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INTERVIEW

トップインタビューキノコホテル×exist†trace×アーバンギャルド - 稀代の女性ボーカリストが牽引する生粋のライブバンド3組が下北沢SHELTERのオープン33周年を祝して鎬を削る渾身の三つ巴ライブ【前編】

稀代の女性ボーカリストが牽引する生粋のライブバンド3組が下北沢SHELTERのオープン33周年を祝して鎬を削る渾身の三つ巴ライブ【前編】

2024.10.04

このバンドをやめたら自分たちが自分たちではなくなってしまう

──浜崎さんが言うところの脱落者がexist†traceから出なかったのは、ご自身としてはなぜだと思いますか。

miko:バンドを続ける上でディスカッションはもちろんありましたけど、このバンドをやっていきたい、この5人でやり続けたいという根底にある思いはずっと変わらないし、アクシデントが起これば「みんなで解決していこうね」というスタンスでやってこれたからだと思います。今まで誰かが本気で脱退するという話は一度もなかったです。

東雲:凄い! 羨ましすぎて涙が出ちゃう(笑)。

浜崎:あなた飲みすぎよ(笑)。これはジェンダーバイアスと言われるかもしれないけど、女性ミュージシャンって恋人ができると音楽をやらなくなったりするじゃないですか。

東雲:男性に比べると環境の変化に左右されやすいかもしれないわね。あと、女の子がバンドをやってるってだけでチヤホヤされるから、若い頃は音楽を続ける上でそこまで腹が決まってないところもあるじゃない? 何となく楽しいから浮かれて音楽をやってるだけの女の子が「自分はプロです」みたいな顔してその辺にいるのが厄介ですね。誰とは申しませんけど(笑)。

浜崎:そうなんだよね。だからexist†traceさんは5人ともそういう環境の変化はなかったのかな? というのが素朴な疑問としてあります。

東雲:若い頃は揉め事とかもあったかもしれないけど、5人全員がexist†traceを凄く大事にしていて、このバンドをみんなで守っていこうという気持ちが年々強くなってきたから様々な不慮の出来事を乗り越えてこれたんじゃないかしら。そういう5人の結束力が凄いし、その境地まで行けばもはや運命共同体だし、いずれお互いがおばあちゃんになっても良い関係を築いていけると思う。どうすればそんな関係になれるのか東雲に伝授してほしいわ(笑)。

miko:今でこそいろんなガールズバンドのイベントにも出ていますけど、私たちはもともとヴィジュアル系にどっぷり浸かってバンドを始めて、活動初期の共演バンドはほぼ全員男性、フロアはほぼ全員女性だったんです。女性アーティストがウェルカムされない場所だとわからずに始めたところもあるし、男性アーティストの中に女性がいるから嫌がられるんだなと遅まきに気づいたんです。だったら他のバンドとあまり仲良くしないようにしようとか、女性らしさを出すと嫌われるから男性っぽさを意識して出そう、楽屋でも女性らしい言動はやめようとか、どんどんそういう方向になっていったんです。自分たちとしては当たり前のようにバンドをやりたかったから女性っぽさを消すと言うか。周りに女性ミュージシャンも少なかったし、もしexist†traceから脱退するメンバーがいたり解散することになれば、次に入れる女性メンバーを決めるのがめちゃくちゃ難しい。それをよくわかっていたので脱退や解散ができない状況だったんですよ。

東雲:仮にメンバーを募集したところで、ヴィジュアル系の男性ミュージシャンとお近づきになりたいだけの変な子が引っかかってくるリスクがありそうですものね。全くの憶測ですけど。

ジョウ:exist†traceの5人が揃うまで、他の候補の方に会ったりもしたけど上手く噛み合わなくて、何とかこの5人に落ち着いたんです。だから何が何でもこの5人でどうにかしなきゃ…という気負いが以前は強かったと思います。

浜崎:私もexist†traceさんのように楽屋では女性らしさを出さないようにするとか、最初の頃は凄く気を留めていました。アーバンギャルドにはガーリーという確たる世界観があるし、メディアでもちょっと不思議ちゃんみたいな感じで紹介されていたんです。その世界観を壊さないためにも、楽屋ではなるべく誰とも喋らないようにしていました。必要以上に他のバンドさんと仲良くなっても仕方ないという考えもあったし、自分と周波数の合う人が他にいなかったのもあって。チューニングの合う、合わないというのは空気で何となくわかるし、その嗅覚が研ぎ澄まされて厳選されていった結果、東雲さんみたいな人と仲良くさせてもらってるんですけど。

東雲:あら、東雲は容子に選ばれし人間なのね。光栄ですこと。

浜崎:東雲さんは私の中で仲良くさせていただいている認識ですよ、わたくしは。

東雲:じゃあワタクシもそう思っていていいのよね?(笑)

浜崎:もちろん。だって対バンもできてプライベートでも一緒に遊べて、それは凄く恵まれていることだなと自分では思っています。対バンを通じていろんなミュージシャンと出会ってきたけど、プライベートでも仲良くできるような、自分と同じように志の高い人ってなかなかいないんですよ。

東雲:自分より下に見るつもりは全然ないんですけど、今は同じ女性出演者としてアイドルみたいな方もたくさんいらっしゃるじゃないですか。アイドルにはアイドルなりの美学があるし、独自のポリシーを持って活動されている方々は素晴らしいけれど、キノコホテルやアーバンギャルド、exist†traceのように自分たちで作詞・作曲をして演奏もする側からすると、やっぱりちょっと畑が違いますよね。長年音楽を続けていると同じくらいのキャリアがあって、対バンもできて、自分と同じように日々もがきながら独自の世界を追求し続けている…そんな女性バンドがどんどん減ってくるので、浜崎さんはとても貴重な存在ですね。exist†traceはちょっと違う土俵で活動されている印象だったのでこれまで絡みがなかったけど、女性だけの不動のメンバーで20年以上活動を続けるなんて良い意味で普通じゃないし(笑)、皆それぞれ悩みや葛藤を抱えつつも自分たちにはこれしかない、これをやめたら自分たちが自分たちではなくなってしまうという気持ちがあるんだろうなと思いますね。

浜崎:確かに。それはここにいる全員がそうだよね。

▶︎▶︎▶︎後編へ続く◀︎◀︎◀︎

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Shimokitazawa SHELTER 33rd ANNIVERSARY “絆奏”
【日程】2024年10月15日(火)
【時間】開場19:00 / 開演19:30
【チケット】前売¥4,000 / 当日¥4,500(共にドリンク代別¥600)
イープラスにて10月14日(月・祝)18:00まで発売
【会場・問い合わせ】下北沢SHELTER 03-3466-7430
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