危ないからやめようじゃなく、どうすればやれるかを考えてやってみればいい
──女だってモッシュすることを当たり前としろっていう。
YUKARI:そうそう。してもしなくてもいい。モッシュのいいとこは、倒れた人がいたら手を引っ張って起こすことで。転ぶのはしょうがない。でもガードはする。そういう思いやりがあれば成り立つんですよ。だからわたしは必ず前へ行く。
──リミエキやLess than TVは、お客さんと一緒にそういうモッシュを、そういうライブを作ってきたバンドでありレーベルですよ。
YUKARI:車椅子ユーザーの人も来て。車椅子で最前の真ん中にいるんですよ。もちろん楽しいからそこにいるのは前提として、わたしと同じようなアティチュードなんじゃないかな。誰もがモッシュの場にいていいってことを、自分自身が真ん中に行ってアピールしてるところもあるんじゃないかと。
谷ぐち:車椅子は最前列じゃないと見えないですしね。で、車椅子の人が前にいてモッシュが起きる場合、介助者がいるんですけど、やっぱガードしきれない場面もあって。でも、介助者だけじゃなく、近くにいるお客さんもガード役になってくれる。本当は前で暴れたいのに、必然的にガード役になってしまって楽しめてないんじゃないかって心配になって、顔を覗きこんでみたんです。そうしたら、その車椅子の当事者の人と顔を見合わせながらめちゃくちゃ盛り上がってて。これだよ! って感動しました。
YUKARI:尊いよね。
写真:小野由希子
写真:小野由希子
谷ぐち:この間、視覚障害(弱視)の友人がライブに来てくれて。なんと中学生! ライブハウスに来るのは初めて、モッシュを見るのも初めてで、えらく興奮していました。その日は見ていただけだったけど、もし自分もモッシュピットに入りたいって言ったらどうしよう? どうすれば実現できるだろう? って考えてて。
YUKARI:できるでしょ。手を繋いでモッシュしたっていいし。
谷ぐち:うん。できると思う。危ないからやめようじゃなく、もしもやりたいのなら、どうすればやれるか考えて、やってみればいいんですよ。今までもそうしてきた。作り上げてきたという自負はあります。だからこそ、モッシュが誰かを排除しているっていう意見には賛同しかねるし、それがSNS上で議論されることに違和感を感じます。
──それは現場でしかわからないことだしね。あ~、もう最後にこじつけるけど、やっぱリミエキの曲はライブの経験から出来ていくんだし、YUKARIちゃんの歌詞もライブで気づいたことが社会と繋がって、思いや意志となって歌詞になるんだろうね。
YUKARI:こじつけじゃなく、ホントにそうです。わたしがいろいろ考えるようになったのは、ライブハウスという現場があったからで。やっぱり東日本大震災と原発事故があって世の中変わったじゃないですか。自分のことだけじゃなくいろんなことに関心を持たなきゃいけない。関心をもって行動したり考えたり話したりしよう。そういうことにみんな気づき始めて、わたしも少しずつ気づいてきた部分があって。自分だけが良かったらいいってことはないっていう、当たり前のことかもしれないけど。その当たり前のことを、ライブハウスという場所でより実感した。自分が痴漢に遇って、他の人は嫌な思いをしてほしくないって凄く実感したんです。フェミニズム的なことに自分のアンテナは向いていったし、自分のことだからこそ、他の人、周りの人のことも考えるようになった。自分だけがいい思いをしたいなんて、全く思わなくなった。
──『Tell Your Story』に繋がるな~。
YUKARI:繋がってたら嬉しいし、ホントにそうだと思います。人に対しての思いがあるからこそ、自分の歌って唄えるのかなって。自分の歌だけで終わりたくないっていうか。投げっぱなしではなくなってきたと思うんですよ。