7月21日、なかのZERO大ホールで開催された『standing on tipToe.』でメンバー全員が卒業し、2期7年半に及ぶ活動を終えたアイドルグループ・tipToe.。制服系のクラシックなビジュアルはアイドルとして王道感あるもので、そんなメンバーの心の内を弾けさせる歌詞と時にポップ、時に激情的なサウンドとの融合は唯一無二。その作曲スタッフもtipToe.と同じ事務所・SOVAに所属する瀬名航・林直大が中心に手掛け、そのチーム感が最後まで薄れることはなかった。そのラストライブはメンバーだけでなくスタッフ、そしてファンもゴールラインの先まで駆け抜けるような爽快感あるエンディングで幕を閉じた。
ラストライブから約1カ月、tipToe.プロデューサーでほとんどの作詞を手掛けた本間翔太に、あらためて最後のステージとこれまでのtipToe.の活動を振り返ってもらった。
また、9月1日には元メンバーで現在もSOVAに所属する小宵めみがLOFT9 Shibuyaで『めみちゃんが歌います vol.4』を開催するということで、その注目ポイントも聞いてみた。(Interview:大坪ケムタ)
「最後までやったことないことをやるグループ」でいたかった
──あらためてラストワンマン終わってみての心境はどんな感じですか?
本間:終わってみて……本当にすっきり満足しました! やりたいことをやり尽くして、言いたいこと言い尽くしたなって。メンバーたちも晴れやかで、ライブが終わってメンバーも関係者も皆幸せそうで爽快感がすごかったです。
──最初から「活動期間3年」と決めていた上で、2期やったとはいえ「予定通りの解散」って他にないですよね。前に本間さんと話して「漫画の連載を始めて、最終回まで描き切った感じ」と言ってたのが印象的で。
本間:本当にそう思いますね。tipToe.全曲がストーリーとして繋がるように歌詞を書いてきて、最初は自分のストーリーのプロットがあったわけですけど、メンバーも死ぬ気でやってるからそれに引っ張られてストーリーに変化が生まれつつも無事完結まで書き切ることができた気分です。
──よく漫画家が「自分が考えたキャラクターが勝手に動き出して、思ってたのと違うストーリーを作り出す」って言いますけど、生身だからなおさらですよね。
本間:もっと動くんですよ(笑)。メンバーも変わったり、自分の予定どおりの結果にはならない。エンディングは100%想像してたものとは違ったけど、結果的にすごく綺麗で、自分の言いたいことを書き切って、メンバーから影響を受けて思っていたことよりもっと良いことが書けて……もうスッキリですね!
──漫画の最終回っぽい、ということでいうと2度目のアンコール、最後の曲「夢日和」の歌いだし「あたし幸せだっていいかもね? 輝いてみたいよ!」という歌詞の伏線回収感がすごくて。「間違いなく幸せな、輝いてるエンディングこれ以上ある?」ていう。
本間:「夢日和」は1期のお披露目のライブで披露した曲ですからね…。2期は2期のアンセムがあるんですけど、回数的には間違いなくいちばん歌われてきて、他のアイドルさんも知ってくださってたり、体感上いちばん知られてきた曲でした。あれをお披露目ライブで披露する最初の2曲として瀬名航くんが作ってくれたのは今考えてもすごいなって思います。
──さてラストライブについて振り返ってほしいんですが、まず会場がホールというのがちょっと意外でした。これまではZepp中心にスタンディングの会場でワンマンをやってきただけに。
本間:ホールでのワンマンは初めてですね。もともと歌と楽器だけで戦うゴリゴリのロックバンドが好きだったのであまり舞台を作り込んだりせずにやることが多かったんですけど、ゴリゴリなのはひとつ前のZepp Shinjukuでやりきったんですよね。だから最後はホールを作り込んでやろうと。とにかく「最後までやったことないことをやるグループ」でいたかったというのがあるんです。
──最後まで攻めますねえ。
本間:ラストライブでは初めてでっかい風船を投げたり、銀テープを飛ばしてみたり。あとホールなんでメンバーが客席に登場してのフロア歩きとか、メンバーの意見も取り入れながら思いついたことはできるだけやろう、と。あとメドレーもワンマンでは初めてでしたね。本当は全曲やりたかったんですけど、1期2期足すと50曲以上あるので全部はやれなくて。
──ワンマンで尺長いとはいえ、それでやむなくメドレーに。
本間:メドレーにも入れられない曲もあったんです。メンバーもスタッフも僕もみんなtipToe.好きだから「なんでこれやんないんですか!」みたいな感じで、セットリストは本当に決めるのが大変でした。後悔したくないから必死なんですよね。なのでその直前でラスト対バンイベントだったエクストロメ!!(ライブイベント)で、ワンマンでやれない曲やろうってことになったんですけど、そしたら普段あまりやらなかったレア曲が多くなっちゃって、今度は「対バンラストなのにいいのか?!」ってリハ1時間前にまた揉めて。
──やりたいことが最後まで多すぎる!
