7月17日(水)にLOFT HEAVENで開催される『DREAM MATCH』、小林私と涼音(レトロリロン)の2人が登場する。レトロリロンの主催イベントを通して小林私の名前を知った者としては、この2人はそもそもどこで接点が生まれたのだろう...と不思議に思っていたところがあった。『DREAM MATCH』を前に今回行なった対談でその謎が解けた上に、何より弾みまくる2人の会話。対談が終了しても「まだまだ2〜3時間は話せますよ」と小林が笑顔を見せれば、「ツーマンの日には2人で喋る時間があっても良いかも」と提案する涼音。最初の出会いから4年、音を鳴らし続けてきた2人が今だから話せる話。そして音を鳴らし続けてきたからこそ実現できる、このツーマン。見逃すわけにはいかない。(Interview:高橋ちえ)
“小林私”っていう名前は聞いたことないな? っていう好奇心から(涼音)
──LOFT HEAVENの公演スケジュールに、今回の公演に向けて素晴らしい文章を寄せてくださってますね。
涼音:僕、「2019年のことなのでもう5年も前ですが」って書いてたんですけど。
小林:嘘つき! って思った(笑)。
涼音:見ながらメッチャ冷や汗が出ました、こういうコメントっていっつも小林私がふざけるのを、今回は涼音がボケたぞ! みたいに思ってる…はず(笑)。逆に(小林が)真面目に書いてくれてて。僕が間違えていたことをここで訂正させてもらいたいです。
──では、小林さんが書いておられる通りで2020年6月に行なわれたツーマンライブがお2人の最初の接点になるわけですが、それ以前は面識もなく?
小林:お互い初めまして、で、“誰やろう?”って。
涼音:本当だったら他にも出演者さんがいたんですよね、全6組ぐらいだったはずで。
小林:ブッキングをしてくださったのが共通の先輩のギタリストの方で、その方が呼んでくださって。
涼音:(その時の会場の)恵比寿天窓.switch(現在は閉店)っていうライブハウスに僕はソロで出てたんですけど、そこにスタッフとしていらっしゃった方で。
小林:当時は(コロナの)情勢的に全く分からない時で結局、無観客での開催っていうことになって。“いけるっしょ、お客さんいないなら!”っていう気持ちで出演することにしたんですけど、もう1人もそんな心持ち…だったのか?(笑)
涼音:僕はちょうどその年の6月にレトロリロンがスタートするんですけど、活動自粛っていうことに対してそこまで前向きではなかったと言うのか…できることをやろうと思ってた中で、無観客配信だとナメてたのかもしれないけど(笑)、ま、大丈夫でしょ! みたいな感じで。他の出演者さんもいると思ったんですけど…。
小林:僕らが大胆だった、それでいてセクシーだったっていうね。すみません、適当で(一同笑)。
涼音:あと、僕はソロが長かったんですけど“小林私っていう名前は聞いたことないな?”って思って(笑)、ちょっと会ってみたいかもなぁっていう好奇心も強かったんだと思います。
──遡って小林さんはその当時、ライブハウスへのご出演というのは?
小林:デビューはレトロリロンのスタートと同期で2020年6月になるんですけど、弾き語りアーティストには登竜門でありホーム、みたいなイメージの天窓には出られないようなインディーで。けっこう頑張らないと出られなかったし、ライブハウス自体も毎回、記念受験みたいな感じで出てたぐらいで。たまに八王子駅で路上ライブをしてます、みたいな感じだったのでライブハウス周りの人とは絡みがなかったです。たまたま2020年の春先にYouTubeがドカンと伸びて名前が出た、ぐらいのタイミングで。
涼音:僕らからしたらライブハウスが主戦場だったので、対バン相手が決まったら相手のことを調べるじゃないですか。(小林のことを)調べたらめっちゃフォロワーがいる、でも(ライブハウス)界隈にはいない(一同笑)。すっごい謎の人物が来ると思って、どんな人なんだろう? っていうワクワクと、ちょっと怖いもありましたけど。
小林:怖い、はお互い。ちゃんとやってきた人と一緒にやっていいんだろうか、みたいなのはありましたね。ネットでちょっとバズっただけのヤツがライブに出てきたら、“何じゃお前?”って普通に嫌いですよね(笑)。
──では実際にツーマンライブでライブを見て、その時の印象を聞きましょうか。
小林:大石昌良(オーイシマサヨシ)さんかと思いました、マジでギターが上手すぎて感動してましたね、歌も上手いし。歳が1個上でこんな!? って。当時、僕はギターもそんなに弾けないし、歌もまぁ、歌うのは好きですけど、ぐらいで。でもバズったからお客さんは呼べます、そこで頑張ろうみたいな戦い方で。終わった後、(涼音が)レモンサワーを飲んでたのは覚えてます(一同笑)。
