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INTERVIEW

トップインタビュー内藤重人 - 感性や行動力はいつまでもあると思わないから、今は作るべきとき

感性や行動力はいつまでもあると思わないから、今は作るべきとき

2021.05.25

 2020年4月、緊急事態宣言発令によりライブハウスは休業やイベント延期など大きな影響を受けた。それは出演するアーティスト側も同じだった。そんななかでライブと作品制作を続け、新作アルバムをレコーディング中の内藤重人。LOFT9で主催する「音に撃たるるばVol.20」を6月5日(土)にひかえ、コロナ禍でのライブ活動と制作について投げかけてみた。[interview:成宮アイコ]

人間って社会的な状況に影響を受けやすい

──新作アルバムのレコーディングを開始したとのことですが、コロナ禍で影響はでませんでしたか?

内藤:順調に進めていきたいと思っています。制作のうえだけで言うと、僕は社会の状況や時期はあまり気にしていないかもしれない。10年くらい音楽活動を続けてきて、ひとりでもできることが増えてきたのでやりたいことがたくさんあって。でも、できることが増えたのは、去年の4月からライブ本数も少なくなってひとりで家にいて音楽に携わる時間が増えたからかもしれないですね。そういう意味ではコロナ禍での影響はあったのかも。

──2020年4月の緊急事態宣言は、誰もが初めてのことだったのでみんながピリピリしていたように思うんですけど、内藤さんはあまり雰囲気が変わらなかったですよね。5月2日には「少年の叫び2020に向けての物語」を配信、8月9日には「少年の叫び2020」をLOFT9で開催しましたが、迷いはなかったですか?

内藤:「自分はなにがなんでも絶対にやります!」っていうわけではなくて、お店の人、そして一緒に出てくれる人が「やりましょう」って言ってくれたら開催ができるんです。僕みたいに個人で活動をしていると、自分である程度判断できるのはいいなと思いますが、実は、去年より今のほうが迷っているかもしれないです(笑)。極端なことを言うと、自分自身はどうなってもいいんだけど自分じゃない人やまわりの人に感染をさせたくないっていう気持ちが大きくなりました。僕は大きな病気にもかかったことがないし、身近な人の死も経験がないから当時は危機感が欠如していたのかもしれない。B型っていうのもあるかもしれないけど。

──世界の全B型に失礼なことを(笑)。

内藤:いや、僕だけです(笑)。去年は自分のなかでディスカッションする必要もなかったんですよ。でも今は、呼んでもらえるなら行くけれど自分から遠征にも行きたいってアピールすることは減っていると思います。もともと、まわりの人がこう思うから自分もこう考えようっていうことがあまりないので気にはならなかったんですよ。でも、人間って社会的な状況に影響を受けやすいから、影響をすぐ受ける人とジワジワ遅れてやってくる人がいると思うんですよ。

──タイムラグ的なことですよね。

内藤:そうそう、僕はどっちかっていうと遅れてやってくる側なんですよ。出るはずだったライブハウスが休業するとかイベントが延期になるといった影響はあるけど、自分自身の精神的な影響はなかったですね。……去年は(笑)。たぶん僕は、悲しいとか元気がないとか自分自身のそういった感情と、音楽を作ったりライブをする感情は別のフェーズらしくて、ライブ本数が少なくなった時期も家のなかで音楽自体には触れていたんです。そうすると曲も増えるし、使える楽器や機材も増えていく。今の時代のために音楽を作りたいっていうわけじゃなくて、これまで音楽に関わってきた時間が脳みその器から溢れ出てくるっていう時期がやっときたのかなと思います。

──音楽もそうですし、映画や演劇も一旦制作や発表をストップさせる場合も多かったじゃないですか。でも1年以上もたっているのに同じ状況のままで、今作ってもリリースイベントができないなとかネガティブなことよりも作ることが重要だったんですね。

内藤:もし、自分のやっていることに関わる人間が多い人だったら迷うかもしれないけれど、基本的にはひとりで制作をしているので止めなくて良かったんです。むしろ、今は作るべきときだなと思いました。そうして作り続けてストックが増えてくると、こういう風に自分は変化してきたんだなとか、次はこういうことに挑戦したいんだなとか、全容やパッケージが見えてきたんです。見えたからにはやっぱりやりたくなるんですよね。それに、感性や行動力はいつまでもあると思わないから、生きていて元気なうちにがんばりたいんです。

──去年の4月から1年の間にわたしはだいぶ感性や感情が薄くなったんですけど、内藤さんはずっとモチベーションを保っているように見えます。

内藤:そういうケースはほんとうに多いと思いますよ。だから、消えてしまいそうな部分を補填してあげないと生きるのも厳しいよね。それは作る喜びでもいいだろうし、子どものころに好きだったことをするとかもでいいし。ただ、僕のモチベーションの維持は売れてないからっていうだけですよ。勝利をまだ得ていないし、いつも同じ世界にいるような気がするんです。ずっとこのままなのかなと思うと寒気がしてきちゃうから(笑)。

──進んでいきたい気持ちが糧になっているんですね。見に行く予定だったライブが中止になったりすることもあったと思いますが。

内藤:それは減ったよね。でも、予定が中止になって空いた時間を昼寝にあてるのはよくないと思って、意識的に作る時間にしていました。僕は、仕事も制作もほぼひとりだし、会うのも音楽のつながりの人が多いから、社会からの影響が他の人よりも少ないのかもしれない。

