できるときにできることはどれもしておきたい
──オンラインユニットだから音源は配信限定でも良さそうなのに、あえてCDとしてリリースするのもこだわりなんですよね?
Dr.Usui:僕自身、CDというメディアを進んで購入するかといえばCDでしかない音源なら購入する程度だし、別にサブスクでもいいのかもしれないけど、サブスクだとリスナーの方の顔が見えませんからね。それにサブスクはSpotifyやApple Musicなど選択肢がいろいろあって、今はまだどこで何が聴かれるかというほどの規模でもないし、総合的に考えると一番最初の出し方はCDという形態がいいと考えたんです。
──いわゆるレコ発にあたる1月21日のファーストライブセッションを生配信ではなく収録済みの動画配信にしたのはなぜなんでしょう。
Dr.Usui:ZOOM会議でも生配信するべきかどうか議論したことがあったし、オンラインで見るライブがリアルタイムであることにどれだけの意義があるのか? という問題提起を主に名嘉真監督がしていたんですね。クリエイターチームとしての側面もあるわれわれのライブの在り方としてどういうことをやったら面白いかというところでみんなでアイディアを出し合った結果、生配信ではなく事前収録の動画配信がいいだろうと判断したんです。
絢屋:これがコロナ禍以前の活動なら「毎週ライブをしているバンドだよね」と言われるところが「毎週会議を配信しているオンラインユニットだよね」と言われる状況ですけど、われわれもユニットとして音楽を作っている以上はしっかりとライブができるところを見せたいとずっと考えていたんです。じゃあわれわれならではのライブ、今の時代ならではのライブとはどんなものなのかという議論やアイディア提起をZOOM会議でしてきたんですが、今回のライブセッションの動画は間違いなくライブの一種だと僕は思えるんです。DISCOMPO with 泉茉里はちゃんとライブができるユニットであることがこれで広まってくれたらいいなと思います。
泉:私はライブはずっとやりたかったから実際にやれてすごく楽しかったですし、映像に残ること自体が嬉しいです。通常のライブをやれないから映像で見せるしかないという状況だからこそ、映像でできる最大限の面白さを詰め込めたと思いますし。後から映像効果を増やせるという収録ならではの良さもありますけど、ライブならではの生感もしっかり出せていると思うし、それぞれのいいところを詰め込めているんじゃないですかね。
絢屋:同じ画面を通じて見ていただくのはライブならではの共有感覚ですし、メンバーに映像作家がいるわれわれだからこそできることを提起するようなライブセッションになっていると思うんです。それに、たとえオンラインであっても茉里ちゃんのようなフロントマンがいればバンドはちゃんとライブを成立させられますからね。
──DISCOMPO with 泉茉里がライブをやるとなれば、「Another Century」のCGステージで一貫させるのかなと思っていたのでフィジカルなライブセッションをやるとは意外な展開でした。
Dr.Usui:ああ、なるほど。確かにそんなふうにも取れますね。あのCGステージでライブもガンガンやりたいという話もしていたので。あそこはあそこで、いつか違うライブを実現したいですね! でも今回はそうじゃないことをちゃんと発信しないとライブセッションを見る人が増えないかも(笑)。
──活動2年目の今年もシングルCDのリリースを皮切りに活発な動きになりそうですね。
Dr.Usui:そうですね。一発こっきりの企画ユニットだと思われているきらいがなくもないので、ウィズコロナ、アフターコロナの時代に向けて新たな音楽ユニットの在り方を模索していきたいです。21日にはライブセッション動画に合わせていつものZOOM会議のスペシャル版をやろうと考えていますし、いつかまたリアルでライブをやれるようにコツコツとやっていきたいですね。オンラインベースだけどオフラインの活動も見据えながら。
絢屋:できるときにできることはどれもしておきたいですよね。今のこの2021年1月の段階ではこれが今できることだし、また現場でライブができることが選択肢に入るときになればもちろんやりたいですし。絶えずそのときできることをどれも模索していく、どれも取り入れる活動をしていきたいです。あと、われわれはオンラインユニットだし、いま巷で開催されているオンラインフェスにもぜひ出演したいので、オファーをお待ちしております。
Dr.Usui:現時点ではまだ実動員は読めないけど、CDのオーダーリストを見ると全国に僕らのことを気にしてくださっている方々が点在してますからね。オンラインフェスの賑やかしにはなるんじゃないかと思います(笑)。
──このコロナ禍で音楽を生業とする人たちはみな苦境に立たされていますが、今できないことを逆手に取って面白いことを展開していくDISCOMPO with 泉茉里の手法に刺激を受けてお手本にすればいいのになと思いますけどね。
Dr.Usui:確かに。僕は新しいことを思いついてやってみちゃうまではいいんですけど、だいたいは真似されてその人がうまくいくケースが多いんです(笑)。だけど誰かが旗振り役をやって引っ張っていかないと、全体が盛り上がりませんからね。今後みんなが僕らみたいなオンラインの手法をやり出してそれが定着したら、Wikipediaの「オンラインユニット」の項目に「DISCOMPO with 泉茉里が発祥」と書かれるようになりたいですね。オンラインユニットを名乗ったのは僕らが最初で、あとはみんな真似ですよと(笑)。