伊豆から革命を起こす!? 独立系メディアと言論人の『サウス・バイ・サウスウエスト』
──今回、新宿ロフトやロフトプラスワンなど10店舗のライブハウスを運営する「ロフトプロジェクト」が入っているのが意外ですね。
ジョー:明らかに日本のカウンターカルチャーを牽引してきた存在ですし、僕はロフトってひとつの大きなメディアだと思っているので。
津田:独立型の場所を作るっていう意味では老舗中の老舗ですよね。それにトークイベント文化を作ったのはロフトの平野悠さんだって言っても過言ではないと思うので。
ジョー:来年はロフトプラスワンがオープンして30周年って聞いたんですけど、ある意味、トークイベント文化が始まって30年って言ってもいいんじゃないかっていうくらいの存在だと思います。
津田:誰もそれに異論はないと思いますね。
ジョー:今回、来ていただけるかどうかは定かではないんですが、先日イベントでお会いした時に平野さんにもお声掛けしたんですよ。フェスの趣旨を説明したら「要するに伊豆で革命を起こすのか?」って言われて、思わず「はい!」と答えました(笑)。
津田:まぁ革命を起こすためのフェス……かな?(笑)
──なるほど(笑)。あと、寺尾紗穂さんがライブ&トークで出演されるという発表もありましたが、「論壇」と掲げているフェスでライブ演奏があるのもすごく面白いと思いました。その意図は?
ジョー:まず音楽も大事なメディアだと思いますし、そもそも僕はヒッピーカルチャーで育った人間なので、政治的なこと、社会的なことに声を上げる大切さを最初に教えてくれたのが音楽なんです。だから、こうした場に音楽があることが何も不自然ではなくて。それと今回、会場が元学校なので、校庭だった広場で焚き火ができる。焚火を囲んで音楽を聴きながら僕らも語り合いたいし、ミュージシャンの方にもいろんなことを語っていただきたいなと思ったんです。「音楽に政治を持ち込むな」っていう議論もずっとありますが、政治は生活ですから。そういう面では、音楽とともに社会や政治の問題が語られていくのが当たり前になってほしいですし、将来的にはこういうフェスにもっとミュージシャンの方々に出てもらいたい。海外ではこういうイベントにミュージシャンが入って登壇するシーンがたくさんあると思うけど日本ではまだそんなに多くないと思うので、こういう機会が増えていったらいいなという想いもあります。
津田:僕も音楽が入るのはすごくいいと思います。しかも、寺尾紗穂さんはシンガーソングライターとしても素晴らしいですし、同時に素晴らしいノンフィクションの書き手でもあるので、フェスの趣旨にピッタリの人選になりました。最近は政治や社会について発信するアーティストが日本でもたくさん出てきているので、いろんな意味で今後が楽しみですし、今回は「vol.0」として開催しますけど、次回以降もできるならもっといろんな人に出てもらえるようにしていきたいですね。このフェスが始まるきっかけになったフジロックのアトミック・カフェのトークも、政治や社会に関心を持ち、同時に音楽もかかわっていくという場なので。アトミック・カフェを主催している大久保青志さんや、フジロックを立ち上げたスマッシュの日高正博さんが切り開いてきたこうしたコンセプトを、ジョーさんや僕らの世代が受け継いでいきたいっていう想いはあります。
──先ほど、ここでしか見られない座組のセッションがあるというお話も伺いましたが、改めて今回のフェス見所を教えてください。
津田:4つのステージで同時にさまざまなテーマのセッションが開催されるので、自分は何に関心があるか考えて、どのセッションを見るか悩んでもらいたいなと思います。現地観覧チケットには配信チケットもついてくるので、現場で見られなかったセッションは後から配信で見られます。また、今まで知らなかった人やゆっくり話聞いたことなかった人とか、こんな面白い人がいるんだって発見できる、新しい人と出会う場所になってほしいですね。
ジョー:同じくです。それに、現地に来たら演者の皆さんとも接する機会もあると思います。演者の皆さんはずっとステージに出ずっぱりなわけじゃないから、会場内をうろうろしていることもあると思うので。もちろん運営としては安全面には配慮していますけど、会場内に出演者の方がいたらお話を聞いてみたり、疑問をぶつけてみたりすることもできると思います。
──トークイベントなどでも休憩中やイベント後に直接お話できたりしますが、こんなにたくさんの方に一気に会える機会はそうないですよね。
