自分には歌しかないと感じることが増えた
──でしょうね。ところで『L.U.V』というアルバムタイトルはラヴェンダーズにも通ずる表記ですが、意味としては「分断の時代こそ“愛”を」といったところでしょうか。
AKIRA:自分の中で“L.U.V”がキーワードみたいになってて、“LOVE”だと照れくさくて圧がすごいけど、スラングの“L.U.V”だったら言いやすいみたいな。それって日本語で言うのは照れくさいけど英語だったら言えるっていう私の感覚と一緒なんです。「やっぱり愛だぜ」とか言われると、うわ、さぶ…ってなっちゃうので(笑)。だけど“L.U.V”なら語呂も響きもいいってことで、タイトルにどうですか? と提案されたんです。
──プロデューサーに?
KOZZY:提案したのは川戸(A&Rの川戸良徳)だね。
川戸:「恋のヴァレンタインビート」の歌詞に出てくる言葉だし、もちろん“Luv-Enders”というバンド名にもつながるし、タイトルとしていいなと考えていたんです。それにDISC-2のクリスマスソングも“L.U.V”に通ずる部分があると思ったし、全体のコンセプトからもズレないかなと。
AKIRA:“LOVE”だと「それも分かるんだけど…」みたいな感じでトゥーマッチすぎるし、カリフォルニアの緩い空気も含めて“L.U.V”がぴったりだなと思って。「Remember Me to Myself」に「そのままでいい」という歌詞がありますけど、「変わらなくていいよ」みたいなことを唄うのも実は恥ずかしいんですよ。それで“Stay as the way you want”って英語の歌詞を使ってるんですけど、日本語で言うのがくさければ英語で言えばいいじゃんと思ったし、英語なら自分が本当に言いたいことが言えたのでいいチョイスができましたね。
──“ウィズ・ザ・ロックスヴィル”名義のソロ・ユニットは今後も続いていく予定なんですか。
AKIRA:そのつもりです。ラヴェンダーズで見せていた側面とは違う部分を出せる面白さが“ウィズ・ザ・ロックスヴィル”にはあるので、今後も両立させていきたいですね。
──『L.U.V』に収録された曲はお世辞抜きでどれも良い出来だし、願わくばそれをライブで体感したいものですが、コロナもまだ予断を許さぬ状況ですしね。
KOZZY:AKIRAみたいに若い世代がこのコロナ禍によって失った時間は計り知れないものだし、この2年の世界の流れによってラヴェンダーズとは違う表現になってしまったかもしれないけど、こればかりは誰もが皆変わらざるを得なかったわけだからね。僕らもそうだけど、若い世代は特にそこで上手く順応していくしかないし、音楽をやる人たちはこの先の流れを読みながら行動していくのが大事だよね。
──そういうことをKOZZYさんがAKIRAさんを始めとする後進たちに向けてプロデューサーとして背中で教えている、『L.U.V』はそれを象徴したアルバムなのかもしれませんね。
KOZZY:まあやっぱり、僕もこの歳になると若者たちの救済に奔走しないといけないのかな? って思うし(笑)、じゃないとけっこう大事なものが抜け落ちてしまう気もするしさ。具体的に何ができるかはまだ分からないけどね。
──AKIRAさんはこのコロナ禍を経て、歌と向き合う姿勢に変化はありましたか。たとえば一生唄っていこうという気持ちが定まった…と言うとくさいのかもしれませんが(笑)。
AKIRA:でもその気持ちはありますよ。ラヴェンダーズのセカンドを出してからもう3年、23歳だったのが26歳になっちゃって、このスタジオにずっといながらいろんな作業をする中で唄っていきたいと思うことがすごく増えました。最初は楽しいことばかりじゃなかったし、プロデューサーのしごきもあったけど(笑)。でも今は唄うことに楽しさをやっと感じるようになって、自分にはこれが合ってるんだと素直に思えるようにもなったんです。そういう部分でも良い意味で変われた2年間だったと思います。どれだけ忙しくても唄ってる時間、何か作ってる時間が好きだし、いろんな制約がある中でもその時間はこれからも大切にしていきたいですね。