涼音:逆に僕はソロの知名度も全然なくて、天窓にも新参者みたいな感じでライブのお客さんが0人の時もありましたしね。無観客配信で、(視聴者の)数字とかコメントをスクリーンで見られるようにしてくれてたんですけど、小林くんが先にライブしたらバババ〜ってもう、すっごい数のコメントが来てて。
小林:端的に言うと“荒らされてた”んですけどね(笑)。
涼音:僕は歌とかギターを頑張ってはいたけど、お客さんは呼べてなかった。でもこの人、メチャクチャお客さんいるじゃん!? 100人以上見てるよ、そもそも天窓にそんなにお客さん、入んないよ(一同笑)って。小林くんの後だったので、僕の出番になったら視聴数が2とかになるんじゃないかって、気が気じゃなかったですね。(小林は)コメントを拾って、がなるし(笑)、ライブ中に携帯触ってセットリスト確認してるしスゴ! みたいな。新しい世代が出てきたなと思って衝撃でしたね。(今まで)ステージで携帯いじってるのは小林くんしか見たことないです(笑)。あの時は新世代だと思ってたけど、今思うと、オンリーワンだったっていう。
小林:後ろを振り向いたら誰もいなかったってやつね(笑)。ライブ中に携帯触っちゃいけないってこともあんまり分かってないんで、それこそ爪切ったこととかもありますし。
涼音:ステージを家にできちゃうんですよね、見てるほうもリラックスできるんじゃないかなっていう。(ステージでの小林を見て)普通だったら“何だコイツ?”ってなると思うんですけど、ならないんですよね。ウケようとか、浅ましさもなくて(一同笑)。
小林:パフォーマンスでもないですからね。
涼音:一緒に大阪でライブした時かな、荷物の配送の時間指定を変更しなきゃ、ってやってた時もあったよね。でも誰も、嫌な気持ちにならないっていうのが不思議だなぁって思います。
──小林さんは涼音さんのギターにすごく感心されてますよね。
涼音:当時はバンドに負けるのが嫌すぎたし、ソロが軽く扱われる傾向にあった気がする…って、僕が勝手に思ってただけかもしれないけど。バンドと対バンしたら絶対に一番手とかオープニングアクト的にされることもしばしばだったので、最初っからぶち壊してやろうっていう反骨精神が。
小林:情熱のライブしてたもんな〜、赤道直下みたいな。
涼音:それアツすぎるでしょ(一同笑)。でもそのぐらいの気持ちで、1人でバンドができないかなと考えていた時に小林くんと対バンをしたので。そのちょっと前までだったらストロークだけでライブをしてたし。(小林も)スラップしたりもするし、ギタースタイルとかは似てると思うけど。
小林:本当ですか? できてるできてない、で雲泥の差はありますけど(笑)。
涼音:ソロの方(かた)ってストロークだけが多いけど、そこから頭一つ出たくて。お互い、そういうモチベーションっていうところでも似てると思うけどな?
小林:それこそ最初に会った時、堀胃あげは(黒子首/Gt&Vo)さんの話をしてたでしょう。僕もリスナーとかから聞いて(黒子首の)YouTubeを見始めてた頃に、涼音さんからもあげはさんの名前が出て。その話をメチャクチャ覚えてますね。
涼音:黒子首をやる前なのかな? あげはちゃんと天窓で対バンしたんですけど、弾き語りでちゃんと魅せることができててカッコ良いな、って話をしましたね。
小林:皆、バンド組んじゃったから置いてけぼりですよ。俺だけぼっち・ざ・ろっくですよ(一同笑)。
涼音:いや、だってバンドできないでしょ? 誰かと組んでそうなイメージがないもん。
小林:無理…ですね、団体行動が。1回やってみたんですけど、皆でリハに入るとかも向いてねーなって(笑)。サポートを入れてバンドみたいな今の形式になっちゃうんですけど、シンガーソングライター・ソロって、やっぱり軽んじられてるんじゃないかっていう思いは僕もあったんで。そんな中でソロ名義でやってるのにサポートを入れて「小林私バンド」でやるのは、バンドもソロも信じられてないなって思っちゃうところもあった。でもそもそも僕がバンドを操れる技量もなかったし、自分の中の方向性として違うなって思ったのはあって。
涼音:バンドね…今は仲良くやれてますけど、7〜8年というソロ時代の長さがあったので誰かと一緒にやるってことは頭の中にはあまりなかったし、(永山)タイキ(レトロリロン/Dr)が誘ってくれなかったら、今もソロをやってるか? それでどこかで働いてるかな? って思う。小林くんは、レトロリロンとはいろいろとやってくれるんですよ。小林くんの曲をレトロリロンが編曲させていただいて、レコーディングも一緒にやったりとか。
小林:涼音さんの監督力・ディレクター力がなければムズかったなって思ってます。
涼音:小林くんのスケジュールの中で時間オーバーしたらヤバいから、テキパキやらなきゃ(笑)って。
小林:普段1人なので、バンドのレコーディングを見たのは初めてだったから“楽器、うまー!”って。
涼音:皆を褒めてくれてましたね。
小林:あまりにも無力で、それしかやることがなかったんで(笑)。