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INTERVIEW

トップインタビュー本間翔太(合同会社SOVA代表・アイドルグループプロデューサー)- tipToe.ラストワンマン『standing on tipToe.』とその7年半の歴史を振り返る

tipToe.ラストワンマン『standing on tipToe.』とその7年半の歴史を振り返る

2024.08.29

2期にとって試練だったコロナ禍の大打撃と1期との比較

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──本間さんのどこか内向きなんだけど秘めたエモーショナルさを解放する感じが歌い手にマッチしてましたよね。

本間:1期メンは内向きな表現が得意で、それも良かったのかもしれないですね。最初期はアイドルらしくできるだけ明るい曲を作るよう心がけてたんですが、2年目には我慢できなくなって「blue moon.」や「ナイトウォーク」のようなシリアスな夜の曲を書いたら、彼女たちも「こういうの好きです」って言ってくれました。

──この夏は『アザーレコメンドLIVE』に優勝して『TIF』初出演や『アイドル横丁』、『@JAM』と大型フェス続々決まり、一方で夜編の楽曲で幅が一気に広がった印象があります。

本間:そうですね。グループが急に本格的に盛り上がり始めてここからは後戻りできない感じになったので、この頃メンバーに「やるなら覚悟を決めてほしい。辞めるのも悪いことじゃないし理解もできる。辞めるなら盛大に送り出すから考えてほしい」って伝えたんですね。

──それぞれの覚悟を尋ねたと。

本間:そしたら全員が「やります」って。そこから走ってきちゃいましたね。渋谷クアトロで満員になったりして、バンドの時の自分からすると考えらんなかったです。そういう気持ちがタイトルになったアルバムが『daydream』、起きたままで見る夢、白昼夢ですね(笑)。僕もメンバーも不思議な感じ。

──そのうち1期の初期メンバーが任期の3年が近づいてきます。

本間:1期が終わる1年前くらいに、いよいよ終わりについて考えないと、と僕とメンバーだけで話し合いの時間を作ったんです。後で変わってもいいけど、今はどう思ってるのか。方向として、ひとつは予定通り3年迎えたメンバーは卒業して、まだ期間のあるメンバーは新しいtipを作る。もうひとつは全員一緒に卒業する。そして3つ目に誰一人欠けない条件で「3年と言ってたけどここまで来たから続けます、すみません!」としちゃう選択肢も伝えました。

──この時は花咲なつみ・都塚寧々(現airattic神楽寧々)・三原海の3人が任期満了で、椋本・日野・成瀬(成瀬ゆゆか)はまだ任期を残した状態。辞めるメンバーと、途中加入で任期がまだあるメンバーもいるから複雑ですよね。

本間:皆即答で言ったのは、やってきたことが嘘になるから「3つ目はない」と。僕も同意見だったので嬉しかった。ただ、他の意見は「自分は任期切れるけど継続するメンバーがいるならその子が辞めるまでは続けてもいいよ」って子もいれば、「このメンバーで終わりたい」って子もいたりいろいろで。最終的に数カ月かけて話して任期満了の花咲・寧々・三原と同じタイミングで椋本、成瀬も辞めることになったんですが、任期が残っているあみ(日野あみ。現airattic向日葵海)はどうするかすごく悩んでて。

──そりゃ迷いますよね。

本間:あみはなんとなく1期の末っ子っぽくて他のメンバーと違うことを言わないイメージがあったんですけど、この時あみだけ残るって結論を伝えてくれたんです。自分がtipを繋ぐって言ってくれて。

──かなりの決意だったでしょうね。

本間:1期ではあんなに末っ子だったのに、2期ではみんなを引っ張るお姉ちゃんなあみになってくれました。

──彼女がいなくても2期はスタートしたと思うけど、1期と2期のつながりは彼女いてこそですよね。tipの伝わり方が全然変わってたかもしれない。

本間:すごい頑張ってくれました。感謝してます。

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──それから未波あいり、悠木うたが加入して2期tipToe.がスタートするわけですけど、普通だったら1期の人気を引き継げる強みがあるわけですが、コロナでスタートから難しかった。

本間:2020年4月お披露目の予定が2回延期になりました。結局9月にO-WESTでやったんですけど、400人入るハコで当時の三密対策で100人しか入れられなくって。たくさんチケットに応募いただいてたのでお客さん入れ替えて複数回公演やれないかとか頑張ったんですが、規定上NGでどうしようもなく。しばらくそんなことが続きました。コロナだからって活動をセーブするにも期間の3年は進んでいくし、やっぱ苦しかったですよ。

