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INTERVIEW

トップインタビューTHE MACKSHOW - 激動の時代を生き抜く"不滅のロックンロール"ここにあり! 昭和96年度版永久未成年応援週末ソング集に見る粋なスタンスと揺るぎない矜持

激動の時代を生き抜く“不滅のロックンロール”ここにあり!
昭和96年度版永久未成年応援週末ソング集に見る粋なスタンスと揺るぎない矜持

2021.06.04

4人組のバンドに憧れはあるけど自分じゃできない

──その意味でも今回の『MACKS ALIVE -Strange Weekend-』は、震災の年の夏に発表された『ロックンロール・スルー・ザ・ナイト~真夜中を突っ走れ!~』の系譜を継ぐ作品と言えそうですね。

K:そうなんだろうね。「ロックンロール・スルー・ザ・ナイト」はロックンロールで蹴飛ばしていこうぜみたいな歌だったけど、今は飛ばすに飛ばせない状況だから。「ストレンジ・ウイークエンド」はその飛ばせない気持ちを歌にしたかったというか。

──こんな時代だからこそ社会性のあるメッセージや心情を歌にしやすいのかもしれませんが、こんな時代でも変わらず「ハートしびれて」のようにたわいのないポップソングを見事に書き連ねるコージーさんの職人気質にこそ感服してしまうんですよね。

K:「ハートしびれて」は1曲楽しめるやつを入れたくてね。それが僕らの役目だと思うし。

──こういういかにもシングルのB面にありそうな曲って意外と書くのが難しいのでは?

K:僕はそういう曲が好きなんだよ。これは絶対メインじゃないよな、みたいなさ(笑)。でもそれが結構良かったりする。シングルによってはB面のほうが好きだったりもするし。もちろんA面の曲がいいのはごもっともなんだけど、B面のあの曲がまたなんとも言えずにいいんだよねえ、みたいなシングルがあって、そういう曲を作ろうと思って作ったのが「ハートしびれて」なんだよね。

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──プロデューサー兼A&Rの川戸さんに言われてなるほどと思ったんですけど、「ストレンジ・ウイークエンド」はクラッシュ、「ハートしびれて」はビートルズ、「ロンサム・カーボーイ」はキャロルなんですよね、身も蓋もない言い方をすれば(笑)。でもそれはマックショウの不可欠な三大要素だし、これからマックショウを聴こうとする人はまずこの新曲3曲を聴けばおよその全貌を掴めると思うんですよね。

K:マックショウからクラッシュを連想することはあまりないかもしれないけど、僕はクラッシュがアイドル的にずっと好きでね。ビートルズとキャロルとクラッシュは今もずっと同じように好きで、同じようにそれぞれのアルバム・ジャケットを見てしびれてさ。それはモッズも含めてね。音楽的なジャンルがどうこうはあまり考えなくて、若い頃からどのバンドもジャケットを見ては「格好いいなあ…」と純粋に思ってた。

──ビートルズとキャロルとクラッシュ、それにモッズはなぜこんなに飽きがこないのでしょう?

K:何でだろう? 今もずーっと聴いてるからね。いまだにレコードも買い続けてるし。

──その決して飽きない何かを突き詰めるためにマックショウを20年近くやり続けているところがあるのかもしれませんね。

K:そうかもしれない。ただ、若い頃からそういうバンドに憧れて、メンバーを4人集めてバンドをやろうっていうのが僕にはできないんだよ。

──ああ、最初にデビューしたローリーこそ4人組でしたけど、その後のバンドは…。

K:まあ1人足りない3人でもいいか、何なら7人でもいいや、っていう(笑)。

──憧れるバンドは4人でも、自身でやるバンドは3人なり7人という奇数なのが面白いですね。フルマックも5人でしたし。

K:たとえば同じ4人でやるならモッズより格好悪くちゃいけないっていうか。もし4人でマックショウをやるならビートルズより劣っちゃいけない。もちろん劣るんだけど、同じ4人でやる以上はどこかで爪痕を残さなきゃいけない。でもその戦いには挑まない、同じ土俵には上がらないんだよ。そこは自信のなさの表れなんだろうね。ただもう少し違う視点で自分のやりたいことをやりたい、そこにとらわれるのがちょっとイヤだなっていうのがあって今に至る感じかな。

