やっぱり私は、自分の音楽を聴いてもらいたい
──では、活動再開して今年5月に行なったライブを振り返ってみましょうか。
ヤマシタ:自分が思っていた以上に待ってくれている人がいたという実感が…(チケット先行予約の)応募の時点で予定枚数以上の応募数が来ていたし、行きたくても行けなかったっていう方も何人もいたし。満員が約束された状態でライブができるという状況に皆さんに持っていってもらえたことはとっても自信に繋がって、本当にありがたいなと思いました。
──ステージに立ってみていかがでしたか?
ヤマシタ:まず最初に、舞台に立てるって本当に嬉しい! と思いました。舞台に立ったら目の前から後ろまで顔がいっぱい見える混み具合で、こんなにたくさんの方が自分の音楽を待っててくれたんだ、ということへの感動がすごくて…“お客さんは今、何を考えながらライブを見ているのかな?”って考えて臆病になりながら舞台に立つことが今までとても多かったんですけど、これまでバンドをやってきた中で上位に入るぐらい自信を持って“自分の音楽を聴きに来てくれてありがとう!”って言える、自分でも前を向くことができた良い公演だったと思ってます。
──そもそもステージに立つこと自体、勇気が要ることでしたでしょう。
ヤマシタ:もはや(ライブが)どういう感じだったとかどういうふうに人が見えていたとかもすっかり忘れちゃってて、想像もできないぐらいでした(笑)。でも実際に立ってみたら何年経っても自転車に乗れるような感じで(笑)、身体が思い出すことってできるんですよね。ライブ最後のMCで“同世代のバンドの音を聴いて悔しかった”って、今まで隠していたちょっとダサいぐらいの本音を、待っててくれた方々に言えたことに(自分の)変化も感じました。前はもうちょっとオブラートに包んだり遠回しな言い方をしてたけど、心の中の恥ずかしい部分をそのままちゃんと言えたのも大きかったなと思ってます。
──9月3日(日)には主催イベントを開催しますね。こうしたイベントをやろうと思われたのは?
ヤマシタ:夢の一つだったんです。いろんなバンドを呼んで、新宿ロフトのホールとバーを往来して自分のイベントを作るということが。ずーっと、いいなぁって思ってて(笑)、でも今まではいろんな人にいろんなことを言われたりするのも嫌だし、そもそも“やりたい”って言えなかったりんです。けど、自分一人で活動を再開してからは、自分がやりたいと思ったことをちゃんとやりたいって言おう、って思うようになって。そんなタイミングでちょうどライブのブッキングでロフトからご連絡をいただいたときに“実はイベントをやってみたいんです”って勇気を出して言ってみたら、“ぜひやりましょう!”って言ってくださって。本当に嬉しくてこの日に向けての準備もすごく楽しいですし、今はもう楽しみでしかないです。たくさんの方に来て欲しいけど、まずはこういう公演を“やりたい”って言えたこと、“やりたい”と言ったことに対して出演してくれるバンドのみんなやたくさんの人が助けてくれたことが、今の自分にとっては大事で嬉しいことですね。
──“すてきなひとりぼっち”とタイトルにつけたこの日のイベントも楽しみですし、これからの活動を心から楽しみにしていますね。
ヤマシタ:ありがとうございます。やっぱり私は、自分の音楽を聴いてもらいたい…って思っているんですけど、でもライブに来ることへのハードルが高いっていうのもまだあると思うんです。(活動休止前も)“音源は聴くけど”みたいな人がたくさんいたことも肌で感じていたから、配信でリリースを続けていくことも準備をしていて、その先にはちゃんと手に取ることができる形で作品を出すことも考えています。その上で、その音源を聴いてもらえるためにまたイベントをやろうかとか…サポートメンバーに申し訳ないなと思いながらも、“こういうふうにやりたい”って言ったことに対して“本当にやりたいんだったら一緒にやろうよ”って言ってくれる人ばかりなので、今後のいろいろなことに関して少しずつ準備が進んでいる感じです。基本的には一人で(ライブ等の)出演依頼のメールの返信からグッズの発注まで全部やってるんですけど、それは会社勤めをしていたときのことが役立っているなぁって、良い選択をしたなと思ったりしてます(笑)。
──前向きなお話を嬉しく聞かせていただきました。最後に「ひかりのなかに」としてこれから掴みたい夢って何でしょうか?
ヤマシタ:自分の今の状況ではまだたくさんの人を巻き込めていないから、活動休止する前の最後にワンマンライブをした渋谷クアトロは今、私一人でお客さんを埋めることはできない。当時、コロナ禍だったとしてもきちんと成功できたっていうのがあるし、クアトロと同じぐらいの大きさの場所でも“「ひかりのなかに」を見たいよ”って足を運んでくれる人たちをまずは一人ずつ、一人ずつ、お客さん・リスナーを掴んでいって地道にがんばるということだけです。実は今もまだ(活動を)止めなければ良かったと思ってしまうときが正直、あって。活動休止しないで音楽を続けていれば良かったと思わなくなるようになるのが、今の目標ですね。