──そうやって見に行く現場が減ったりして感性に外的刺激が減っていくなかで、それでも楽曲を作り続けられたのは内藤さんの中にストックがたくさんあったからでしょうか。

内藤:確かにそうかも。インプットはもう十分にあるのかもしれない。そして、これまではアウトプットをおそろかにしてきたのかなと思います。もちろん新鮮なものも欲しいけど、追加し続けなくても今までためてきたものを音楽に書き換えていくことをする時期なのかな。そう思うと、イベントが減るのはさみしいし、友だちと気軽に遊べなくなったのもさみしいけれど、まだがんばれるかなと思います。時代の風みたいなものはどこかしらに入っているとは思うし、作品が感傷的になりがちだったり振り返る描写が増えているかもしれないけど、20歳当時の自分の振り返りかたとはまた違うはずだから、「2021年の作品」になるはず。

──たしかに内藤さんの歌詞にはわかりやすい流行語は入っていませんが、そのときそのときの時代の心情風景を感じます。インプットは随時メモをする派ですか、それともイメージをずっと体にためていられる派ですか?

内藤:たくさんメモをします。メモっていっても、こんなことを考えてたなというヒントになるだけで実際にそのまま使えたことはないけれど。歌詞も、「さあ、書くぞ!」って机に向かって書くのではなくて、たまってきたものをあるべき場所に置いて行く感じかな。

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自分が今19歳だったら音楽をやめてた

──2020年9月に「ライブハウスから」というMVを発表されましたけど、各地のライブハウスの名前や描写がたくさん歌詞に出てきますよね。映像としてもライブ関連の画像で構成されていて。「このライブハウスはこうだったな」とか、「ライブを見に行く日ってこうだったな」とか、いろんな感情を思い出しました。もとから演奏されていた曲ですが、MV公開の時期は狙ったんですか?

内藤:あれはね、純粋に今、MVにするべき曲だなと思って。新潟のライブハウス店長からもコメントをもらったり、いろんな土地の人に聴いてもらうことができました。昔はピアノしか弾いてなかったけれど、今はむしろピアノ弾き語り要素ではないところに興味があります。もちろんピアノも弾くけど、実際に足元の機材も荷物も増えたし。この曲もそうだけど、使える機材が増えることで、できることや鳴らせる音が増えたんだと思う。

──向き合う時間が増えてできることが増えたっていうのは、コロナ禍がもたらした唯一……かもしれない良い面ですね

内藤:そうですね。音楽と向かい合う時間が格段に増えたから、ピアノを弾くだけだと物足りなくなったんだと思う。こういう音を出してみたいなっていう気持ちが増えて、高校生のときの情熱みたいなものが芽生えて、音が歪むエフェクターを買ってみるところから始まったんです。去年の5月はループとディレイしか使ってなかったけれど、今はたくさん増えちゃって。曲を作ってライブができればそれでよかったんだけど、今はライブをやるだけでは足りない。

──それってまさにフィジカルを作ることに向いていますよね。そう考えるとレコーディングを開始したのも自然なことに思えました。

内藤:音を作ることに喜びをすごく感じています。今まではきっと違ったんだと思う。ライブは好きだけどそれだけではやりたいことが補えなくなったから、音を重ねてレコーディングをする方向に進んでみることで自分の世界が変われることもあるんじゃないかなと。今の自分がいちばん向いていることなんでしょうね。

──そう思えなかった人も多いはずなので、そこは強みですよね。精神的にもきつくなって活動をやめちゃう人とか、閉店せざるを得ないお店とか。悲しい場面も目の当たりにしてきた1年でしたし。

内藤:活動の向かい合い方は人それぞれだけど、もし自分が今19歳だったら音楽をやめてたと思う。だって、今の状況ってつらいもん。告知もしにくいし、ライブハウスも行きにくいし。家族が同居していたりしたら、「ライブハウスに行くの?」って言われたりしちゃうだろうし。だけど、僕はもう10年以上そこにいてしまったから撤退することがなかっただけで。

──続けてきてしまったし、今やめるわけにはいかない、と。

内藤:そう。自分がこれまでやってきたことを、ちゃんとゴールまで連れていってあげないといけない。他に選択肢がないからっていうのもあるけど(笑)。でもさ、たとえば学校や会社とか団体に所属していたら、今の状況に抵抗するような音楽を作っちゃいそうだよね。自分はあまりそういう影響を受けなかっただけかもしれないです。

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LIVE INFOライブ情報

音に撃たるるばVol.20 
 
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2021年6月5日(土)LOFT9 Shibuya
OPEN 14:00 / START 14:30
Ticket/adv/door 2500/3000yen(+Order)
 
※配信をご覧いただく場合は別途視聴チケットをお買い求めください
※開場開演時刻を含む全てのタイムテーブルは時短要請、情勢を見て変更になる可能性があります
 
配信視聴チケット 第一部第二部それぞれ¥1,000
第一部(14:30~17:00 予定)
第二部(17:50~19:40 予定)
 
【出演】
内藤重人
成宮アイコ
阿部浩二
アサトアキラ
魚住英里奈
奧山漂流歌劇団
山田庵巳
+公募(1枠)
 
 
 
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