ジョー:顔を付き合わせたコミュニケーションってすごく大事だと思うんです。だから、「深掘TV」も「エアレボリューション」も配信の番組ですが、出演者やゲストはオンラインじゃなく、集まってトークをすることを大事にしていますし、たびたび有観客のトークイベントも開催してきました。もちろんオンラインでも十分にコンテンツとしての面白さは伝わるけど、直接会うとその人のオーラやエネルギーが伝わるので。宮台さんの言葉を借りれば、実際に会うことで「感染」していく。会場に来てもらえたら、さらに感染度が上がっていくと思いますし、それによって知るだけじゃなく、自分で何かをしたくなるとか、そうしたアクションにも繋がると思うんです。
──今のお話に繋がるとも思うんですが、改めてこのフェスを開催する意図、目的を教えてください。
津田:アメリカのフェスで『サウス・バイ・サウスウエスト』ってあるじゃないですか。あれは音楽、映画、ネット系のイキの良い「新人」のショーケースですが、『RONDAN FES』は独立系メディアと言論人の『サウス・バイ・サウスウエスト』。今、たくさんネットメディアがあるけれど、ショーケース的にそれぞれのメディアを知ることができるいい機会になると思います。また、それぞれに社会をよくしたいという共通の想いでメディアをやっていると思うので、そういう人たちが出会ってコラボしていくことにも意味があると思いますし。その空気感も含めてお客さんとも共有したいですね。
ジョー:本当に革命が始まる場所になるんじゃないかと思います。自分の番組でも何度か話しているんですが、今回のメディアの枠で出演する人たちのXのフォロワー数を足すと300万人をゆうに超えているんです。もちろんそれぞれかぶっている人も多いと思うので単純計算でカウントできませんが、かぶっていない人もたくさんいると思うので、合計するとそれなりの人数になるはずです。そうした小さくバラバラになっていた人たちが集まってひとつの方向に向かうことができたら、社会を変えるきっかけになるんじゃないかって思うんです。
近年、SEALDs以降はリベラルサイドの大きな動きってなかったですよね。あの時は学生たちが主導していましたが、今回はこうした独立系メディアの人たちが主導して、何かひとつの大きな動きにしていくきっかけにできたら……とも思っています。
あと、プログラム的な見どころでいうと、「なぜ『論壇』に女性が少ないのか」。これは、上野千鶴子さんと宮台真司さんが登壇します。フェミニズムの現在地を考えるという意味においても重要なセッションになると思いますし、上野さんと宮台さんの共演はみんな見たいんじゃないかなと。それに、斎藤幸平さんもたくさん登壇してくれます。今年の8月から1年間ドイツに行かれるそうなので、渡独前最後かはわかりませんが、生で見られるチャンスです。
津田:貴重だと思いますよ。
ジョー:「深堀TV」のレギュラー陣と斎藤幸平さんが登壇するスペシャルセッション「脱資本主義と加速主義」も決定していますし、斎藤幸平さん単体で登壇する特別講義、「Choose Life Project」とのコラボレーションもあります。それと、今回のフェス会場のそれぞれの場所に「ソクラテスステージ」「ルソーステージ」「アーレントステージ」「チョムスキーステージ」「マルクス広場」「野枝シス」というネーミングをしたのですが、斎藤幸平さんに思想家たちを挙げていただいて、運営サイドでそれぞれの場所に当てはめて名付けました(笑)。ちなみに「野枝シス」は伊藤野枝からとっています。
──ユニークだなと思いました(笑)。
ジョー:セッションの話に戻ると、初日(3日)の3限目(16:30~17:30)はすごい充実ぶりですよ。「斎藤幸平特別講義」、「これでいいのか日本の刑事司法」「日本は原発をやめられないのか?」「能登半島地震と災害日本」を同じ時間帯に4つのステージで行ないます。
──何を観るか迷っちゃいますね。
ジョー:テーマによっていろんなMCが入るのもすごく面白いと思います。これまでそれぞれのメディアで取り上げていたテーマでも、司会者が変わるとぜんぜん違う内容になると思うので。津田さんがアイデアを出してくれたんですが、「これでいいのか日本の刑事司法」というテーマで、ダースレイダーさんが司会というのも、きっとこのフェスじゃないと見れないんじゃないかな。あとは「『ほぼトラ』必至? 米大統領選のゆくえ」「戦後79年を考える」等々……僕がお客さんとして行く立場だとしてもすごく魅力的なプログラムだと思います。極めつけに、最終日の13:15からは田原さんと宮台さんが登壇するスペシャルトークもあります。