音楽は必ず生きながらえるものだと信じてる
──「くたばるにはまだ少し 少し早すぎる」という「燃え尽きる'75」の歌詞の通りですね。自粛期間中にアルバム制作に打ち込んだり、森山さんのソロ作の手伝いをしたり、この状況を逆手に取って今しかできないことをポジティブにやり続けているのがコージーさんらしいですよね。
K:もうそれしかないからね。今は本当にこういうことをするべきか? を真剣に考えるべきだし、そういう時間にはなってるね。自分自身の在り方を考えてみたり、人として人に必要とされているんだったら自分の立ってる場所を絶対に守らなくちゃいけないと強く思ったしさ。自分のできること、しなきゃいけないことをすごく考えたし、コロナ禍が落ち着いたら若い奴らのフォローに回りたいんだよね。今の自分があるのは若いときに助けてもらった諸先輩方のおかげだから。まあ乱暴な人たちばかりだったけど(笑)、その導きがあって今がある。いい例も悪い例もたくさん見てきたし、そこは若い連中に引き継ぐべきっていうか。ロックンロールでも何でも若い奴らがやらないと何の意味もないからね。もちろん店と一緒で老舗の存在も必要だけど、僕らが先人から受け継いだものを若い奴らに渡していかないと今の少子化と同じで死に絶えてしまう。それはロックンロールに限らず音楽全体に言えることだけどね。日本はまだロックンロールが生き残ってるほうだけど、海外じゃロックをやってるのが珍しいんだから。ロックフェスティバルと言いながらロックバンドが出てない状況だし、ギターを抱えたバンドが1組しか出てないなんてザラでしょ? まあそれはロックの形、音楽の形が変わりつつあるってことなんだけど、日本にはまだロックが形として残ってるほうだし、ロック魂を持って大舞台に立つ若い奴らもいる。そいつらが面白いことをやってくれないかなといつも思ってるし、そこでシーンの底上げとか僕にもできることがあるんじゃないかと思ってる。何が何でも「俺が俺が」の時期は過ぎて、若い奴らのケツを叩きながらいろんなアドバイスができる時が来たと自分では感じてるんだけどね。
──闘魂伝承のタイミングが来たということですね。
K:いつまでも年寄りが君臨してるのもどうかと思うし、僕だってもっと新しいレコードを聴きたいからね。どんどん新たな才能が出てくれば嬉しいし。でもそのための体制がまだできてないし、どんな世界でも後が育たないのは不幸なことだよ。それは若い奴らのせいだけじゃなく、席を譲らない年寄りのせいでもあるだろうし、いい先生がいないってことでもあるだろうし。その意味でも『MACKS ALIVE -Strange Weekend-』みたいな作品を出して、ロックンロールってこんなにいいものなんだよっていうのを感じ取ってもらいたいよね。何も僕らと同じようなことをやれってことじゃなくて、これが何かのアイディアにでもなればいいなと思う。若い世代が失ったコロナ禍による1、2年の損失は計り知れないはずだから、余計に彼らの力になりたいと思うよね。
──年内もスタジオワークに特化することになりそうですか。
K:だろうね。まだしばらくは安全にライブをやれそうもないし、お客さんやメンバー、スタッフのことを考えると慎重にならざるを得ないから。そんなモタモタした活動をしてたら忘れられちゃうよとか言われそうだけど、マックショウがその程度のことで忘れられることはないしね。
──『MACKS ALIVE -Strange Weekend-』に収録された不滅の名曲の数々がある限り、バンドの存在が風化することは決してないでしょうね。
K:いま音楽をやってる人には僕らが考えてるようなことを頭の片隅に置きながら活動してほしいっていうかさ。この段階でやるべきことっていうのがあるし、今はまだそういう段階じゃないっていう見極めが大事なんだよ。そうやって音楽にだって社会的にできることがあるんだから。音楽には人の気持ちを豊かにしたり、心を強くしたりする役目があって、それは目に見えないものだから国から補償もしてもらえないけど(笑)、今後は目に見えない音楽の力が大切なものになっていくんじゃないかな。ロックンロールは何十年ものあいだ数々のトラブルを乗り越えてきたし、音楽は必ず生きながらえるものだと僕は信じてるからね。
──あえなく中止になってしまったキネマ倶楽部のリベンジをいつかぜひ果たしていただきたいですね。
K:来年の昭和の日ももちろん押さえてあるから(笑)。今年が昭和96年でそろそろ昭和100年が見えてきたし、あとちょっと辛抱したらこの状況を巻き返して昭和100年祭りをぜひやりたいよね。