サッカー漫画の金字塔『シュート!』の新しい世代を描いくオリジナルアニメ『シュート!Goal to the Future』。新生掛川高校サッカー部たちの姿をOP主題歌として彩っている『アオレイド』。作品に超えられた思い・ドラマを詰め込んだ歌詞・楽曲はどのように作られているのか歌唱とともに作詞も手掛けた宮川愛李に本作に込めた想いを伺いました。
[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]
――原作『シュート!』は2003年に完結した作品ですがご存知でしたか。
宮川愛李:作品名は存じ上げていました。OP主題歌を担当させていただくことにな
り読ませていただきました。私はテニス部だったのでサッカーはそれほど馴染みがなかったのですが、サッカーをより深く知るきっかけにもなりました。テニスとサッカーでは競技は違いますが、スポーツの面で通じる部分があります。努力しても壁にぶつかってしまう悔しさやそれを乗り越えたときの気持ち良さを臨場感持って楽しめるリアルな作品だなと感じました。
――青春ものとして楽しむだけでなくスポ根の部分にも共感されたから、『アオレイド』の歌詞も挫折して立ち上がるといったスポ根要素の入ったものになっていたんですね。
宮川:そこは意識した部分です。私は作詞する際、物語を自分に投影して、自分だったらどうする・どう感じるかを引き出して書いています。『シュート!』の持つスポ根要素、根性で乗り切っていくという思いが聴いてくださる皆さんに届いてくれたらなと思いながら書かせていただきました。
――作詞としてクレジットされているaireen(アイリーン)は宮川さんを含んだ楽曲制作チームですが、今作の作詞は宮川さん自身が担当されたのですか。
宮川:はい。作詞は私が担当させていただきました。
――スポ根要素のある歌詞だったので、『シュート!』世代の男性方が主導されたのかなと思っていました。
宮川:そういう推測があったんですね(笑)。私の想いを全て乗せた歌詞になります。
――タイトルの『アオレイド』も宮川さんがつけたものなのですか。
宮川:はい。「アオ」は私がサッカーに持っている、青空の下で芝生の上を走っていくイメージからで
「アオ」を入れました。「レイド」は突然始まる戦いレイドバトルのイメージが、サッカーのキックオフ・試合が始まるイメージに結びついたの『アオレイド』となりました。
――まさにサッカーのイメージからつけたタイトルなんですね。
宮川:はい。
――学生時代はテニスをされていたということで、サッカーのもつチームスポーツのところやフィールドを駆け回るスピード感など違った部分もありますが、サッカーのイメージをどう掴んで歌詞に落とし込んでいたのでしょうか。
宮川:私の通っていた中学校は全校生徒でも8人しかいない小さな学校で、テニス部も5人と本来は廃部の危機になるくらいのところだったんです。なので、テニスもシングルしか経験がなく、チームスポーツの世界は良い意味で夢物語の面もありました。
――それでは、なおのことチームスポーツのイメージを持つのは難しそうですが。
宮川:今アーティスト活動させていただいていること、aireenというチーム
、沢山の人がかかわってくださっていることはスポーツではなくてもチームという点で共通していると思っています。普段の活動から感じている仲間がいることの素晴らしさ・ありがたさを『シュート!Goal to the Future(以下、シュート!G t F)』の世界観に投影して歌詞にしていきました。
――確かに、チームで目標に向かってというのはスポーツだけの話ではないですね、しかも、宮川さんは廃部の危機も経験されている。まさに新生掛川高校サッカー部の状況を違った形で経験されている部分もあるんですね。
宮川:意識していないなかで反映されていた部分があったのかもしれないですね(笑)。昔の想いとかも含まれているのかもしれません。
――私は『シュート!G t F』はもちろんサッカーということでスポーツドラマですが、同時に人間ドラマが強い作品だなとも感じています。
宮川:私もその点は強く感じています。中高生のころは感情が尖ったり丸くなったり形が様々に変わる時期で、生活の中で受けるいろいろな刺激から感情を抑えきれないみたいなことがあります。サッカーも試合で白熱してくるとそういう感情の爆発が起こるんじゃないかなと思っています。私の通っていた高校にもサッカー部があり、みんな全力で喜び・怒っていました。それを見てサッカーは感情を素直に表現しているスポーツだなと思っていました。それは一種の芸術のようなもので、色々な感情が渦巻いて完成するスポーツだなと感じていました。そういった引き出される感情や想いみたいなものは当時から気になっていたので、『シュート!』を通してその一端に触れられるのは嬉しいです。
――そこはアーティスト活動に通じるところはありますよね。
宮川:そうですね。
――『アオレイド』のような作品に紐づいての楽曲制作と通常の楽曲制作とは変わってくる部分はあるのでしょうか。
宮川:その時々で違いますが、今回は通常の楽曲制作と変わらない形で進めています。タイアップのある作品の場合、原作を知って私ならどうするだろうと自己投影することが大事だと思っています。何も隠さないで素直に出すことができるのは今だからできることだと思っているので、作品を読んで・観て出せるものはそのまま素直に出せるようにしています。
――高校生の青春ということを考えるとストレートであることが魅力ですから、そういった作品世界ともあっていると思います。
宮川:そうですね。
――かなりテンポの速い曲ですが、これだけ思いを詰め込んだ歌詞を歌い上げるのは大変ではなかったですか。
宮川:大変です(笑)。伝えたいことが多すぎるのが今の私の悩みです。言葉がいっぱいの歌詞になって、話しているみたいな歌になってしまうのですが、それも私の表現方法かなと思っています。音としても楽しんで欲しいし、物語としても私の楽曲を楽しんでいただきたいという両方の気持ちがあるので、抑えきれない想いがあるのであれば練習と気合で全て出せるようにやっています。
――まさにスポ根ですね。
宮川:確かに、そうですね(笑)。