるのに大変だっただろうなって思うようになりました。仲間のバンドに対して、ありがとうって気持ちは若い頃よりありますね。やっぱりコロナ禍はデカいです。その前は対バンに負けねぇぞって気持ちが強かったんですけど、コロナでみんな苦労したと思うんです。急にライブやれなくなったり練習も思うようにできなかったり。だからもう、ライブに出演してくれてありがとう、お互い助け合おう、そういう気持ちが出てきました。あの出来事を同じような気持ちで過ごせたバンドとは共有するものがあるし、リスペクトもあるし。
増子:苦労すればいいとは言わないけど、同じように苦労したっていう関係性というかさ、それは大事な経験だよね。そんな中で俺たちは何をすべきか。ロックバンドってある意味無責任になっていい、無責任に歌っていいと俺は思ってるの。今の政治はおかしいけど、全部そっちに寄ったら面白くないもんね。日常を生きながら、ロックはエンターテイメントだからね。エンターテイメントでなきゃダメだから。
──なんていうか、突き抜けていく力というか。
増子:そうそう。日常を飛び越えて突き抜けていけるもの。ロックはそれができるはずだよね。同時に日常のこと、ちんまい日常のことを一個ずつ取りあげていくのも大事だと思うのよ。それが忘れてモーテルズにはあるよ。
283:ありがとうございます。ちんまいって小さいってことですよね。
増子:そうよ。フォーカスした部分。なんかこう、どうでもいいこと、でも納得いかなかったりすること。それを歌にしていく。そこで出てくるのがパーソナリティっていうさ。
283:ああ、はい。ですよね。
増子:でさ、この前打ち上げで話したんだけど、バンドにとって何が一番大事かって。若いバンドに訊かれたらなんて答える? って。かなり考えてね。
283:それって、なんですか?
増子:しばらく考えて最終的に俺が言ったのは、根性。令和の時代に言っちゃいけないようなことじゃん(笑)。でも結局根性なのよ。バンドやってるといろいろあるけど最後に頑張れるのは根性があるかどうかだから。だからね、これから根性を押し出していこうかと。この令和の時代に(笑)。
──根性って、自分に向き合う力だったり。
増子:そうそう。自分は何がやりたいかってなった時、音楽のジャンルとかスタイルとかいろいろあるけど、結局人間性が出るからね。出なきゃおかしいからね。音楽ってのは3人でやってれば3人の人間性を鳴らしていくもので。それがオリジナリティになるからね。今は若くて上手いバンド山ほどいるよね。でも上手けりゃいいってもんじゃない。その人の音であるか、その人にしかできないものなのか、それがどれぐらい出てるか。オリジナルって最初は笑われるよ、きっと。俺らもさんざん笑われた。そこを超えるのさ。
283:根性で。
増子:そうそう。根性で。さっき「選択肢はない」「コレだけ」って言ってたけど、それでいいと思うよ。忘れてモーテルズはそういうやけっぱち感もいいよね。
三人:ありがとうございます。
283:やけっぱち感はありますね。
増子:近道ないからな。近道してる奴もいるよ。近道してる奴は早く終わるけどね。お客さんも、ゆっくりお客さんがついたなら減る時もゆっくりだから。急についたお客さんは急に減るから(笑)。
三人:ああ! わかります。
増子:以前ね、某フェスに出てさ。もう客が何万人もいてバカみたいに盛り上がったよ。俺らもオォォー! って盛り上がって。物販のCD、こりゃ足りないんじゃないの? って思ったけど全部持って帰ったよ(笑)。全然売れなかったよ(笑)。次の年も凄い盛り上がったよ。こりゃCD足りないかな? って思ったけど全然足りたよ、余ったよ(笑)。ああいうフェスに来るのはバンドや音楽が好きというよりフェスが好きな奴らだからね。
283:ああ、勘違いしちゃいますよね。
増子:そう。錯覚なんだよ。ライブが良かった、曲が良かったじゃなくて、ただフェスで盛り上がるのが楽しいだけ。カタログみたいなに寄せ集められたバンドが山ほど出るフェスとか、出る意味ないなと。そんなのより主催する人の気持ちがあって顔が見えるフェス。見たいバンド、見てもらいたいバンドをちゃんと見せる。主催、バンド、お客さん、いい関係性を築いていく。そういうフェスに出ないと。
悪玉:前にギターウルフのフェスには出させてもらいました。
増子:SHIMANE JETT FES! あれこそ主催者の顔が見えるフェス。最高だね。
三人:最高でした!
悪玉:ビールは山ほどあるし。
283:D.I.Y.で。
ゾロメ:お母さんがシジミ汁を作ってくれてて(笑)。
増子:そういうフェスに出なきゃ。そういうフェスに出るバンドはライブハウスで長年やってるバンドだったりね。やっぱり最高だね。俺、騒音寺、夜のストレンジャーズ、凄い好きで。いい曲作っていいライブやってる。
三人:僕らも凄い好きです。
増子:ライブハウスでやってるバンドはいいよ。ライブハウスは居場所だね、生きる場所。新宿ロフトでワンマンでしょ? 最高だね。
──では、新宿ロフトでのワンマン。どんなライブにしたいですか?
ゾロメ:まずはスタートしてるツアーの一本一本を大事に一生懸命ライブして、少しでも成長した姿を見せられたらと思います。
悪玉:新宿ロフトってやるほうにとっても見るほうにとっても特別なハコで、ある意味象徴的な場所だと思います。その「世界の果て」新宿ロフトでお客さんが「ここでモーテルズ見て良かった!」って笑顔で思えるようなライブにしたいと思ってます。
283:今、北から南までツアーして回ってる最中です。どの土地でも全力です。それしか知らないしそれしかできないしそれしかやらないです。3.15新宿ロフトで、それが最高の形で結実する夜になるという確信があります。どうか見届けてほしいです!