本間:結局、こばけんさん(エクストロメ!!主宰)に「すいません、尺伸ばさせてください!」って泣きついて、他のグループさんにも了承いただいた上で、予定より20分伸ばさせてやらせてもらったりしましたね。
──そして最終的なセットリストはどんな考えで決まったんですか?
本間:最初の2曲「春の風速、帳が揺れて」と「特別じゃない私の物語」は2期の始まりと1期の始まりの曲なんですよ。そして最後「特別じゃない私たちの物語」と「春の風速、桜花をつれて」の1期2期それぞれの終わりの曲で締める、そして最後の最後は「夢日和」。まずこれが軸にありました。
──2期の歴史を感じさせるオープニングとエンディングですね。
本間:序盤はメドレーから「クロックワーク・スパークル」と明るい日常系の曲をいっぱい賑やかにやって導入という感じで、次に「Cider Aquarium」から「The Curtain Rises」まで1期のターニングポイントになった曲をやって。その後、2期に時代が移り変わって2期のメンバーたちが本当の意味で堂々とステージに立てるようになった頃に作った「My Long Prologue」を皮切りに2期のシリアスなロック曲を経て雨、夏、夕方、夜とモチーフごとに進めて、恋愛の曲までやったら2期のターニングポイントになった「ユナイト」、「さくら草の咲く頃に」で一区切り。そして最終ブロックは「ラストソング」で「後悔しないようにやろう!」と歌詞で決意表明してからラストスパートって構成でしたね。
──「ラストソング」は本間さんとして「これ書けたことで言いたいことは言えた」みたいにXでも書いてましたね。
本間:そうですね。だから本当言い残したことなかったですよ! 最後のほうになると、メンバーもスタッフも、きっとファンの方も後悔ないか、やり残したことはないかとか、限られた時間の中で全て叶えるのは難しかったりとか、いろんなものが積み重なってきちゃって、どうしてもピリピリしてくるんです。でも、大事なことってそういうことじゃなくて。素直にすごい楽しかったって気持ちとか、純粋な思いのはずなんですよね。
──やり残したこととかより、やってきたことを思い出したほうがいい。
本間:初めてステージに立った時の感動とか、お客さんが100人、200人と来てくれた時の嬉しさ、初めてアイドルフェスに出れた時の喜びとか……。僕だったら先輩であるブクガさん(maison book girl)とかやなミュー(ヤなことそっとミュート)さんと初めて対バンした時の「やってやるぜ!」みたいな気持ちとか……すごい純粋だったと思うんですよ。
──振り返ればそんなシーンばっかりですよね。
本間:それがいちばん大事だったから、自分に思い出させるためにも、みんなにも伝えたくて、どうしても書きたかったんですよ。最後アルバムに入るかどうかがスケジュールぎりぎりだったんですけど……これ書けてすっきりしましたね。