──アイドルも運営もファンも厳しい時期でした。

本間:あと何気に大変だったのは、それまでの1期と比べられてしまうことですね。2年生後半や3年生のエンジンがかかった1期tipToe.から見だした人からすると、2期はデビューしたてなのでどうしてもパンチが弱く見えてしまう。

──そこから成長するところを見てほしいのに、なかなかそうもいかない。

本間:それであみが卒業して、りん(柚月りん)とあらん(藍田あらん)が入ってくれたけど、ゆうか(宮園ゆうか)が体調崩して辞めることになってまた3人になって。この頃が僕自身はいちばんへこたれてたかもしれない。

──先が全然見えない時期ですね。メンバーも固定しないし。

本間:ただ3人が頑張ってくれてました。メンバーがこんなに命かけてやってるのに、自分がこんなんでいいんかって思っちゃって。メンバーから気持ち的に引っ叩かれた感じでしたよ。そこからあの子たちがいるからtipToe.やれてるって強く思うようになりましたね。

──それで2期ファーストワンマンが22年6月、お披露目から1年9カ月と本当時間かかりましたね。

本間:ただその前、21年の年末に3人体制のフリーワンマンやったんですよ。これが昔のファンも来てくれて、ソールドアウトになって。サプライズで一面サイリウム焚いてくれたのを見た3人が大泣きしちゃったんです。毎回ラストライブみたいな気持ちでひたむきに積み重ねてきましたからね……。あのあたりからやるぞ、って力湧いてきた感じですね。めみ(小宵めみ)とみこと(深見みこと)も入って、ゆうかも帰ってきてくれたし。

──活動もやっと少しずつ以前のようにできるようになってきた。

本間:そのタイミングで大きな反響をもらった「さくら草の咲く頃に」を出したんですよね。1期がかすみ草モチーフで、2期がさくら草なんです。最初から花モチーフは考えてて。同じ活動をしたとしても、違う子だったら同じ道筋を辿るとは限らないじゃないですか。そこに自分だけの何かが必ず芽生える。だから別の花にしたいな、って思ったんですね。2期のさくら草は厳密にはプリムラっていう西洋のさくら草のことを指してて、花言葉が「運命を切り開く」なんです。当時コロナでいろんなものに巻き込まれて、普通へこたれてしまうような時でも叶えたいことがあった。そういう願いも込めたんですね。

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──まさに祈りのようなセレクト。徐々に活動の幅も広くなっていって。

本間:やっぱり『TIF』に出れたのはみんな喜びましたね。2期になって最初の『TIF』はあまりにもデビュー直後だったのでさすがに1期の先輩たちの流れで呼んでもらったのかなというのがあって、その翌年は呼ばれなかったんですよ。だから2年ぶりに呼ばれた時メンバーたちは「今回は自分たちの力と思っていいかな」と言って大泣きしていました。

──普通だと2期って1期のゲタ履かされる印象あるけど、コロナもあってまた違う流れがありましたよね。それが良かったとは言わないですけど。

本間:良かったってことはないです(笑)。でもそのまますんなり行ってたらパフォーマンスの質感は変わったかもしれない。2期はパワフルなんですよ、外向きで情熱的。2期では1期の夜編と対比する形で雨編というシリアスな楽曲群があるんですけど、1期がどこか冷たさがあるのに対して、2期はシリアスにしても情熱的なんですよね。温度感が違う。歌詞も1期の夜編は個人の話だったのに、2期は君と私の話だったりして。

──あ、なるほど。

本間:2期の活動で気づいたのは、人とやっていくことが大切さでした。物事にはそれぞれの視点があって、それぞれが一生懸命頑張ってても噛み合わないことがある。そんな時に自分が閉ざしてしまったらそこで終わっちゃう。相手が閉ざそうが自分はいつも開いてなくちゃいけないってやつでした。

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LIVE INFOライブ情報

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めみちゃんが歌います vol.4
【出演】小宵めみ
【日程】2024年9月1日(日)
【時間】開場11:45 / 開演12:15
【会場】LOFT9 Shibuya
【チケット】前売¥2,500 / 当日¥3,000(共に飲食代別・要1ドリンク)
*購入はこちら[8月31日(土)23:59まで]
【問い合わせ】LOFT9 Shibuya 03-5784-1239
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