第3期tipToe.はなぜ実施されないのか
──ラストライブが終わった後、メンバーたちはどんな気持ちだったんですかね。
本間:卒業後面談みたいな感じで、契約関係の手続きを兼ねていま順番にメンバーたちに話を聞いてるんですよ。まだ全員は終わってないんですけど。もう契約も終わったらプロデューサーとメンバーの関係ではないから、「ぶっちゃけどうだった?」って1期の頃から必ず卒業生全員に聞いてるんです。そうしたら皆「tipToe.やってよかった!」って言うんですよ。でも、もう一度やりたいか? って聞くと大体「もういい」って(笑)。
──正直!
本間:楽しいだけじゃないことをみんな知ってるからもう一回3年間やるかというと……(笑)。でも1期メンも2期をなんだかんだ気にしてライブ見に来てくれたり、時々助けてくれたりしてますからね。ラストライブではスタンドフラワーも贈ってくれました。
──いい思い出にはなってる。そうは言ってもtipToe.の出戻り率の高さを考えると、やっぱりまたしばらくしたらやりたくなる子も絶対いますよね。
本間:あははは!
──4人が一度辞めてまた同じ事務所に戻ってくるっていう。またアイドルやりたくても事務所が不満だったら他に行くだろうし、それでもSOVAに戻ってくるのは他に選択肢が考えられないからなんだろうなあ。
本間:ありがたいですね。でも僕ももう一度tipToe.をゼロから作るとしたら今はいいかなあ。もう一回やって今以上の満足感得られるかっていうとわからないですし。
──それはある意味なぜ3期をやらないのか、という疑問にも繋がりますかね?
本間:もうこれ以上tipToe.やるには自分の人生を一旦使い果たしましたね(笑)。恥ずかしい話ですけど、tipToe.は子どもの頃からあった自分のコンプレックスを燃料にして創作してたところがあって。教室の隅っこにいて、人と話すのが得意じゃないから音楽聴いて過ごしてた時代の。
──そういう本間さんの歌詞とtipToe.のメンバーがリンクしたんだと思うんですよね。
本間:端から見たら大したことなくても自分にとってすごく大事な悩みだったり、地味に嬉しかったことだったり、そこから捻り出した希望みたいなのを教室の隅っこに向けて届けたかったんです。歌詞はメンバーとの雑談やXやブログからヒントをもらいつつ、曲が嘘にならないように自分の経験や感情も混ぜて書くようにしてました。メンバーたちが自分自身の曲として心から歌えるように、どうしたらこの子が普段出さないような激情を吐き出せるのか、普段言えないことを歌に乗せて大勢の前で言えるのか……ずっと考えてて、夜中の2時3時にレッドブルを死ぬほど飲んで「あと一行が書けない」って考えて朝になって「今日も書けなかった……」って。
──そんな夜が何度もあったんでしょうね……。
本間:そうして書いた曲を見せて、その場で喜んで反応してくれる子もいれば、なんにも言わないのにライブで泣きながら歌ってて「わかってんじゃん!」って思ったこともあったり。「あなたのために書いたんだよ」って嬉しかったですけどね。
──少しずつの積み重ねなんでしょうけど、それを最初のアイドルでできたのはすごい。
本間:逆に最初だからできたんだと思うんですよね。バンドでもファーストアルバムってそうじゃないですか? 初期衝動というか。
──本間さんってもともと歌詞とかはバンドやってた頃書いてたりしたんですか?
本間:学生時代のバンドで多少書いてましたが、趣味程度でしたね。こんなにがっつり書いたのはtipToe.を始めてからです。バンドやってたって言っても本当にちょっとで、どっちかと言うとディレクターやイベンターの活動が中心でした。好きなバンド集めて「この対バンの並びの意味わかるよね?!」みたいなイベントをやってました。
──表現する側というよりも裏方がメインだったんですね。
本間:tipToe.を手探りで始めた時に「歌詞書ける人必要だね」って話になって、10年くらいぶりに書いてみたらなぜか書けたんですよ。それが「特別じゃない私の物語」。その時は「なんか歌詞頼まないで済んだね」くらいの感じだったんですけど(笑)。
──書き方が変わっていったタイミングってあるんですか?
本間:1期2年目の頃、周りの仲良いアイドルが『TOKYO IDOL FESTIVAL』とか『アイドル横丁』とか大きいフェス決まったりして、うちだけ出られず置いていかれてる感があったんですよね。それでメンバーも落ち込んでて。
──今思うと意外な感じもしますね。意外と出だしはスロースタートだった。
本間:やっぱりワンマンとか多少無理してデカ箱でやったほうが業界的に大きく見えるじゃないですか。でも僕はバンドの時からの美学みたいな感じで「身の丈に合ったサイズの箱をパンパンにするのがいちばんかっこいい!」って思ってて、結果的にあんまり目立った動きができてなかったんです。
──「ワンマンがデカい」とか「フォロワー数が多い」とかで判断されるところはありますよね。
本間:順風満帆ではないけど頑張っていたメンバーたちが気持ちを吐き出せる曲を書かなきゃダメだって思って書いたのが「ハートビート」。
──個人的にもそこからtipはハマったところあります。この歌詞書いて女の子に歌わせるグループすげえぞ、と。
本間:そのデモを2017年の大晦日にメンバーに送ったんですけど、真叶(椋本真叶。現cherish your bubble)から年明けの挨拶と一緒に「泣きました」ってメッセージが来て、こういうふうに伝わるんだな、って思って。それから歌詞書いていいんだ、って思ったところはありますね。