──新曲もさることながらライブテイクもまた秀逸な選曲と構成なのですが、収録された11曲はどれも週末に行なわれたライブからの音源だそうですね。

K:「ストレンジ・ウイークエンド」という曲にかけてね。お客さんにとってライブは一つの体験というかさ。リーゼントにして革ジャンをバリっとキメて家を出る、ライブの前にどこかの店で仲間と飲みながらロックンロール談義をしてからライブを観て、いやー、良かったねえ! とまた飲みに行って、電話でカミさんに叱られながら家に帰るみたいな(笑)。今はそういう週末の一つの体験ができない状況だからこそライブ音源を入れたかったし、お客さんの声がなるだけ入ってるテイクを選んでみた。

踊って聴けるけど元気の出るフレーズがある曲がいい

──これらのライブテイクもまた新曲同様、聴き手を励ますような歌詞がまぶされた曲が意図的に精選されているように思えますね。「ショートホープ」の「諦めるには 早すぎる」、「ミッドナイト・ラン」の「思いきり赤に突っ込んで 運命を逆に超えてゆく」、「不思議」の「向かい風に逆らって」、「ゴールデンバット」の「上手くいかない日々も 後悔ばかりの日々も」「世界の上から笑ってやるさ」、「ア・ハートビーツ・トゥナイト」の「まだ終わりじゃないのさ」「まだ終われないじゃない」、「高速ヘヴン」の「そう 人生はとても短いから/もう 迷ってる そんな時じゃない」など、挙げていけばキリがありませんが。

K:それは川戸が勝手に自分の思い入れで選んだ結果だね(笑)。でもまあ、要するに僕はそういう奴なんだよ。「まあいいじゃん、(軽い口調で)頑張ってみようよ」みたいなさ。面と向かって説教くさいことを言うのも苦手だし、「まあとりあえずやってみようよ」っていう軽いフィーリングが自分の持ち味っていうのかな。自ずとそういう曲がライブのレパートリーになって、川戸がそこを汲んでこういう曲が集まったってことだね。ロックンロールなんだから楽しきゃいいんだよみたいな見方もあるだろうし、でもその中に元気が出るフレーズがあったり、肯定的なメッセージがあるのがいいんじゃないかと思う。踊って聴いてるんだけど「お、今いいこと言ったね」みたいなさ。そういう曲が僕自身好きなんだよね。

──これまで録りためてきた数々のライブ音源を収録する上での基準みたいなものはどんなところだったんですか。

K:ライブテイクに関しては、もうあまりに多すぎて僕には選びきれなかった。ただ川戸が出してきたリストの中でもいいテイクを選んだつもりだし、同じ曲で2、3テイクある中から臨場感や週末感が出てるものを優先して採用したケースもあった。楽しかったはずの週末も関係なく自粛しなくちゃいけないこの時期に、こういうライブテイクをゆっくり聴いて楽しんでもらえたらいいなと思う。…まあ、まさかこのCDが発売になるまで緊急事態宣言が長引くとは思ってもみなかったけどね。これが世に出る頃にはもうちょっと状況が良くなってて、この先に光が見えるような時期になってるんじゃないかと想定して制作に励んでいたんだけどさ。参ったな、今は底に沈んだままだぜみたいな作品を出すべきじゃないと思ったし、少しでも希望を持って進んでいるのを感じられるものにしたかったから。

──慣れ親しんだ音楽でも映画でも小説でも、鑑賞する時期によって捉え方や受け止め方がガラッと変わることがあるじゃないですか。コアなマックショウのファンでもこの時期に聴く「高速ヘヴン」のライブテイクにこれまでとは違う印象と感慨を抱くかもしれないし、それこそが音楽の面白さだと思うんですよね。

K:そうだね。自分でもライブテイクを編集しながらいろんなことを思い出したよ。このライブはノリにノッてるなとか、このときはこんなことがあったなとか、盛り上げに走ってるなとか。その曲の良さを改めて感じたり、いい体験ができたと思う。

