自分を育ててくれた場所・新宿LOFT。KERAとはまたアルバムを作りたい
──今回の還暦ライブの舞台となる新宿LOFTの思い出を教えてください。
三浦:新宿LOFTの思い出は山ほどありますね。高校1年か2年の時に学ランを着て、初めてLOFTに行ったんですけれど、とんがったお兄さんお姉さんたちばかりで怖かった。当時はP-MODELやLIZARDを観に行っていました。80年代前半から中盤までのLOFTって、なにを観に行ってもはずれがなかったんですよ。当時は1,800円くらいあれば入れたので、知らないバンドでも観に行って「面白いな」って思っていましたね。
──なかでも印象深かったのはどんなバンドでしたか。
三浦:当時観た中で、一番かっこよかったのはLAUGHIN' NOSE(ラフィンノーズ)。KENZI & THE TRIPSも上手かった。歌舞伎町に移転してからは、FLOPPYやKERAさんの50歳記念ライブ(『ケラリーノ・サンドロヴィッチ・ミューヂック・アワー / 生誕50周年・ナゴムレコード30周年&新生記念・新宿LOFT 4days』、2013年12月)を覚えています。
一個だけライブハウスを挙げろって言われたら、やっぱりLOFTなんですよね。有頂天は渋公でライブをするようになっても、LOFTに戻りたかったんです。それはもうしょうがないですよ。ずっと育ててもらったので。
──8月18日に還暦を迎えるにあたって、どのような気持ちですか。
三浦:たとえばウェブのアンケートとかあるじゃないですか。50代までは年代別に分かれているのに、60代になると「60代以上」ってなっちゃうんですよ。これって100歳以上の大先輩とかと同じエリアに入るのかな? って思うとヤバいっていう危機感と、逆に言えばそこまで生かしてもらってありがたいって感情も生まれますね。仲間は何人も死んでしまったからね。
60歳までライブやレコーディングができているっていう状況を、それ以上を求めるのは贅沢かもしれないなって思いますけれど。でも鮎川誠さんみたいなミュージシャンの姿を見ると、死の直前までやらなきゃなとも感じていますね。
──ではご自身のキャリアにおいて、ライブやアルバムなどベストを選ぶとしたら何になりますか?
三浦:2つでもいいですか? アルバムだと『AISSLE』。力任せな部分と前衛的なアイディアがうまく融合できたんじゃないかなって思っています。いまだにサブスクリプションで聴けるんですよね。リリースから40年近く経っているのに凄いなって。誰が聴いているのかなって思ったりもしますけれど(笑)。あともう1枚は『ザ・ベスト・オブ・ケラ&ザ・シンセサイザーズ』(2011年10月リリースのベスト・アルバム)。その2枚はよくできたなって自信があります。今も流通されているものだったら、その2枚がいいんじゃないでしょうかね。
▲有頂天の通算4作目となるスタジオ・アルバム『AISSLE』(1987年6月にキャニオンレコードより発売)。ラブソングをコメディ仕立てにした全16曲収録の傑作。
▲ケラ&ザ・シンセサイザーズの『ザ・ベスト・オブ・ケラ&ザ・シンセサイザーズ』(2011年10月に電子音楽部/BounDEEより発売)。バンドが初めて演奏したルースターズのカバー、「オンガク」の戸田宏武によるリミックスを含む入門盤。
──還暦ライブに向けて、聴いておいたほうが良い音源はありますか?
三浦:そうですね。でもその音源から何曲やるかわからないですけれども。『AISSLE』から、なにかやらなきゃいけなくなっちゃった気がしました(笑)。ちょっと考えます。今回は、僕のソロ・コーナーがないんです。出てほしい人たちにオファーを出したら、ありがたいことにみんなOKだったので自分の時間がなくなった(笑)。ソロがないので、KERAさんと組んで何かできればいいなと思ってはいますけれど。
──三浦さんにとってKERAさんはどのような存在ですか?
三浦:KERAさんがどう思っているのかわからないけれど、僕にとってはお兄さんみたいな存在ですね。僕に怒る人ってKERAさんしかいないんですよ。昔は取っ組み合いとかもしましたけれど(笑)。言い合いもできたりする仲はKERAさんだけなので。今はもうお互い若くはないので、穏やかですけれどね。KERAさんがまだ怒っていなければ、もう1枚くらいアルバムを作りたいですね。僕はシンセサイザーズを不義理になる形で辞めているので……。向こうはまだ怒っているんじゃないかな。
──KERAさんと三浦さんがアルバムを作るとなったら、ファンが一番喜ぶと思いますよ。
三浦:いやいやいや。まだ怒っていると思うんで。KERAさんが許してくれれば、もう1枚くらい作りたいですね。KERAさんや僕の周りには良いミュージシャンがいっぱいいるので、みんなの知恵を集めたら良いものができるんじゃないかって思いますね。
──今回のライブが、その布石となると良いですね!