サッカー漫画の金字塔『シュート!』のその後の物語を描いたオリジナル作品『シュート!Goal to the Future』。人間ドラマを濃く描いた本作の新しい物語はどう紡がれているのか。辻英人を演じる小林千晃と黒川昴流を演じる土岐隼一に今作に込めた思いを聞いた。
[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]
リアルなドラマが描かれているなと感じました
――漫画『シュート!』は20年近くが経っている作品なので、今オリジナルストーリーでアニメ化とことにビックリしました。
土岐隼一:そうですよね。
――お二人ともオーディションの前に漫画『シュート!』を読まれたとのことですが、原作を読まれていかがでしたか。
土岐:原作は世代の作品ではないですが、僕のおばあちゃんがやっている洋食家にあって読んでいたました。僕が子供の時にはサッカーはプロが定着していて、サッカー漫画は沢山ありましたが代表的なサッカー漫画の1つでした。『シュート!』は弱いチームが勝ちあがっていく、高みへ登っていくという作品で、自分もこうなりたいと思わせてくれる要素が一杯ある作品でした。
小林千晃:『シュート!』は主人公にスポットが当たるのではなく、チーム全体に焦点が当たる作品ですよね。
土岐:自分もこのチームの一員になりたいと思わせてくれる身近な憧れを抱かせてくれますね。
小林:僕はサッカー漫画の金字塔ということで『シュート!』を知ってはいましたけが、オーディションに臨ませていただくにあたって改めて読ませていただきました。最初に読んだときはヒロインの遠藤一美ちゃんが主人公の田仲俊彦を支えている姿が印象的でした。あとは俊彦が尊敬していた久保嘉晴が病気で亡くなって、チームの支柱を失い精神的にズタズタになって負けてしまうなど、リアルなドラマが描かれているなと感じました。
――おっしゃる通りドラマ性の強い作品ですね。
小林:強いですね。久保の死を糧にさらに強くなって勝つと思ったら、ボコボコにされますから。いい意味で裏切ってくる、でも押さえるところは押さえられている、次の展開が読めない作品でした。
――『シュート!Goal to the Future(以下、シュート!G t F)』でもそのドラマ性の強さは引き継がれていました。
土岐:挫折した主人公と空中分解しているチームが一致団結してゼロから立ち上がるぜというのは、最近はあまりない泥臭い作品ですよね。
小林:新しい部分はもちろんありますが、原作の持っている熱さは変わらずあると僕たちも感じています。
――中村憲由監督とはアフレコに入るにあたり、どのようなお話しされましたか。
小林:中村監督は「『シュート!』を今まで見ていた人だけじゃなく、原作を知らない人たちを含む幅広い人たちに観てほしいという思いが強く込められています。」とおっしゃられていました。同時に「ただがむしゃらに頑張って立て直していくというだけではない魅力を描きたい。」と『シュート!』の続編ではあるけどリメイクではないということを言われていました。
土岐:『シュート!』のエッセンスはありますけど、今の時代の要素がふんだんに入っています。役者陣もその気持ちを汲んでアフレコに臨んでいます。
小林:人間ドラマの魅力を強く描いている作品なのでその部分を楽しんでいただけると嬉しいです。
土岐:サッカーはチームメイトだけで11人、相手チームも入れると倍いるので、どこをフォーカスして、どうキャラクターを魅せればいいんだろうというのは難しいことだと思います。スタッフのみなさんによって、いろんな描写やシチュエーションでドラマが描かれているのでそこに注目していただきたいです。
気持ちよく伝わるだろうということを常に話はしています
――サッカーを描くということはある面では群像劇にもなるのでみなさんの掛け合いも大事になってきますが、どういった点に気を付けてアフレコに臨まれているのでしょうか。
小林:まだコロナ禍なので多人数でアフレコができないのですが、掛け合いが多いキャラクターは同じ時間帯にアフレコできるようにしていただけてます。同じ時間でアフレコができない方も事前に録っているものを聞かせていただいているので、不自由が出ないように制作の皆さんに頑張っていただけてます。
土岐:演技の部分では、リアルなことを言うと試合中に「誰々にパスしろ」とならないじゃないですか。
――確かにそうですね。
土岐:サッカーでは短・中距離を走しる無酸素運動なので、実際の呼吸はそこまで激しく出ないんです。でも、サッカーに詳しくない人にも状況が伝わるようにしないといけないので、そういう演出面の部分はどうすれば物語のリアリティラインが低くならずに表現できるかのすり合わせは毎回スタッフ・役者のみんなで話し合っています。その際にどういうシチュエーションなのかも共有しているので、それをもとにして臨んでいます。
小林:『シュート!G t F』がどうすれば良くなるだろう、どうすれば観てくれるかたに気持ちよく伝わるだろうということを常に話はしています。みんなが見ている方向は同じなので、相乗効果でより熱量を込めてやれているなと思っています。
――掛川高校サッカー部を体現されているんですね。最初からそういった空気感を持てていたのですか、何かきっかけがあったのでしょうか。
土岐:それは小野さんが役者たちとスタッフたちとの懸け橋になってくださったおかげです。疑問が出たときは毎回ちゃんと話し合える空気を最初に作っていただけました。例えば「原作から考えると、ここはこういう言い回しをしませんか。」とこちらから提案したり、「物語を考えて、あえてこういう表現にいるんですよ。」とスタッフのみなさんとやり取りして進めています。
小林:お互いを尊重していく中で出来た環境ですね。そのほかにもルールを参照するとこの位置にいたら反則になっておかしいとか、この線をボールが超えても大丈夫なのか。本当に細かいところまで話し合うことがでています。
――素晴らしいチームで『シュート!G t F』は作られているんですね。主人公が挫折してサッカーから離れていたり、チームがギクシャクしているところから始まるので、演じているみなさんがそういった部分を受けて精神的にダウナーになってしまうところもあるのかなとも思っていたので。
小林:みんなでこの作品をより高いゴールに持って行ければという気持ちが強かったのでそれはなかったです。
――それだけスタッフさんたちとの距離も近いというのは素晴らしいですね。そこも最初からそういうチームだったのですか。
土岐:小野さんはすべてのことに対して全力でぶつかっていける方で、少しでも不透明な部分があると、みんなにわかるように言語化してくださり整理してくれました。そのおかげで全員が同じイメージの中で作品に臨むことができています。
小林:一番先輩の小野さんが先頭に立っていろんなことを代弁してくれるのは凄くありがたかったです。
――気持ちの中にあったとしても言語化して伝えるのは難しいですから、それを率先してやっていただける方がいるのはありがたいですね。
小林:小野さんは本当にストライクの世代で漫画を隅々まで読んでいるので、原作ファンとしても、役者としても、両方の面で作品を支えていただけています。それ受けて役者もスタッフもさらに熱量が強く『シュート!G t F』に向かい合えています。