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──「燃え尽きる'75」の試作バージョンを最後に収録したのは、震災直後に活動中止となって先行きが見えないままテスト録音された当時の状況が今と重なったからですか。

K:そういうことだね。確か震災の1カ月後くらいに「燃え尽きる'75」をテスト録音したんじゃないかな。その前からアルバムを作る計画はあったんだけどね。あのときも今と同じような自粛ムードがあって、いろんな予定がバタバタとずれ込んでいってさ。その中でいろんなものを作ったり壊したりを繰り返していったけど、僕らの音楽なんて何の役にも立たないし、必要とされてないんだなと思った。そこを被災したみんなから逆に励まされてね。「またいい曲を聴かせてください」とか「落ち着いたらまたライブに来てください」とかね。そこまで言ってくれるならまだ続けるべきだなと試行錯誤していた時期だった。その状況が今と重なる部分も少しはあるけど、やっぱり全然違うよね。人とコミュニケーションも取りづらいし、自分も当事者だから励ますこともできないんだから。一体どこへ向かってるんだろう? という虚無感みたいなものが今はすごく大きい。たとえば政府がもうちょっとしっかりして良い政策を立ててくれればこうはならなかっただろうって話もあるけど、怒りの矛先をそこに向けたところで何にもならないからね。だって誰も経験したことのないことなんだから。さっきも言ったように、音楽というものがそっちへ流れちゃいけないと思うんだ。俺たちはロックなんだから政府の言うことなんか関係ねえよ! みたいなさ。こんなときでも何とか音楽をやる道を模索したり、いろんな形でライブをやり続けるのも気持ちはよく分かるけど、やらないって選択肢もあるんだよ。一番感染しないのは家にいることなんだから、基本を忘れちゃいけない。だからいま誰が悪いとか言ったってしょうがない。

──今この時点で正解はないですからね。

K:ないよね。僕らがライブを自粛してステイホームを守るのを人に強制はしないし、ライブをやる人はやればいい。その代わり頼むから安全にやってくれよと思う。僕らも後に続くし、ここで活動が終わりじゃないし、この後もずっとやっていかなきゃいけないんだから、今が良けりゃいいっていうのは考え直したほうがいいぞと同業者にはアドバイスしてるけどね。

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MACKS ALIVE
-Strange Weekend-

昭和96年(2021年)5月26日(水)発売
STREC-001 / 価格:¥3,000+税
レーベル:B.A.D RECORDS UNITED
発売・販売元:ソウルツイスト合同会社

amazonで購入

【収録曲】
01. ストレンジ・ウイークエンド
02. ハートしびれて
03. ロンサム・カーボーイ
04. 恋のモーターサイクル・アイズ
05. DRIVE ME CRAZY
06. ショート・ホープ
07. ミッドナイト・ラン
08. 不思議
09. ゴールデンバット
10. UNDER THE MOONLIGHT
11. 今夜はスタンド・バイ・ミー
12. 彼女はパーフェクト
13. ア・ハートビーツ・トゥナイト
14. 高速ヘヴン
15. 燃えつきる'75(試作)
◉#01〜#03:新曲(スタジオ録音)
◉#04〜#14:ライブ録音
◉#15:スタジオ録音 未発試作音源
【解説】ここに収録されている物語はすべて、ロックンロールを通して垣間見る、さまざまな週末を歌ったものである。現在の鬱積した状況にも通じる虚無感と刹那を語る新曲「ストレンジ・ウイークエンド」、ロックンロールとの出会いと衝撃、少年期独特の憧憬と焦燥感を描く「ハートしびれて」、ある男の別れと旅立ちを描く「ロンサム・カーボーイ」。そして収録された熱狂ライブテイクは、曲それぞれの内容もさることながら、全て週末に行われたライブの模様であり、オーディエンス全ての物語が詰まっている。2011年の大震災直後、活動を中止し先が見えないままテスト録音された試作バージョンの「燃えつきる'75」が物語のラストを飾る。紆余曲折ありながらもロックンロールと共に生きる物語の主役は、あなたでもある。

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