希望はいつもそこに当たり前にあるわけじゃなく、なんとか捻り出すもの
──「ライブハウスから」もそうですけど、歌詞の言葉数が増えたなという印象があったんですよ。だけど、そのあとに聴かせてもらった次回作に入る予定の曲には、数行しか言葉がない楽曲があったり、多いか少ないか極端に振り切ったなと感じました。
内藤:確かにそうですね!なんでだろう……リズムを重視するようになったのかな。
──ポエトリーに近いくらい言葉が強調されている楽曲は、風景や心情のすべてを描写したいからですか。
内藤:そうだと思う。鮮明なものが好きだから細部まで取り込みたいんです。でも、言葉が少ない楽曲は制作しながら、「これでいいのかな」って不安になる(笑)。
──書いている側としてはちゃんと伝わるかなって心配になりますよね(笑)。でも内藤さんの言葉選びって、極限まで減らしても鮮明なままだと思います。不安になったときはどうやって書き終わるんですか?
内藤:そこはがんばって信じてる、伝わるはずだって(笑)。あとは、言葉が少ない曲は、歌詞よりも楽曲自体に重きを置いているんだと思う。言葉で伝えることができるように鍵盤でも伝えることができるようになりたくて。風景を手元の演奏でも伝えたい。そういう曲って、言葉が多いと野暮になっちゃうから。
──「ナイトサファリ」は言葉が少ないですよね。変拍子だし曲調も変化するし、この曲はどうやって作ったんだろうって気になっていました。あれは曲が先ですか?
内藤:そうです、あれは大変でした、めっちゃがんばりました。音符に隙間なく言葉をしきつめたら台なしにしちゃうんじゃないかなと思って、言葉も減らしました。むしろ最近は、自分が歌わなくてもいいんじゃないかなとも思います。制作という意味では、やっとそこまでこれたのかもしれない。だって、自分で歌っちゃうと自分色が出過ぎちゃうから。だからいっそ人に歌ってもらうのもいいかなと思い始めていて。19歳のころは言いたいことがあった気がするけれど、いまは言いたいことだけじゃないんだよね。歌うことよりも、とにかく楽曲を作りたい気持ちなんですよ。
──その変化はきっと大きいですよね。とにかく良い楽曲を制作したいっていう気持ちの比重が大きくなったことと、19歳だったら活動をやめていたかもしれないけど今はやめる選択肢がないっていうのはつながっているんだなと思いました。
内藤:そうだと思う、今やっと音楽を好きになれているのかな。あと2ヶ月で制作が終わりそうなので、秋には発表できるかなと思います。秋くらいにはツアーも行ける状況になっていてほしいよね……。
──変化の作品、とても楽しみです! 最後に、6月5日(土)のLOFT9「音に撃たるるばVol.20」にむけてコメントをお願いします。
内藤:この日のイベントのこと、これから先のこと、今までのことを最近よく考えます。この日も開催させてもらえるなら、そして聴きに来てくれる人がいるなら、僕は諦めずに音楽を続けていきたいと思っています。希望なんていつもそこに当たり前にあったわけじゃなくて、なんとか捻りだして、「今の時代はいいものなんだ」って思ってきました。だから今も言います。音の鳴る場所で会いましょう。