どんなに土に還りたくなっても、わたしはまたヒカリを探してしまう
──「ヒカリ」で、"悔しい日々はいつか力になると願っても消えて無くなりたい"と思いながらも、自分に火をつけて走り続けられる原動力はなんですか?
ナギサワ:いい音楽を聴くたびに、「好きな人たちと音楽で仕事がしたい」って思うことです。でも、ずっと音楽がやりたいって思って走り続けているのに、急に自分への劣等感で落ち込むんですよ。もう土に還りたい…って。なのに土にもぐっても、またいろんな人のインスパイアを受けて成長したい気持ちが芽生えてしまう。そこから芽がはえてきて、花を咲かせたくなって太陽のほうを向いちゃう。どんなに土に還りたくなっても、わたしはまたヒカリを探してしまうんですよ。その矛盾と戦っている気持ちがいちばんあわられている曲だと思います。
──土にもぐってそのままぬけだせなくなってしまうときはないですか。
ナギサワ:ありますね…(笑)。それこそ今年の4月もそうだったんです。ずっと干からびて3週間くらい立ち直れなくて。ライブをしていても手応えを感じられない。自分はなにをしているんだろうって悲しかった。今までだったらいろんな音楽を聴いて立ち直ってたのにそれでもできない。こんなこと言いたくないけど、人って心底病んでいるときは音楽も聴けないんですよね。
──すごくよくわかります、音楽も聴けないし本も読めないし、アウトプットはもちろんインプットができなくなってしまう。よくそのなかでライブを続けられましたね。
ナギサワ:ブッキングで入っていたので、ほんとうに失礼だけどライブハウスに向かう足も重たかったんです。そのことに自分自身が気づいたときに、わたしは終わったって思いました。もう涙も出てこなかった。でも、ギターを弾いて「ヒカリ」を唄ったら、めっちゃいい曲だなって思ったんです。そしたら、あ、わたしまだ走れるって気持ちになった。あれだけ足が重かったライブが、ライブをやって息できるようになったんです。あの日は、この曲を作って本当に良かったって思いました。
──「ヒカリ」は作品自体がもちろん素晴らしいんですけど、ナギサワさんのこの雰囲気でこの声量で唄うからこそ余計に力が生まれる楽曲だと思います。
ナギサワ:ああ、ほんとうに活動してて良かったです…。よく演者さん同士が対バンで曲をカバーしあうじゃないですか?わたし全くカバーされたことがないんですよ。わたしの曲って良くないのかなって不安になったりします。なのに、「曲がすごくよかった」って言われると、曲がよくてもわたしである必要はないよなって思っちゃうときもあって。自分の作品なのにね。情緒がブランコなんですよ(笑)。
──「ブッ×××!」の、"いっぱい傷ついて ここまで来たのよ あなたは知らないでしょうけど"は実話からのエピソードとお聞きしたんですけど、ナギサワさんの歌詞はこうしてお話しをしたときの明るいイメージとまた違う一面がみられますよね。
ナギサワ:歌詞はだいたいは実体験です。って言うと、まわりの人に「え?」って思われちゃう歌詞もあるけど、全部が今のことではなくて詩のストックから昔の気持ちと今の気持ちをまぜているので…人はそうやって成長していくものなので許してくださいって感じです(笑)。でもわたし、いくら「チッ」って思って舌打ちしたい気分のときでも人に会うと嬉しくなっちゃって、イエ〜イ!! ってなっちゃうんです! 自然に切り替わっちゃうのかな。この曲を作った当時シェアハウスに住んでいたんですけど、ゴミを捨てる捨てない問題でルームメイトともめて曲になりました。怒った当日は、「許さねぇ、絶対歌にしてやるからな」って思って唄った記憶があります。(笑)特にこの曲のMVって、男性と女性ですごく意見がわかれるんですよ。女性からの共感がすごくて、長文のお手紙をもらったりもしました。男性はまぁそういうこともあるよね、って。軽やかで明るいコードで重い内容を唄っているので、よく聴いてみたら「え?!」と思ってくれたらわたしの思惑通りです(笑)。
──いよいよ念願のロフト全店舗ツアーが始まりますけど、意気込みはいかがですか。
ナギサワ:今まで自分がお客さん側で見ていたライブハウスに自分が立つのは不思議な感じです。今も、インタビューでこうしてロフトプラスワンに座って話しているのは不思議な気持ち。アーティストだったら堂々としろって思われるかもしれないけど、わたしはファンだった気持ちを忘れたくないんです。「自分はここに立ちたい」って憧れだった気持ちをちゃんと残したまま活動をするのが、自分のなかの大切な気持ちなんだと思います。その気持ちを大切にツアーをまわりたいです!